「前の担当者が使っていたファイルが、どこにも見当たらない」
「市販のテンプレートを買ったほうがいいのだろうか」
「去年のエクセルを上書きして使い回して、本当に大丈夫なのか」
決算変更届の時期に「工事経歴書 エクセル」で検索する方の多くが、この3つのどれかで止まっています。
先に結論からお伝えします。
工事経歴書のエクセル様式は、県のホームページから無料でダウンロードできます。買う必要はありません。
ただ、様式が手に入ってからが本番です。とくに「合計」欄は、エクセルの合計関数(SUM)で出してはいけない欄です。
この記事でわかること
- エクセル様式の入手先(神奈川県・他県の探し方)
- 自作したときに差し戻されやすい3つの落とし穴
- 「書く順番」をエクセルに判定させる方法(式はコピペで使えます)
執筆・監修
やさしい行政書士事務所 代表行政書士 宮本 雄介(神奈川県行政書士会所属/登録番号 第12082434号)
建設業許可・経営事項審査を専門に、神奈川県央エリアの建設会社を支援しています。
本記事の内容は、神奈川県『建設業許可申請の手引き 令和8年度版』/神奈川県『経営事項審査の手引き 令和8年7月1日版』(p17から裏表紙までの分冊)/様式第二号「記載要領」/建設業法・建設業法施行令・建設業法施行規則(e-Gov法令検索)の記載に沿って確認しています。初出は2026年8月17日、2026年9月4日に一次資料をすべて再確認して更新しました。確認に使った一次資料は、記事末尾にリンクをまとめています。
目次
1. 工事経歴書のエクセル様式は、県のサイトで無料配布されている
神奈川県知事許可の場合
神奈川県のホームページ「許可申請書等ダウンロード」に、様式がそのまま置かれています。
- 工事経歴書は「第二号(エクセル:29KB)」というリンク名で掲載
- 同じ場所に「記載要領(PDF:146KB)」も用意されている
- 検算に使う「第三号(エクセル:30KB)」(直前三年の各事業年度における工事施工金額)も同じページにある
出典:神奈川県県土整備局事業管理部建設業課「許可申請書等ダウンロード」(初出時=2026年8月17日確認。2026年9月4日に再確認したところ、同ページの更新日は2026年8月26日と表示され、リンク名とファイル容量は上記のとおりでした)
落とすのは、エクセル様式と記載要領PDFの2つです。記載要領は、後で出てくる「書く順番」の根拠そのものなので、必ずセットで手元に置いてください。
⚠️ 県のページは、この記事の初出(2026年8月17日)のあとに更新されています。2026年9月4日に見たときの更新日は2026年8月26日でした。以前に落としたファイルをお持ちの方も、もう一度取り直してから使ってください。
窓口・受付時間・許可申請の必要書類一覧は、こちらにまとめています。
→ 神奈川県の建設業許可|窓口・手引き・必要書類・更新の受付期間まで【令和8年度版】
市販のテンプレート・フォーマットを買う必要はない理由
「工事経歴書のテンプレートを無料で探している」「使えるフォーマットが欲しい」——この記事にたどり着く方の多くが、そう検索しています。先に結論をお伝えします。
工事経歴書の書式は、建設業法施行規則の「別記様式第二号」として国が定めています。自由にひな形を作ってよい書類ではなく、許可行政庁が配っているエクセル様式が、そのまま正解です。
様式の左上には「様式第二号(第二条、第十三条の二、第十三条の三、第十九条の八関係)」と印字されています。これは建設業法施行規則の条番号です。同じ1枚が、許可申請の添付書類(第二条)、譲渡・合併・分割の認可(第十三条の二)、相続の認可(第十三条の三)、経営規模等評価申請書の添付書類(第十九条の八)で使われる、という意味です。このほか、毎年の決算変更届(建設業法第11条第2項)で出す工事経歴書も、同じ様式第二号(第二条の様式)です。
出典:e-Gov法令検索「建設業法施行規則」第2条(許可申請書及び添付書類の様式)・第13条の2(譲渡及び譲受け並びに合併及び分割の認可の申請等)・第13条の3(相続の認可の申請等)・第19条の8(経営規模等評価申請書の添付書類)。様式の見出しの表記は、神奈川県『建設業許可申請の手引き 令和8年度版』掲載の様式第二号によります。
