元請けの仕事が決まった。契約書を読んでいたら「施工体制台帳」という聞き慣れない言葉が出てきた——そんな状況ではありませんか。
「うちの現場に、本当に必要なのか」「必要だとして、何を書けばいいのか」。調べれば調べるほど、サイトによって金額の数字が違っていて、余計に不安になった方もいるはずです。
実は、ネット上の解説には古い金額のまま更新されていないものが少なくありません。この記事では、2026年9月時点の建設業法・建設業法施行令・建設業法施行規則、そして公共工事にかかわる入札契約適正化法の条文にもとづいて、施工体制台帳が必要になる金額はいくらからかを正面から整理します。
結論から先に言うと、施工体制台帳が必要になるのは「民間工事で3つの条件がそろったとき」と「公共工事で、元請けとして下請と契約するとき」の2パターンだけです。この記事では、その判定方法から、記載する中身、保存期間、守らなかったときにどうなるかまで、行政書士が条文にもとづいて解説します。
※この記事は、神奈川県秦野市の行政書士(登録番号 第12082434号)が、e-Gov法令検索で取得した現行条文にあたって作成しています。
この記事でわかること
- 施工体制台帳が必要になる金額はいくらからか(民間工事・公共工事それぞれ)
- 金額がいつ4,500万円から5,000万円に変わったのか
- 混同しやすい「5,000万円ライン」など4つの金額の違い
- 台帳に何を書くか、添付書類は何か
- 保存期間と、作らなかったときに実際に起きること
結論:施工体制台帳が必要になる金額はいくらから?
| 工事の種類 | 施工体制台帳が必要になる金額 |
|---|---|
| 民間工事 | その工事のために結んだ下請契約の請負代金の総額が5,000万円以上 (元請けが発注者から直接請け負った工事が建築一式工事なら8,000万円以上) ※金額だけでは決まりません。「自社が特定建設業者」「発注者から直接請け負った元請け」の2つも同時に必要です |
| 公共工事 | 金額は関係ありません 元請けとして建設工事の下請契約を1件でも結べば必要(一般建設業者も対象) |
- この5,000万円は令和7年2月1日からの金額です(直前の令和5年1月1日〜令和7年1月31日は4,500万円/建築一式7,000万円、それ以前は4,000万円/建築一式6,000万円)。→ 金額の変遷表で確認する
- 金額には消費税・地方消費税を含みます(税込みで判定)。
- 元請けが提供する材料等の価格は含みません。
- 資材の購入、調査・運搬・警備など、建設工事の請負ではない契約は総額に足しません。
目次
- 施工体制台帳とは
- 結論:施工体制台帳が必要になる金額はいくらから?必要になるのはこの2パターン
- 施工体制台帳の5,000万円と混同しやすい、4つの金額ラインを整理する
- フローチャートで確認:うちの現場は対象になる?
- 公共工事は要注意——民間と変わる5つのポイント
- 施工体制台帳には何を書く? 記載事項を4つのかたまりで整理
- 添付書類と、記載を省略できるケース
- 施工体制台帳とセットで作る「施工体系図」
- 台帳を作ることになったら、下請への通知・掲示も忘れずに
- 記載事項が変わったときの直し方
- 保存期間はどれくらい?——台帳は5年、施工体系図は10年
- 守らなかったらどうなる?——「罰金」ではなく「指示処分」
- よくある質問
- まとめ:まず確認すべき3つのこと
- 施工体制台帳の作成・チェックは、やさしい行政書士事務所へ
- 出典(根拠条文)
施工体制台帳とは
施工体制台帳とは、元請けの会社が、下請けも含めた工事現場の体制——誰が、どの範囲を施工しているか——を1冊にまとめて記録しておく書類です(建設業法24条の8)。
条文は「作成し、工事現場ごとに備え置かなければならない」と定めています(同条1項)。事務所で作って保管しておけばよい書類ではなく、その現場に置いておくことまでが義務です。
