「経審って、自分で申請できるものなの?」
秦野市や神奈川県央エリアの建設業者さんから、こういうご相談をよくいただきます。
結論から言います。経審(経営事項審査)は、自分で申請することができます。 行政書士に頼まなければいけない、という決まりはありません。
でも、正直に言うと「自分でできる」と「自分でスムーズにできる」の間には、けっこうな距離があります。
この記事では、やさしい行政書士事務所(秦野市・神奈川県央エリア特化)の代表行政書士 宮本 雄介が、自分で経審を申請する手順と、実際につまずきやすいポイントを、隠さずに公開します。😊
「経審」とは何かも、一言で言い換えながら進めます。専門用語で挫折しないように書いていますので、最後まで読んでみてください。
目次
この記事の対象と、先にお伝えしたいこと
この記事は、次のような方に向けて書いています。
- 神奈川県知事許可を持つ建設業者で、これから経審を受けようとしている方
- 「自分で申請して費用を浮かせたい」と考えている経営者・事務担当の方
- 経審という言葉は知っているけれど、何から手をつければいいか分からない方
先にお伝えします。この記事は「自分でやるのはやめて、必ず行政書士に頼め」という記事ではありません。
そもそも経審とは? 一言で言うと「公共工事の入札に必要な会社の評価」
経審(経営事項審査)を一言で言うと、「公共工事の入札に参加するために必須の、会社の経営状況・経営規模の評価」です。
民間工事だけをやる会社には、基本的に関係がありません。ですが、公共工事を受注したいなら、建設業許可を取っただけでは足りず、経審を受けて評価(点数)をもらう必要があります。

経審の点数は「総合評定値(P点)」と呼ばれ、次の5つの項目を合算して算出されます(出典:神奈川県『経営事項審査の手引き』令和8年7月1日版)。
| 記号 | 審査する内容 | 一言で言うと |
|---|---|---|
| X1 | 完成工事高(業種別) | 過去の工事の売上規模 |
| X2 | 自己資本額・利益額 | 会社の財務体力 |
| Y | 経営状況(財務指標) | 決算書から見た健全性 |
| Z | 技術職員数・元請完成工事高 | 技術者の数と元請実績 |
| W | 社会性等 | 社会保険加入や担い手育成の取組など |
この5項目をウエイト(重み)で合算した点数が、入札参加資格の格付けに使われます。つまり経審は「うちの会社は公共工事を受注する力がどれくらいあるか」を、国の統一ルールで数字にする制度です。
経審を自分で申請する場合の全体の流れ
まず、経審にたどり着くまでの全体像を押さえておきましょう。見出しだけ追えば、流れがつかめるようにしています。

ステップ1:決算変更届を出す(経審の前提条件)
経審を申請する前に、直前の決算についての「決算変更届」(工事経歴書・財務諸表など)を、許可行政庁(神奈川県知事許可なら神奈川県)に提出しておく必要があります(出典:建設業法、神奈川県『建設業許可申請の手引き』)。
ここが最初のつまずき所です。詳しくは後述します。
ステップ2:経営状況分析(Y点)を申請する
決算書をもとにした「経営状況」の分析は、神奈川県ではなく、国土交通大臣に登録された「登録経営状況分析機関」に申請します(神奈川県庁ではありません)。分析結果として通知書が届きます。
ステップ3:経営規模等評価・総合評定値請求(X・Z・W・P点)を申請する
ステップ2の結果通知書を添えて、神奈川県知事に経営規模等評価と総合評定値の請求を行います。窓口(対面)または電子申請のいずれかです。
ステップ4:結果通知書を受け取る
総合評定値通知書が届いたら、そこで初めて入札参加資格の申請に進めます。この通知書の有効期間は審査基準日から1年7か月です(建設業法施行規則第18条の2)。切れ目なく更新することが、公共工事を継続受注するうえでの鉄則です。
自分で経審申請する場合に必要な書類一覧
神奈川県の経審申請では、主に次の書類をそろえます(出典:神奈川県『経営事項審査の手引き』令和8年7月1日版)。
- 経営規模等評価申請書・総合評定値請求書
- 工事種類別完成工事高・元請完成工事高の一覧
- 技術職員名簿
- その他の審査項目(社会性等)の申告書
- 建設機械の保有状況一覧表(保有している場合のみ)
- 経営状況分析結果通知書(原本)
- 審査手数料の支払いを証明する書類
確認書類(写し)
許可通知書、工事請負契約書、消費税納税証明書、常勤性を確認する書類、技術者の資格を証明する書類、雇用保険・健康保険・厚生年金の加入状況が分かる資料など、27項目にわたります。
数が多いと感じたと思います。実際、多いです。この量を自分の手で1つずつそろえていく、というのが「自分で経審」の実態です。
経審の手数料はいくら?(神奈川県知事許可の場合)
自分で申請する最大のメリットは、行政書士への報酬がかからないことです。県に支払う審査手数料は、自分で申請しても行政書士に頼んでも同額で、次のとおりです(出典:神奈川県『経営事項審査の手引き』令和8年7月1日版)。
| 条件 | 1業種 | 追加1業種ごと |
|---|---|---|
| 総合評定値(P点)を希望する場合 | 11,000円 | +2,500円 |
| 総合評定値を希望しない場合 | 10,400円 | +2,300円 |
支払いはキャッシュレス決済または納付書払いで、審査が終わった後に支払う仕組みです(申請時ではありません)。
自分で経審を申請するときにつまずきやすい所【正直に公開します】
ここが、この記事でいちばん伝えたい部分です。士業がよく口にする「自分でやるのはリスクが高い」という一般論ではなく、実際に何でつまずくのかを具体的に挙げます。