市販の書式やソフトが役に立たない、という意味ではありません。書面で提出する場合、提出するのは行政庁が配っている様式そのものです(電子申請=JCIPの場合は取扱いが異なりますので、県のご案内をご確認ください)。当所でお手伝いした案件では、打ち直しによる転記ミスの差し戻しが多いため、最初から行政庁のエクセルに入力することをおすすめしています。
大臣許可・他県に許可がある場合
2つ以上の都道府県に営業所を設けて建設業を営もうとする場合は、国土交通大臣許可になります。提出先も窓口も変わります(神奈川県『建設業許可申請の手引き 令和8年度版』第1章)。
※営業所の数ではなく、都道府県をまたぐかどうかで決まります。神奈川県内に営業所が2つ3つあっても、それだけで大臣許可にはなりません。
様式そのものは国が定めた様式第二号ですが、記載範囲の細かい案内は行政庁ごとに違う部分があります。この記事の後半で出てくる「経審を受けないならおおむね6割程度まで」は、まさに神奈川県の手引きに書かれた案内です。
他県の許可をお持ちの方は、「〇〇県 建設業 様式 ダウンロード」で検索して、ご自身の許可行政庁が配布している様式・手引きを使ってください。この記事の入手先と、後半の「おおむね6割程度まで」は神奈川県のものです。
去年のファイルを使い回す前に、1分だけ見比べる
「毎年同じだから」と、前年のファイルを上書きして提出する会社は少なくありません。
ですが様式や手引きの案内は改正されます。押印欄の廃止(令和3年1月1日)のように何年も前の改正が残っているファイルもあれば、記載範囲や確認資料の案内が年度ごとに変わることもあります。
⚠️ 前年のファイルを開いたら、まず県の最新様式と欄の構成を見比べる。違いがあれば、迷わず最新版に入れ直してください。1分の作業で、1往復の差し戻しが消えます。
エクセルに数字を入れる前に、3点だけ決める
「業種ごとに作る」「どの期の工事を書くか」「税込か税抜か」——この3点は、入力を始める前に決めます。判断の基準は柱記事にまとめてあります。
→ 【記入例つき】工事経歴書の書き方|決算変更届・経審で迷わない7つのルール(ルール1〜3)
ここでは、この先の話の前提になる2つだけ補足します。
ひとつめ。経審を受ける会社は、請負代金を「税抜」で書きます(免税事業者=消費税を納める義務がない小規模な事業者を除く)。
・請負代金の額は消費税抜きで記載します(免税事業者を除く)。
(神奈川県『経営事項審査の手引き 令和8年7月1日版』第2分冊「工事経歴書(様式第2号)記入上の注意点及び記入方法(経営事項審査受審者用)」)
※経審=経営事項審査。「公共性のある施設又は工作物に関する建設工事で政令で定めるものを発注者から直接請け負おうとする建設業者」が受けなければならない、経営に関する客観的事項の審査です(建設業法第27条の23第1項)。ここでいう「政令で定めるもの」は、国・地方公共団体・法人税法別表第一に掲げる公共法人(地方公共団体を除く)などが発注者で、かつ工事1件の請負代金の額が500万円(建築一式工事は1,500万円)以上のものとされ、堤防の欠壊などによる応急の建設工事や、国土交通大臣が指定する建設工事は除かれます(建設業法施行令第45条)。「公共工事なら何でも経審が要る」ではない、ということです。
ふたつめ。「直前」の決算期の判定は、法人と個人で違います。
※「直前」決算とは、税務署に確定申告済みの決算期で直近のもの。決算期終了後、法人の場合は2か月を経過した場合、個人の場合は、3月15日を経過した場合は、当該期を「直前」と考えます。
(神奈川県『建設業許可申請の手引き 令和8年度版』第1章)
決算期の直後に届け出るときは、ここで1期ずれます。個人事業の方はとくにご注意ください。
2. 自作したときに差し戻されやすい、3つの落とし穴
エクセルは自動計算してくれます。ところが工事経歴書には、自動計算してはいけない欄があります。
落とし穴1:合計欄をSUMで出してしまう【当所でいちばん多い】
当事務所でご相談を受けるなかで、いちばん多いのがこれです。
表を作れば、当然いちばん下でSUMを取りたくなります。ですが工事経歴書の「合計」欄は、書いた工事の足し算ではありません。
右のすべての項目について、当該業種の直前決算の事業年度における合計を記入する。(工事経歴書に記載したものと合計ではない。)