工事現場に何社もの下請けが入ると、発注者からは「誰が実際に工事をしているのか」が見えにくくなります。それを可視化して、手抜き工事や不当な重層下請けを防ぐ、というのがこの制度の目的です。
施工体制台帳とセットで用意するのが作業員名簿です。様式は法令で決まっておらず、記載すべき項目が決まっています。→ 作業員名簿とは?様式は自由|必ず書く6項目と、元請も対象になる理由
結論:施工体制台帳が必要になる金額はいくらから?必要になるのはこの2パターン
一文で言うと、こうなります。
- 民間工事:3つの条件がすべてそろったときだけ
- 公共工事:金額に関係なく、元請けが建設工事の下請契約を1件でも結んだら
順番に見ていきましょう。
民間工事:下請契約の総額5,000万円以上など、3つの条件がすべてそろったとき
民間工事で施工体制台帳が必要になるのは、次の3つが同時に成り立つときだけです(建設業法24条の8第1項、建設業法施行令7条の4)。
- あなたの会社が特定建設業者であること(下請けに出す代金の合計が一定額以上になる元請けのための、より要件が重い建設業許可です。一般建設業者は民間工事では対象外です)
- 発注者から直接請け負った工事であること(=元請けの立場。下請けとして工事を受けている場合は対象外です)
- その工事のために結んだ下請契約の総額が5,000万円以上であること
※元請けが発注者から直接請け負った工事が建築一式工事なら、8,000万円以上で判定します
ここでいう下請契約とは、建設工事の請負契約のことです(建設業法2条4項)。ですので、資材を買う契約、機材のリース、廃棄物の運搬、現場の警備といった建設工事の請負ではない契約は、5,000万円の集計に入れません。「支払った金額の合計」ではなく「建設工事を請け負わせた金額の合計」で見てください。
この3つのうち、どれか1つでも欠けると、民間工事では施工体制台帳を作る義務はありません。
なお、作成義務がある場合、発注者から請求があったときは、備え置いた台帳を発注者の閲覧に供する必要があります(建設業法24条の8第3項)。「作って現場に置いておけば、見せなくてよい」ではありません。
⚠️ 「4,500万円」と「5,000万円」、どちらが正しい?:どちらも、その時点では正しい金額です。施工体制台帳の金額(建設業法施行令7条の4)は、ここ数年で2回引き上げられました。ネットの解説に古い金額が残っているのは、このためです。
| 適用される時期 | 建築一式工事以外 | 建築一式工事 |
|---|---|---|
| 〜令和4年12月31日 | 4,000万円以上 | 6,000万円以上 |
| 令和5年1月1日〜令和7年1月31日 | 4,500万円以上 | 7,000万円以上 |
| 令和7年2月1日〜現在 | 5,000万円以上 | 8,000万円以上 |
現在の金額は5,000万円(建築一式工事は8,000万円)です。根拠は建設業法施行令7条の4。令和7年2月1日の引き上げは令和6年政令第366号(附則1項3号)、令和5年1月1日の引き上げは令和4年政令第353号(附則1項ただし書)によるもので、いずれもe-Govで確認できます(出典は記事末尾にまとめています)。
※施行日をまたぐ工事の具体的な取扱いは、発注者・許可行政庁にご確認ください。
公共工事:金額に関係なく、下請に1件でも出したら
まず「公共工事」の意味をはっきりさせておきます。入札契約適正化法2条2項は、公共工事を「国、特殊法人等又は地方公共団体が発注する建設工事」と定義しています。市役所や県が発注する工事は、ここに入ります。
見るのは「あなたが誰から直接請け負ったか」です。民間企業から下請けとして入っている工事は、その先の発注者が市役所であっても、あなたは台帳を作る側ではありません(元請けへの通知・協力を求められる側です)。
そのうえで、公共工事は話が変わります。入札契約適正化法15条1項が建設業法24条の8を読み替えていて、民間工事とは次の2点が違います。