つまずき所1:決算変更届と経審の内容が食い違う
経審の審査過程で、決算変更届の内容の修正が必要になるケースが多いことは、神奈川県の手引きでも冒頭で注意喚起されています。
工事経歴書に書いた完成工事高の数字と、経審申請書の数字が一致していないと、そこで差し戻しや確認のやり取りが発生します。税抜で処理しているか、業種の区分が正しいかを、決算変更届の段階からそろえておくことが重要です。
つまずき所2:決算書と「建設業財務諸表」は別モノ
これは経審で最もつまずきやすいポイントかもしれません。税務申告用の決算書と、建設業法にもとづく「建設業財務諸表」は、実は別のルールで作る書類です(出典:『建設業者と行政書士のための建設業財務諸表の最強ガイド』)。
具体的には、次のようなルールの違いがあります。
- 建設業財務諸表は消費税抜きで作成し、千円単位でまとめる
- 当期分の税金は「発生主義」で必ず計上する必要がある(税理士の決算書が現金主義の場合は修正が必要)
- 人件費は「現場に出ない人」「現場に出る人」で明確に区分する
- 工事原価に人件費がまったく計上されていないと、技術者の配置義務違反や一括下請負(丸投げ)を疑われる可能性がある
つまり、顧問税理士からもらった決算書をそのまま経審に使うと、数字が合わなかったり、実態と違う印象を与えてしまったりすることがあります。ここは会計の知識が必要になる領域です。
つまずき所3:常勤性を証明する資料が変わっている
技術者や役員の「常勤性」を証明する資料は、令和7年12月1日以降、紙の健康保険証が使えなくなりました。現在は原則として、社会保険の標準報酬決定通知書などで確認します(出典:神奈川県『経営事項審査の手引き』令和8年7月1日版)。
「前回はこの書類で通ったから」という前例が、今回は通用しないことがあります。制度は毎年のように変わるので、申請するたびに最新の手引きを確認する必要があります。
つまずき所4:令和8年7月1日からのW点改正を知らずに申請してしまう
これは特に注意が必要です。令和8年7月1日以降の申請から、経審の「社会性等(W点)」に大きな改正が入っています(出典:神奈川県『経営事項審査の手引き』令和8年7月1日版、令和8年国土交通省告示第262号)。
- 雇用保険・健康保険・厚生年金の加入状況が、審査項目から削除された
- 「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の宣言の有無が、新しい加点項目として追加された(宣言書+誓約書の提出が必要)
- CCUS(建設キャリアアップシステム)の就業履歴による加点の配点が見直された
古い年度の書籍や、他県の事例をそのまま参考にすると、この改正を見落としたまま申請してしまうリスクがあります。(配点の具体的な数値は制度が動いている最中のため、申請直前に必ず最新の手引きで確認することをおすすめします。)
つまずき所5:窓口対応は「金曜日が行政書士の代理申請日」など運用が細かい
神奈川県の経審の対面申請は、住宅供給公社ビル(横浜市中区)で行われますが、火曜日は申請者本人、金曜日は代理人(行政書士)による申請の受付日、という運用があります(出典:神奈川県『経営事項審査の手引き』)。
自分で申請する場合は、この曜日の区分や、受付日カレンダーを事前に確認しておかないと、窓口まで行ったのに受け付けてもらえない、という事態になりかねません。
「自分でできるケース」と「相談したほうがいいケース」の目安
正直に線引きをします。