(神奈川県『建設業許可申請の手引き 令和8年度版』工事経歴書 記載例の注記)
合計欄に入るのは、その業種のその年の完成工事高の全額です。後で説明する7割・10件のルールで一部の工事を省略して書いた場合、記載した行のSUMは全額より小さくなり、様式第三号と一致しません。

💡 検算のしかた
合計欄の金額は、様式第三号の額と一致します。様式第三号とは「直前3年の各事業年度における工事施工金額」のこと。見るのは、その業種の直前決算の欄です(同手引き)。ここが合っていなければ、どちらかが間違っています。
※小計はページごと、合計は最終ページのみに記入します(様式第二号 記載要領11・12)。この考え方は柱記事のルール6で図解しています。→ 小計・合計と「数字の一致」を必ずチェック
落とし穴2:「軽微な工事」の判定を税抜でやってしまう
工事経歴書には、軽微な工事について「10件を超える部分は書かなくてよい」というルールがあります(10件までしか書いてはいけない、という意味ではありません)。
問題は、その軽微かどうかの判定が「税込」基準だということです。

| 業種 | 軽微な建設工事にあたる金額 |
|---|---|
| 建築一式工事 | 1件の請負代金が1,500万円未満(消費税込み)、または請負代金の額にかかわらず木造住宅で延べ面積150㎡未満の工事 |
| 建築一式以外 | 1件の請負代金が500万円未満(消費税込み) |
出典:神奈川県『建設業許可申請の手引き 令和8年度版』第1章「許可が不要な軽微な建設工事」(建設業法施行令第1条の2に規定する工事)。木造住宅とは、主要構造部が木造で、延べ面積の1/2以上を居住用とするものです(同 第1章 ※2)。
ここで何が起きるか。
⚠️ 経審を受ける会社は、請負代金そのものは「税抜」で書きます。ところが軽微かどうかの判定は「税込」で行います。
同じ表の中で、基準が2つ動くわけです。エクセルで一列だけ作って判定すると、ここを間違えます。
たとえば税抜480万円の工事。税込にすると528万円です。税抜だけを見て「500万円未満だから軽微」と数えると、件数の数え方がずれます。
対策はシンプルです。作業用シートに「税込」と「税抜」の2列を持つ。判定は税込列、様式に転記するのは税抜列。これだけで防げます。
税込・税抜のほかに、判定を狂わせる2つの決まり
「軽微かどうか」は税込で見る——ここまでは、ご存じの方も多いところです。ですが政令には、金額そのものの数え方について、もう2つ決まりがあります。どちらも、税込・税抜より先に効きます。
ひとつめ。同じ工事を2本の契約に分けたときは、足して判定します。
前項の請負代金の額は、同一の建設業を営む者が工事の完成を二以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額とする。ただし、正当な理由に基いて契約を分割したときは、この限りでない。
(建設業法施行令第1条の2第2項)
税込280万円の契約が2本でも、同じ工事の完成を分けたものなら560万円として見ます。ただし書があり、正当な理由で分割したときは合算しません。どちらに当たるかは個別の判断になるので、迷ったら分けずに残しておいてください。
ふたつめ。施主が材料を出している場合は、その分を足して判定します。
注文者が材料を提供する場合においては、その市場価格又は市場価格及び運送賃を当該請負契約の請負代金の額に加えたものを第一項の請負代金の額とする。
(建設業法施行令第1条の2第3項)
請求書の額が税込440万円でも、施主支給の材料が市場価格で80万円あれば、判定に使う額は520万円です。請求書の数字をそのまま並べただけのシートでは、この2件が「軽微」に化けます。軽微が10件で打ち切れるルールを使っている会社ほど、件数の数え方がずれます。
💡 エクセルでの受け止め方
作業用シートに「支給材料(市場価格・円)」の列と、分割契約を束ねる「契約グループ」の列を足します。判定はこの2列を反映した額で行い、様式に転記するのは契約1件ごとの請負代金(税抜)です。判定用の数字と、様式に書く数字は別物だと割り切ってください。