- 「特定建設業者」ではなく「建設業者」が対象になる(=一般建設業者も対象)
- 金額の条件が消え、下請契約を1件でも締結したら作成義務が発生する
つまり公共工事では、「うちは金額が小さいから大丈夫」という民間工事の感覚は通用しません。この点は事故が起きやすいところなので、あとの章でさらに詳しく説明します。
施工体制台帳の5,000万円と混同しやすい、4つの金額ラインを整理する
建設業法まわりには、似たような金額のラインがいくつもあります。施工体制台帳の5,000万円と、他の制度の金額を混同している方は少なくありません。4つを並べて整理しておきましょう。
| 制度 | 根拠条文 | 金額ライン | 何が変わるか |
|---|---|---|---|
| 施工体制台帳の作成 | 建設業法施行令7条の4 | 下請契約の総額 5,000万円以上(建築一式8,000万円以上) | 台帳・施工体系図を作る義務が発生する |
| 特定建設業許可が必要になる下請代金 | 建設業法施行令2条 | 5,000万円以上(建築一式8,000万円以上) | この金額以上を下請に出すには、特定建設業許可そのものが必要になる |
| 主任技術者・監理技術者の専任 | 建設業法26条3項 (金額は建設業法施行令27条1項) | 工事1件の請負代金 4,500万円以上(建築一式9,000万円以上) ※施行令27条1項各号に掲げる工事(国・地方公共団体が注文者である施設、道路・上下水道などの工作物、学校、病院、共同住宅、工場、事務所など)に限ります。戸建て個人住宅の新築などは対象外です | 現場に置く技術者を、その現場専属(専任)で配置する義務が発生する ※兼務の特例(一定の要件を満たす場合)や、監理技術者補佐を専任で置く場合の例外があります(法26条3項ただし書) |
| 監理技術者の配置 | 建設業法26条2項 (金額は建設業法施行令2条) | 下請契約の総額 5,000万円以上(建築一式8,000万円以上) | 発注者から直接請け負った特定建設業者は、主任技術者に代えて監理技術者を置く義務が発生する ※施工体制台帳(施行令7条の4)と金額も判定単位(下請契約の総額)も同じなので、実務では同時に問題になります |

いずれも「元請け」「下請け」にかかわる金額ですが、何が発生するかがまったく違います(上の図は、このうち混同の多い3つを図解したものです)。台帳の要否を考えるときは、まず一番上の行(施行令7条の4)だけを見てください。
- 特定建設業許可の要否を詳しく知りたい方は「建設業法改正|下請5,000万円で特定許可・専任4,500万円に」もあわせてご覧ください。
- 主任技術者・監理技術者の専任ラインについては「主任技術者とは?専任技術者との違いと4,500万円の専任ライン」で詳しく解説しています。
フローチャートで確認:うちの現場は対象になる?

ここまでの内容を、判定フローの形にまとめます。上から順に読んでいってください。
Q1.その工事は公共工事ですか?
- はい(公共工事) → Q2へ
- いいえ(民間工事) → Q3へ
Q2.(公共工事の場合)下請と契約する予定がありますか?
- 1件でもある → 施工体制台帳が必要です(金額は関係ありません。一般建設業者でも対象です)
- まったくない(すべて自社施工) → 不要です
Q3.(民間工事の場合)発注者から直接請け負った、元請けの立場ですか?
- いいえ(下請けの立場) → 施工体制台帳を作る義務はありません(むしろ元請けへの通知・協力を求められる側です)
- はい(元請け) → Q4へ
Q4.(民間工事・元請けの場合)あなたの会社は特定建設業者ですか?
- いいえ(一般建設業者) → 民間工事では作成義務はありません
- はい(特定建設業者) → Q5へ
Q5.(民間・元請け・特定建設業者の場合)下請契約の総額は5,000万円以上ですか?