- 決算内容がシンプルで、兼業事業(建設業以外の売上)がほとんどない
- 完成工事高・工事経歴書の数字がすでに決算変更届と一致している
- 昨年度までの経審で大きな指摘を受けていない
- 書類作成にかけられる時間が十分にある(数十時間単位を見込む必要があります)
- 兼業事業の売上が大きい、または経理処理が複雑
- 技術職員の資格・実務経験の該当性に迷いがある
- 令和8年7月のW点改正の影響(CCUS加点・自主宣言制度)を自社がどう受けるか分からない
- 目標とする格付け・工事規模に対して、今の点数が足りているか判断できない
「全部自分でやるか、全部丸投げするか」の二択である必要はありません。書類は自分で作って、提出前の最終チェックだけ相談する、という使い方もできます。
やさしい行政書士事務所の考え方:自分で経審に挑戦する方の力になりたい
私たちは、YouTubeで手続きを公開しているような同業者の情報発信を否定しません。むしろ、自分で調べて、自分でやってみようとする経営者の姿勢は立派だと思っています。
やさしい行政書士事務所では、この記事のように自分で経審を申請する手順とつまずき所を隠さず公開したうえで、次の2つの形でサポートしています。
- AIを活用した業務効率化ツールによる支援:書類の抜け漏れチェックや、数字の整合性確認を効率的に行う仕組みを整えています
- スポットでの確認相談:全部を依頼するのではなく、「ここだけ見てほしい」という部分的な相談にも対応します。全て代行する経審一式は99,800円(税抜・消費税別)からで、県に納める審査手数料(1業種11,000円〜、追加1業種ごとに+2,500円)は実費として別途かかりますが、部分的な確認だけをご希望の場合はご相談時に内容に応じてお見積りします
「自分でやる」という選択を、最後まで一人で抱え込まなくていい。そんな距離感でお付き合いできればと思っています。
関連記事・関連業務のご案内
経審は、建設業許可や決算変更届、財務諸表とセットで理解する必要がある制度です。あわせて次のような点も気になる方が多いので、関連する内容は別記事で詳しく解説しています。
- 経審の点数(P点)そのものの仕組みや格付けとの関係を詳しく知りたい方は、経審のP点・ランクを解説した記事もあわせてご覧ください
- 一人親方や技術者が少ない会社で経審の点数がどう変わるかは、経審と資格・技術者数についての記事で扱っています
- 個人事業から法人化するかどうかで迷っている方は、建設業の法人化にかかる費用を解説した記事も参考になります
- 決算変更届そのものの作り方に不安がある方は、建設業許可の手続き全般(決算変更届・変更届)についてもご相談いただけます
(経審のP点対策・CPD/CCUS・建設業経理士による加点など、点数アップの具体的なテクニックについては、それぞれの個別記事で扱っていますので、まずは経審の全体像をつかんだ上でご覧ください。)
まとめ:経審は自分でできる。ただし、つまずき所を知ってから始めよう
最後にもう一度、要点を整理します。
- 経審は自分で申請できる。行政書士に依頼する義務はない
- ただし、決算変更届との整合性、建設業財務諸表への「翻訳」、常勤性の証明資料、令和8年7月のW点改正など、つまずきやすいポイントが複数ある
- 制度は頻繁に改正されるため、申請直前に最新の手引きを必ず確認する
- 全部自分でやるか、全部依頼するかの二択でなく、部分的な確認だけを相談することもできる
「自分でできそうか、一度確認してから決めたい」という方は、まずはお気軽にご相談ください。

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