出典:e-Gov法令検索「建設業法施行令」第1条の2(法第三条第一項ただし書の軽微な建設工事)第1項〜第3項。なお、軽微かどうかを税込で見ることは、神奈川県『建設業許可申請の手引き 令和8年度版』第1章および『経営事項審査の手引き 令和8年7月1日版』p.45(p17から裏表紙までの分冊)に明記されています。
落とし穴3:未成工事を小計・合計に足してしまう
工事経歴書には、完成した工事のあとに「主な未成工事」も書きます(様式第二号 記載要領3(1)③)。
このとき、未成工事は小計にも合計にも含めません。
※未成工事は、小計、合計とも含めない。
(神奈川県『建設業許可申請の手引き 令和8年度版』工事経歴書 記載例の注記)
エクセルで下から上まで一気にSUMを引っ張ると、未成工事まで巻き込んでしまいます。
ただし例外があります。工事進行基準を採用している場合は、その完成工事高を括弧書きで記入したうえで、括弧書きにした完成工事高は小計・合計に計上します(同手引き/様式第二号 記載要領9)。ここは自社の会計処理によって変わるので、顧問税理士に確認してください。
3. 7割・10件の判定を、エクセルに計算させる
工事経歴書でいちばん質問が多いのが「何件書けばいいのか」です。
答えは「何件」ではなく、条件で決まります。

書く順番と範囲のルール自体(①元請の7割 → ②全体の7割 → ③主な未成工事、軽微な工事は①②を通算して10件まで、神奈川県で経審を受けないならおおむね6割程度まで)は、柱記事で解説しています。
→ ルール4:書く「順番と範囲」を守る ― 経審あり/なしで変わる
※この「おおむね6割程度まで」は神奈川県の手引きの案内です。国の記載要領(3(2))は「主な完成工事について、請負代金の額の大きい順に記載し、続けて主な未成工事を記載する」と定めるだけで、割合を示していません。他県では案内が異なることがあります。
ここでは、そのルールをエクセルに機械的に判定させる方法だけを扱います。
※元請=発注者(施主)から直接請け負った工事。下請=他の建設業者が請け負った工事の一部を請け負ったもの(神奈川県『建設業許可申請の手引き 令和8年度版』)。
前提:作業用シートには「全件」入れる
提出する様式に直接打ち込む前に、別ファイルで作業用シートを1枚作ります。
⚠️ 当期に完成した工事を、元請・下請・軽微を問わず全件入れてください(未成工事は別のシートに分けます)。7割の分母は「書いた工事の合計」ではなく、その年の完成工事高の全額だからです。ここを入力漏れすると判定が甘くなり、記載件数が足りずに差し戻されます。
入力が終わったら、E列(税抜)の合計が、様式第三号のその業種・直前決算の額と一致するかを先に確認してください。一致すれば、この後の判定はすべて正しい分母で動きます。
列はこう並べます。

| 列 | 見出し | 入れるもの |
|---|---|---|
| A | 工事名 | 「A邸○○工事」など |
| B | 注文者 | 個人なら「A」「B」 |
| C | 元請下請 | 「元請」または「下請」 |
| D | 請負代金(税込・円) | 軽微の判定に使う |
| E | 請負代金(税抜・円) | 様式に転記する金額のもと |
| F | 軽微 | 判定式(下記) |
| G | 累計 | 判定式(下記) |
| H | 累計比率 | 判定式(下記) |
| I | 軽微の累計件数 | 判定式(下記) |
D列・E列は「円」単位で入れてください。千円単位で入力すると、次の軽微判定が全件「軽微」になります(様式へ転記するときに千円へ直します。後述)。
ステップA:①元請の7割を判定する
まず並べ替えます。最優先キーを「C列(元請下請)」、次に優先されるキーを「E列(税抜)の大きい順」にすると、元請が上にまとまり、その中が金額の降順になります。
⚠️ 並べ替えは、必ず表全体(A〜I列)を選んでから。1列だけ選んで並べ替えると、工事名と金額の対応が崩れます。フィルターで隠すのではなく、実際に行を並べ替えるのがポイントです。
そのうえで2行目から次の式を入れます(データは200行目までを想定。件数が多い会社は200を広げてください)。
F2:軽微かどうか(建築一式以外=税込500万円未満で判定)
=IF(D2="","",IF(D2<5000000,"軽微",""))
建築一式工事なら 5000000 を 15000000 に変えます。