※発注者から直接請け負った工事が建築一式工事なら、8,000万円以上で判定します
- いいえ → 施工体制台帳を作る義務はありません
- はい → 施工体制台帳が必要です
「そもそも自社が一般建設業者か特定建設業者か、許可証のどこを見れば分かるのか分からない」という方もいらっしゃいます。許可の種類や必要書類の全体像は「神奈川県の建設業許可に必要な書類一覧【令和8年度版】」でも確認できます。
判断に迷う場合、特に「うちは特定建設業者だったか一般建設業者だったか分からない」「発注者から直接請け負ったのか微妙なケース」は、自己判断せずにご相談ください。
お電話:0463-57-8330(平日9:00〜18:00)/お問い合わせフォーム(24時間受付)
公共工事は要注意——民間と変わる5つのポイント

公共工事の施工体制台帳は、民間工事の感覚のままだと見落としが出やすいところです。入札契約適正化法15条にもとづいて、5つのポイントを押さえておきましょう。
①金額のラインが消える
民間工事なら「5,000万円未満だから大丈夫」で済みますが、公共工事にその理屈は通用しません。入札契約適正化法15条1項により、金額の条件そのものが取り払われます。下請契約を1件でも結べば対象です。
②一般建設業者も対象になる
民間工事では特定建設業者だけが対象でしたが、公共工事では条文の「特定建設業者」が「建設業者」に読み替えられます。一般建設業許可の会社が元請けになった場合も、下請契約を結べば施工体制台帳が必要です。
③施工体系図は「公衆が見やすい場所」にも掲示する
施工体系図(誰がどの範囲を施工しているかを1枚で示す図)は、民間工事なら「工事現場の見やすい場所」に掲げれば足ります(建設業法24条の8第4項)。公共工事はここにも読み替えがあり、「工事関係者が見やすい場所」及び「公衆が見やすい場所」の両方への掲示が必要です(入札契約適正化法15条1項)。現場の中だけでなく、外から通行人にも見える場所に掲げるイメージです。
④台帳の写しを発注者に提出する
公共工事では、作成した施工体制台帳の写しを発注者に提出しなければなりません(入札契約適正化法15条2項)。この場合、さきほど民間工事のところで触れた建設業法24条の8第3項(発注者から請求があれば閲覧させる規定)は適用されません(同法15条2項後段)。閲覧させる義務が、写しを出す義務に置き換わると捉えてください。
ただし、受注者(元請)側が、建設キャリアアップシステム(CCUS)その他適切なシステムを利用して、発注者が施工体制台帳の記載事項を確認できるようにする措置を講じている場合は、写しの提出が不要になります(入札契約適正化法15条2項、同施行規則3条)。条文は「(受注者が)…措置…を講じている場合を除き」という書き方で、措置を講じる主体は受注者(元請)です。発注者側の整備を待つ話ではなく、元請が措置を講じていなければ提出義務は残ります。運用は発注者ごとに異なるため、免除の扱いは発注者にご確認ください。
⑤発注者の点検は拒めない
発注者から施工体制の点検を求められたときは、拒むことができません(入札契約適正化法15条3項)。
はじめて公共工事に挑戦する場合、施工体制台帳の前段階として、入札参加資格や経営事項審査(経審)が必要になることがほとんどです。入札参加資格の等級(ランク)と経審点数の関係は「入札参加資格の等級(ランク)とは?経審点数との関係と上げ方【神奈川】」、経審の全体像は「経審のやり方を最初から全部」でまとめています。
県外の発注機関も併願する場合は「入札参加資格 東京都は今も申請できる|毎月20日締切と5ステップ」が参考になります(手続きは発注機関ごとに異なります)。
施工体制台帳には何を書く? 記載事項を4つのかたまりで整理
施工体制台帳の記載事項は、建設業法施行規則14条の2第1項に定められています。細かく見ると量が多いのですが、4つのかたまりで捉えると分かりやすくなります。
①作成建設業者(あなたの会社)について
- 許可を受けて営んでいる建設業の種類
- 健康保険・厚生年金・雇用保険への加入状況
②元請けとして請け負った工事について
- 工事の名称・内容・工期
- 発注者と契約した年月日、発注者の商号など、契約した営業所
- 発注者側の担当者(監督員)