なお木造住宅で延べ面積150㎡未満は、金額にかかわらず軽微です。この分岐は式では拾えないので、延べ面積の列を別に立てて手で判定してください。
※とくに建築一式工事で木造住宅の新築・増築を請け負う工務店は、金額だけで判定すると軽微な工事を取りこぼします。
G2:ここまでの累計(税抜)
=SUM($E$2:E2)
上の行から自分の行までを足し上げます。ステップBでそのまま使います。
H2:元請合計に対する累計比率
=SUMIF($C$2:C2,"元請",$E$2:E2)/SUMIF($C$2:$C$200,"元請",$E$2:$E$200)
分子・分母とも「元請」に限定しているのがポイントです。分子を単純なSUMにすると、後で下請を足したときに比率が過大になり、記載が足りなくなります。
I2:ここまでに出てきた軽微な工事の件数
=COUNTIF($F$2:F2,"軽微")
H列が初めて70%を超えた行——その行を含めて——が①で書く範囲です。「おおむね7割」なので、70.0%ちょうどに合わせる必要はありません。軽微な工事は、I列が10に達したらそこで打ち切ります。
ステップB:②全体の7割を判定する
①で採用した行はそのまま動かさず、その下の行だけを選んで、E列の大きい順に並べ直します。
⚠️ ステップAの並べ替えのままでは②は作れません。②で並べるのは「①で書かなかった元請 + すべての下請」を混ぜて金額の大きい順にしたもの。元請が先・下請が後の並びのままだと、下請の大口が後ろに回ってしまい、順番が狂います。
この並びで、H列を次の式に切り替えます。
=G2/SUM($E$2:$E$200)
分母が「すべての完成工事の合計」に変わりました。ここでも、H列が初めて70%を超えた行までが記載範囲です。
軽微な工事の10件は、①で数えたぶんと通算します。②で新たに10件ではありません(I列の式はそのまま使えます)。
出典:神奈川県『建設業許可申請の手引き 令和8年度版』「工事経歴書作成方法」=「①、②で合わせて10件を超えて記載する事を要しない」/神奈川県『経営事項審査の手引き 令和8年7月1日版』第2分冊=「①、②合わせて10件を超えて記載することを要しません」。なお様式第二号の記載要領3(1)は、①と②のそれぞれに「10件を超えて記載することを要しない」と書く形で、「通算」と明示しているのは県の手引きです。
(このほか、請負代金の額の合計が1,000億円を超える部分は記載不要とされています。出典:様式第二号 記載要領3(1)①②ただし書)
ステップC:千円単位に直して転記する
様式の請負代金の額は、千円単位で記入します。
請負代金の額を千円単位で記入する。なお、変更契約がある場合は、変更後の金額を記入する。
(神奈川県『建設業許可申請の手引き 令和8年度版』工事経歴書 記載例の注記)
作業用シートは円で持っておき、様式へ移すときに千円へ直します。
⚠️ 「表示形式」で千円に見せるだけでは足りません。
セルの表示形式を変えても、中に入っている値は円のままです。すると画面に並んだ千円の数字を足した額と、SUMが返す額がズレます。=E2/1000 のように、値そのものを千円にしてから転記してください。
このとき、端数の扱いを全行でそろえてください。行ごとにバラバラだと、小計・合計と様式第三号の突き合わせで数千円のズレが出ます。
※工事経歴書の記載要領に、端数を切り上げるか切り捨てるかの定めは見当たりません。参考までに、同じ手引きの財務諸表の作成要領では「千円未満の端数処理は統一して表示してください」とされ、経審を受ける場合は「千円未満の端数は切り捨てて表示してください」と明記されています(神奈川県『建設業許可申請の手引き 令和8年度版』第2章 財務諸表 作成要領(3)(4))。そろえるなら切り捨てが自然です。
用紙が足りなくなったら2枚目以降を使います。小計はページごと、合計は最終ページだけです(様式第二号 記載要領11・12)。
なお、神奈川県では令和5年1月から電子申請システム(JCIP)による受付も行われています(神奈川県『建設業許可申請の手引き 令和8年度版』)。電子申請での提出方法や、作成したエクセルの取扱いについては、県のご案内をご確認いただくか、当事務所へお問い合わせください。
4. エクセル入力で、よく聞かれること
個人のお客様の名前はどう置き換える?
注文者や工事名から個人の氏名が特定されないようにします(様式第二号 記載要領6)。神奈川県の手引きは書き方まで指定しています。
注文者が個人の場合は、氏名が特定されないように、「A」、「B」・・とし、工事名は、「A邸○○工事」・・・とする。※イニシャルではなくABCに置き換えてください。
(神奈川県『建設業許可申請の手引き 令和8年度版』)
イニシャル(S様→S邸)ではなく、登場順にA・B・Cと振ります。エクセルなら、元の名前を別列に残したまま置換すると、後から自社で照合できます。
現場の担当者が途中で代わったときは?
配置技術者の欄には、氏名と「主任技術者か監理技術者か」の別を書きます。工事の途中で交代があった場合は、交代前の人も含めて全員書きます(様式第二号 記載要領8)。
監理技術者補佐(=監理技術者を補佐する技術者)を置いた場合や、特定専門工事(=一定の要件を満たす下請工事で、元請の技術者が下請分をまとめて管理できる仕組み)に該当して主任技術者を配置しなかった場合は、その旨も記載します(同)。
1つのセルに複数名を入れたいときは「Alt+Enter」でセル内改行できます。
「うち、PC、法面処理、鋼橋上部」の欄がある業種は?
土木一式工事・とび・土工・コンクリート工事・鋼構造物工事の3業種だけが使う内数欄です(様式第二号 記載要領10)。該当する工事がなければ記入は不要です。
作業用シートでは、内数用の列を1本立てておくと転記が楽になります。詳しい対応表は柱記事のルール5にあります。
→ 各欄は「契約1件ずつ・個人名は伏せて具体的に」【記入例つき】
なお、JV(共同企業体)の工事や、下請工事の「注文者」に誰を書くかも、柱記事の同じ節で解説しています。
5. 決算変更届の段階で「経審仕様」にしておくと、作り直さずに済む
最後に、毎年の手間が減る話をひとつ。
神奈川県の経営事項審査の手引きには、こう書かれています。
決算変更届に様式第2号を添付し、かつ経営事項審査受審用記載要領を満たしている場合、提出を省略できます。
(神奈川県『経営事項審査の手引き 令和8年7月1日版』第2分冊)
つまり神奈川県では、決算変更届のときに「経審を受ける会社向けの書き方」で作って添付しておけば、経審の場面で工事経歴書の提出を省略できるということです(上の2つの条件を満たしている場合)。
これは神奈川県だけの運用ではありません。省略できる仕組みそのものは、建設業法施行規則に書かれています。
法第六条第一項又は第十一条第二項(法第十七条において準用する場合を含む。)の規定により、経営規模等評価の申請をする日の属する事業年度の開始の日の直前一年間についての別記様式第二号による工事経歴書を国土交通大臣又は都道府県知事に既に提出している者は、前項の規定にかかわらず、その添付を省略することができる。
(建設業法施行規則第19条の8第2項)
「できる」と書かれているとおり、出しておけば省けるという規定です。そのうえで神奈川県は、省略の条件として「経営事項審査受審用記載要領を満たしていること」を示しています。つまり、決算変更届のときの書き方が経審の記載要領に合っていなければ、結局もう一度作ることになります。
具体的に変えるのは、この3点です。
- 税抜で入力する(免税事業者を除く)
- 元請工事だけを先に7割まで書き、そのあとに全体の7割まで書く(この記事のステップA・B)
- 確認書類のコピーに、業種と通し番号を振っておく
3点目は見落とされがちですが、手引きに明記されています。
経営事項審査の受審の際、確認書類として提出する工事請負契約書等のコピーには、必ず業種・番号(請負金額順の通し番号)を記入して、工事経歴書と確認書類との対応関係を明確にしてください。