- 自社の現場代理人(現場での契約事項を任される、現場の窓口役)
- 現場に置く主任技術者・監理技術者(工事現場の施工管理を担う技術者)の氏名・資格・専任かどうか
- 監理技術者補佐を置く場合は、その氏名・資格
- 技術上の管理を別の人が担当する場合は、その人の情報
- 工事に従事する人全員の氏名・生年月日・年齢・職種・社会保険の加入状況・中退共(中小企業退職金共済)の対象かどうか・安全衛生教育の内容・保有資格(資格欄は本人が希望しない場合は記載を省略できます)
- 一号特定技能外国人・外国人技能実習生が従事しているかどうか
③下請負人について
- 商号又は名称・住所
- 建設業許可を持っている場合は、許可番号と許可業種
- 健康保険等の加入状況
④下請が請け負った工事について
- 工事の名称・内容・工期
- 下請契約を結んだ年月日
- 注文者側の担当者(監督員)
- 下請けの現場代理人
- 下請けが建設業者(建設業許可を持っている業者)であるときは、その下請けが置く主任技術者の氏名・資格・専任かどうか
- 契約した元請けの営業所
- 従事者の情報(②と同じ項目)
- 一号特定技能外国人・外国人技能実習生の従事状況
見落とされやすいのが、下請けの分です。一号特定技能外国人・外国人技能実習生の従事の状況は、自社だけでなく④(下請けが請け負った工事)にも記載事項として並んでいます。
添付書類と、記載を省略できるケース
施工体制台帳には、元請けの請負契約書、そして各下請契約の契約書等(建設業法19条1項・2項に定める書面)の写しなどを添付します(建設業法施行規則14条の2第2項)。
なお、民間工事について、元請け(作成建設業者)が注文者になっていない下請契約——つまり二次下請以下の契約——の契約書の写しは、請負代金の額に係る部分を除いて添付します(同項1号かっこ書き)。公共工事はこの除外の対象外です。
添付書類にすでに同じ事項が書かれている場合は、台帳のどの部分が添付書類のどこに対応するかを明らかにすれば、台帳側への重ねての記載を省略できます(同施行規則14条の5第1項)。
台帳の作り方には、ほかにも次のルールがあります。
- 下請けの記載・添付は、下請負人ごとに、施工の分担関係が分かるように行う(同施行規則14条の5第2項)
- 事実が生じた、または明らかになったら遅滞なく記載し、見やすいところに商号又は名称・許可番号・「施工体制台帳である旨」を明示して作成する(同条第3項)
下請契約の内容——特に金額——が適正かどうかを考えるときは、労務費の相場も参考になります。「建設業の労務費の基準(標準労務費)とは?神奈川の実数と3ステップ」もあわせてご覧ください。
⚠️ 様式について:施工体制台帳や施工体系図について、建設業法施行規則は「何を書くか」(記載事項)を定めていますが、工事経歴書(様式第2号)のような法定の様式番号は定めていません。一方で、発注者や元請けから様式を指定されることがあります。着手前に、指定の様式がないか確認しておくと安心です。
施工体制台帳とセットで作る「施工体系図」
施工体系図とは、誰がどの範囲を施工しているかを、下請負人ごとに系統立てて1枚で示す図のことです(建設業法24条の8第4項)。台帳が「一覧表」だとすれば、体系図は「相関図」のイメージです。
記載事項は建設業法施行規則14条の6に定められています。
- 作成建設業者の商号又は名称
- 元請工事の名称・工期、発注者の商号など、主任技術者又は監理技術者の氏名(監理技術者補佐等を置く場合はその氏名)
- 現にその工事を施工している下請負人の商号・代表者氏名・一般建設業者か特定建設業者かの別・許可番号(下請けが建設業者でない場合は商号と代表者氏名のみ)
- その下請工事の内容・工期、特定専門工事(※)に該当するかどうか、下請けが置く主任技術者の氏名
これらを、下請負人ごとに、施工の分担関係が分かるように系統的に表示します。
※特定専門工事とは、土木一式工事・建築一式工事以外の建設工事のうち、①コンクリートの打設に用いる型枠の組立てに関する工事(大工工事、とび・土工・コンクリート工事のうち)と②鉄筋工事の2つで、その工事のために結んだ下請契約の総額が4,500万円未満のものをいいます(建設業法26条の3第2項、建設業法施行令31条)。ただし、元請けが発注者から直接請け負った建設工事で、その施工のために結んだ下請契約の総額が、監理技術者を置くべき金額(建設業法26条2項の金額=5,000万円、建築一式8,000万円)以上になるものは除かれます(同項ただし書)。この2工事では、一定の条件のもとで元請けの主任技術者が下請けの主任技術者の職務を兼ねられる特例があります。