(神奈川県『経営事項審査の手引き 令和8年7月1日版』第2分冊)
1年前の工事を思い出しながら並べ替えるのは、かなりの負担です。経審を受ける予定があるなら、決算変更届の段階から経審仕様で作る。これが結果的にいちばん早い方法です。
なお、決算変更届は毎年必要な届出です。建設業法は、許可を受けた建設業者は毎事業年度終了の時における書類を「毎事業年度経過後四月以内」に提出しなければならない、と定めています(建設業法第11条第2項)。3月決算なら7月31日が提出期限です。出していない年があると、更新や業種追加のときにまとめて求められます。
まとめ:エクセルは「並べ替え」に使い、「合計」には使わない
- 工事経歴書のエクセル様式は、神奈川県の「許可申請書等ダウンロード」から無料で入手できる。記載要領PDFもセットで落とす
- 前年ファイルを開いたら、県の最新様式と欄の構成を見比べる
- 経審を受けるなら税抜で記載。ただし軽微かどうかの判定は税込(500万円/建築一式1,500万円)
- 合計欄はSUMで出さない。合計はその業種のその年の全額。様式第三号と一致するかで検算する
- 未成工事は小計・合計に含めない(工事進行基準の括弧書きは除く)
- 作業用シートには全件を円単位で入れ、7割はステップA(元請限定)→ステップB(全体)で判定。様式へは千円単位で転記する
- 決算変更届の段階で経審仕様に整えておけば、経審での提出を省略できる
書く順番そのもの(7つのルールと記入例)は、柱記事にまとめてあります。
→ 【記入例つき】工事経歴書の書き方|決算変更届・経審で迷わない7つのルール
よくあるご質問(エクセル様式の入手と記載範囲)
Q. 工事経歴書のエクセル様式は、無料でダウンロードできますか?
A. できます。神奈川県知事許可なら、神奈川県の「許可申請書等ダウンロード」に「第二号(エクセル)」という名前で置かれています。同じページに「記載要領(PDF)」と、検算に使う「第三号(エクセル)」(直前三年の各事業年度における工事施工金額)もあります。有料の書式を買う必要はありません。
Q. 市販のテンプレートやフォーマットを買う必要はありますか?
A. ありません。工事経歴書の書式は建設業法施行規則の「別記様式第二号」として国が定めており、許可行政庁が無料で配っています。当所でお手伝いした案件では、打ち直しによる転記ミスの差し戻しが多いため、最初から行政庁のエクセルに入力することをおすすめしています。
Q. 様式第二号のダウンロード先は、どこを見ればいいですか?
A. 自分の許可行政庁のサイトです。神奈川県知事許可なら神奈川県のダウンロードページ、他県の知事許可ならその県のページ、大臣許可なら国土交通省の地方整備局の案内を見ます。様式そのものは国が定めた様式第二号で全国共通ですが、記載範囲の案内(神奈川県の「おおむね6割程度まで」など)は行政庁ごとに違います。
Q. 結局、何件書けばいいですか?
A. 件数ではなく条件で決まります。経営事項審査を受ける場合は、①元請工事を請負代金の大きい順に、元請の合計のおおむね7割を超えるところまで、②続けて残りの元請と下請を、すべての完成工事の合計のおおむね7割を超えるところまで、③続けて主な未成工事の順です。軽微な工事については、①②合わせて10件を超えて記載することを要しません。神奈川県で経営事項審査を受けない場合は、おおむね6割程度まで(この場合も軽微な工事は10件を超えて記載する必要はない、と案内されています)。順番と範囲のルールそのものは、→【記入例つき】工事経歴書の書き方 で図解しています。