掲示場所は、民間工事と公共工事で異なります。
| 工事の種類 | 施工体系図の掲示場所 |
|---|---|
| 民間工事 | 工事現場の見やすい場所(建設業法24条の8第4項) |
| 公共工事 | 工事関係者が見やすい場所及び公衆が見やすい場所(入札契約適正化法15条1項) |
台帳を作ることになったら、下請への通知・掲示も忘れずに
施工体制台帳を作らなければならない立場(作成建設業者)になったら、それで終わりではありません。下請負人に対して、次の対応も必要です(建設業法施行規則14条の3)。
- 遅滞なく、下請負人に対して①作成建設業者の商号又は名称、②再下請負通知を行うべき旨と提出場所を書面で通知する
- 同じ内容を、工事現場の見やすい場所に掲示する
この通知を受けた下請けは、さらに他の業者に工事を出す場合、元請けに対して再下請負通知書を提出することになります(建設業法24条の8第2項、名称の定めは建設業法施行規則14条の4第2項)。
再下請負通知書の書き方は項目が多いため、本記事では扱いません。ここでは「下請けから提出してもらう書類」として位置づけを押さえておいてください。誰が・誰に・いつ出すのか、何を書いて何を添えるのかは「再下請負通知書は誰が出す?下請が間違えやすい提出先と時期」で詳しく解説しています。
記載事項が変わったときの直し方
工期が延びた、下請けが増えた、技術者が交代した——施工体制台帳の記載事項に変更があったときは、遅滞なく、変更した年月日を付記して書き換えます(建設業法施行規則14条の5第4項)。
「工事が終わるタイミングでまとめて直す」ではなく、変更のたびに直していくのが原則です。台帳は一度作って終わりの書類ではなく、現場が動いている間ずっと更新し続ける書類だと考えてください。
保存期間はどれくらい?——台帳は5年、施工体系図は10年
施工体制台帳そのものの保存を直接定めた条文があるわけではありません。実務上は、台帳のうち一定の事項を「帳簿」(建設業法40条の3)の添付書類として保存する、という組み立てになっています。
具体的には、帳簿には次の部分を添付しなければなりません(建設業法施行規則26条2項3号)。
- 主任技術者・監理技術者の氏名と資格等
- 下請負人の商号と許可番号
- 下請工事の内容・工期
- 下請けが置いた主任技術者の氏名と資格
保存期間は、請け負った建設工事ごとに、目的物の引渡しをしたとき(工事が途中で終わるなどして、その工事について注文者と結んだ請負契約に基づく債権債務が消滅した場合は、その消滅したとき)から5年間です(建設業法施行規則28条1項)。ただし、発注者と締結した、住宅を新築する建設工事にかかるものは10年間です。
ここで見落とされやすいのが施工体系図です。施工体系図は帳簿の添付書類ではなく、「営業に関する図書」として別に位置づけられています(建設業法施行規則26条5項3号)。そして図書の保存期間は、目的物の引渡しをしたときから10年間です(同施行規則28条2項)。
つまり、同じ現場の書類でも保存する年数が違います。整理すると次のとおりです。
| 何を | 位置づけ | いつまで保存するか |
|---|---|---|
| 施工体制台帳のうち一定の部分 | 帳簿の添付書類(規則26条2項3号) | 引渡しから5年間 (工事が途中で終わるなどして請負契約に基づく債権債務が消滅した場合は、その消滅したときから5年間) (発注者と締結した住宅の新築工事は10年間) |
| 施工体系図 | 営業に関する図書(規則26条5項3号) | 引渡しから10年間 |
営業に関する図書には、完成図や、発注者との打合せ記録、材料費等記載見積書なども含まれます。なお施工体系図を保存するのは、台帳を作る立場(作成建設業者)の会社だけです(同施行規則26条5項)。
守らなかったらどうなる?——「罰金」ではなく「指示処分」
「施工体制台帳を作らないと罰金〇〇万円」という説明を見かけることがありますが、正確ではありません。
建設業法が定めているのは、許可行政庁による指示処分(役所からの是正の指示)です。
建設業法28条1項には、指示処分の対象となる規定のなかに、入札契約適正化法15条1項によって読み替えて適用される24条の8第1項・第2項・第4項が含まれることが、条文上はっきり書かれています。つまり、施工体制台帳・施工体系図にかかわる義務違反は、指示処分の対象です。
その指示に従わなかった場合は、1年以内の期間を定めて、営業の全部または一部の停止を命じられることがあります(建設業法28条3項)。条文は「命ずることができる」という書き方なので、必ず営業停止になるわけではありません。ただし、放置すればそこまで進みうる、という建て付けです。
似ているようで別の話として、10万円以下の過料という規定もあります(建設業法55条5号)。ただしこれは、先ほどの「保存」の章で説明した帳簿の備付け等(建設業法40条の3)に違反した場合の話です。条文は、帳簿を備えなかった・帳簿に記載しなかった・帳簿に虚偽の記載をした場合、または帳簿もしくは図書を保存しなかった場合、と書き分けています(「虚偽の記載」は帳簿についてのみ定められています)。さきほどの施工体系図(10年保存)は、この「図書」にあたりますので、保存を怠った場合が過料の対象です。台帳そのものを作らなかったこと自体は指示処分の話で、こちらは帳簿・図書の備付けと保存を怠ったときの話です。別の義務なので、混同しないよう注意してください。
よくある質問
施工体制台帳が必要な金額はいくらですか?
民間工事なら、その工事のために結んだ下請契約の請負代金の総額が5,000万円以上になるときです。元請けが発注者から直接請け負った工事が建築一式工事の場合は8,000万円以上で判定します(建設業法24条の8第1項、建設業法施行令7条の4)。ただし金額だけで決まるわけではなく、「自社が特定建設業者であること」「発注者から直接請け負った元請けであること」の2つも同時に満たす必要があります。公共工事は金額に関係なく、下請契約を1件でも結べば必要です(入札契約適正化法15条1項)。
金額は4,500万円ですか? 5,000万円とどちらが正しいですか?
現在は5,000万円(建築一式工事は8,000万円)です。4,500万円(建築一式7,000万円)は令和5年1月1日から令和7年1月31日まで適用されていた金額で、令和7年2月1日の建設業法施行令の改正で引き上げられました(令和6年政令第366号 附則1項3号)。さらにさかのぼると、令和4年12月31日までは4,000万円(建築一式6,000万円)でした。金額の説明がサイトによって食い違って見えるのは、更新されていない古い記事が残っているためです。
公共工事はいくらから施工体制台帳が必要ですか?
公共工事に金額の下限はありません。入札契約適正化法15条1項が、建設業法24条の8第1項の「締結した下請契約の請負代金の額(当該下請契約が二以上あるときは、それらの請負代金の額の総額)が政令で定める金額以上になる」という部分を「下請契約を締結した」と読み替えるため、金額の条件そのものが消えます。元請けとして建設工事の下請契約を1件でも結んだ時点で作成義務が生じ、同項の読み替えで「特定建設業者」が「建設業者」になるため、一般建設業者も対象です。
施工体制台帳の5,000万円は、特定建設業許可の5,000万円と同じものですか?
金額はたまたま同じですが、根拠条文も、発生する義務も別のものです。特定建設業許可が必要になる下請代金の5,000万円(建築一式8,000万円)は建設業法施行令2条で、この金額以上を下請に出すなら許可そのものを特定に切り替える必要がある、という話です。施工体制台帳の5,000万円(建築一式8,000万円)は建設業法施行令7条の4で、台帳と施工体系図を作る義務が発生する、という話です。さらに、発注者から直接請け負った特定建設業者が監理技術者を置かなければならないラインも、同じ5,000万円(建築一式8,000万円)です(建設業法26条2項、建設業法施行令2条)。判定の単位(下請契約の総額)まで同じなので、実務では同じ場面で同時に問題になりますが、条文としては別々に定められています。
工事の途中で下請を追加して、総額が5,000万円を超えたらどうなりますか?