Q. 「軽微な工事」の判定は、税込ですか、税抜ですか?
A. 判定は税込です(建築一式工事は1,500万円未満、または請負代金の額にかかわらず延べ面積150㎡未満の木造住宅を建設する工事、それ以外は500万円未満)。一方、経営事項審査を受ける会社が様式に書く請負代金は税抜です(免税事業者を除く)。さらに政令には、同じ工事の完成を2以上の契約に分割したときは合計額で判定する(正当な理由で分割したときを除く)、注文者が材料を提供するときはその市場価格または市場価格と運送賃を加える、という2つの決まりがあります。作業用シートは、この3点を分けて持ってください。
Q. 個人事業主でも、様式や書き方は同じですか?
A. 様式は同じ様式第二号で、法人と個人で分かれていません。違うのは2点です。ひとつは「直前」決算の考え方で、神奈川県の手引きは、決算期終了後、法人は2か月、個人は3月15日を経過した場合に当該期を「直前」と考える、としています。もうひとつは、注文者が個人の場合の書き方で、氏名が特定されないように「A」「B」とし、工事名は「A邸○○工事」とします(こちらは申請者が個人かどうかとは別の話です)。
Q. 神奈川県以外の様式は、どこで手に入りますか?
A. 許可を出している行政庁が配っています。「○○県 建設業 様式 ダウンロード」で探すのが早いです。なお、この届出は建設業法第11条第2項に基づくもので、神奈川県の手引きでは「決算変更届(決算報告)」と表記されています。行政庁によって呼び名が違うことがあるため、見つからないときは「決算変更届」「決算報告」「事業年度終了届」のいずれかで探してみてください。
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やさしい行政書士事務所
代表行政書士 宮本 雄介(神奈川県行政書士会所属/登録番号 第12082434号)
〒257-0003 神奈川県秦野市南矢名2123-1 オレンジハイツ今井2E
この記事の出典
本記事の記載は、次の一次資料を2026年9月4日に直接確認したうえで書いています。様式・記載要領・金額基準・条文は改正されることがあります。提出の前には、下記の一次資料と、ご自身の許可行政庁の最新の案内をご確認ください。
- 神奈川県県土整備局事業管理部建設業課「許可申請書等ダウンロード」https://www.pref.kanagawa.jp/docs/u2h/cnt/f531856/youshiki.html(様式第二号(エクセル)・記載要領(PDF)・様式第三号の配布元。2026年9月4日時点の更新日は2026年8月26日)
- 神奈川県「建設業許可申請の手引き及び申請書等のダウンロード」https://www.pref.kanagawa.jp/docs/u2h/cnt/f531856/p18113.html(手引き本体の掲載元。第1章=許可が不要な軽微な建設工事・「直前」決算の判定/第2章=工事経歴書 作成方法・記載例の注記)
- 神奈川県「建設業関係」https://www.pref.kanagawa.jp/docs/u2h/cnt/f531856/kensetugyou.html(経営事項審査の手引き(令和8年7月1日版)ほか、建設業課の案内の入口)
- e-Gov法令検索「建設業法」https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100(第3条第1項(大臣許可と知事許可)/第11条第2項(毎事業年度経過後四月以内の提出)/第27条の23第1項(経営事項審査))
- e-Gov法令検索「建設業法施行令」https://laws.e-gov.go.jp/law/331CO0000000273(第1条の2第1項〜第3項(軽微な建設工事の金額・分割契約の合算・注文者が提供する材料)/第45条(経営事項審査の対象となる公共工事の範囲))
- e-Gov法令検索「建設業法施行規則」https://laws.e-gov.go.jp/law/324M50004000014(別記様式第二号の根拠=第2条・第13条の2・第13条の3・第19条の8。とくに第19条の8第2項=工事経歴書を既に提出している場合の添付の省略)
様式第二号(第二条、第十三条の二、第十三条の三、第十九条の八関係)「記載要領」1〜12は、上記の神奈川県ダウンロードページで配布されている記載要領(PDF)によります。
※本記事は2026年9月4日時点の情報をもとに、一般的な解説としてまとめたものです。様式・記載要領・軽微な建設工事の金額基準は、法令改正や行政庁によって取扱いが変わる場合があります。実際の申請・届出にあたっては、申請先の行政庁が配布する最新の手引き・様式をご確認いただくか、当事務所までご相談ください。
(執筆・監修:やさしい行政書士事務所 代表行政書士 宮本 雄介/登録番号 第12082434号)