条文は「下請契約の請負代金の額(当該下請契約が二以上あるときは、それらの請負代金の額の総額)が政令で定める金額以上になるとき」と書かれています(建設業法24条の8第1項)。最初の契約時点では5,000万円を下回っていても、追加の下請契約で総額が5,000万円以上に達した時点で作成義務が生じる、という書きぶりです。施工体制台帳は、事実が生じたら遅滞なく記載する書類でもあります(建設業法施行規則14条の5第3項)。総額が基準に近づいてきた段階で準備を始めておくと安全です。
下請けに出さず、すべて自社で施工する場合も必要ですか?
下請負人がまったくいない完全な自社施工なら、民間工事・公共工事とも作成義務は生じません。施工体制台帳の作成義務は、民間工事なら「下請契約の総額が政令の金額以上になるとき」、公共工事なら「下請契約を締結したとき」が出発点だからです(建設業法24条の8第1項、入札契約適正化法15条1項)。公共工事であっても、下請に1件も出していなければ台帳・施工体系図を作る義務はありません。
警備会社や資材業者との契約も、5,000万円の総額に入れますか?
入れません。ここでいう下請契約は建設工事の請負契約に限られるため(建設業法2条4項)、資材の購入、調査業務、運搬業務、警備業務などの契約金額は総額に足しませんし、建設業法上は台帳への記載も必要ありません。ただし国土交通省 関東地方整備局の解説は、発注者が仕様書等で記載を求めているときは記載が必要になる場合があるとし、国土交通省が発注する工事では警備会社との契約について共通仕様書で記載を求めている、と説明しています。発注者の仕様書を必ず確認してください。
一人親方や、建設業許可を持っていない業者は台帳に書かなくてよいですか?
建設工事の請負契約で工事を任せているなら、記載が必要です。国土交通省 関東地方整備局の解説は、「建設工事の請負契約」における全ての下請負人が施工体制台帳の記載対象であり、無許可業者も含むこと、一次下請だけでなく二次下請・三次下請も記載対象であることを明示しています。台帳には下請負人の許可番号を記載する欄があるため、軽微な建設工事の範囲(建築一式工事以外は500万円未満)を超える工事を無許可で請け負っていたことが、ここで表面化することもあります。無許可で請け負える範囲は「建設業許可は500万円から必要?無許可工事の罰則」で解説しています。なお、請負ではなく雇用(常用)で現場に入っている人は下請負人ではなく、工事に従事する者として扱われます。
まとめ:まず確認すべき3つのこと
長くなったので、判断の入り口だけ振り返ります。
- その工事は公共工事か民間工事か(公共工事なら金額に関係なく、元請けとして建設工事の下請契約を結べば施工体制台帳が必要です)
- 民間工事の場合、自社は特定建設業者で、発注者から直接請け負った元請けか
- 民間工事の場合、下請契約の総額が5,000万円以上(元請けが直接請け負った工事が建築一式工事なら8,000万円以上)か(消費税込み・元請けが提供する材料等の価格は含みません)
この3つを押さえれば、多くの現場で「作成義務があるかどうか」の判断がつきます。判断に迷うケースや、すでにある台帳が正しく作られているか不安なケースは、自己判断せずにご相談ください。
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出典(根拠条文)
本記事の記載は、以下の条文・資料にもとづいています(2026年9月3日に、e-Gov法令検索で2026年9月1日時点の現行条文を取得して確認)。
- 建設業法(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100
- 建設業法施行令(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/331CO0000000273
- 建設業法施行規則(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/324M50004000014
- 公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(平成12年法律第127号/本記事では「入札契約適正化法」と表記。15条・2条2項)(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/412AC0000000127
- 公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律施行規則(令和6年国土交通省令第105号/3条)(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/506M60000800105
- 金額の改正経緯:建設業法施行令の一部を改正する政令(令和6年政令第366号/令和7年2月1日施行)、同(令和4年政令第353号/令和5年1月1日施行)
- 国土交通省 関東地方整備局 建政部 建設産業第一課『建設工事の適正な施工を確保するための建設業法(令和8.2版)』https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000699485.pdf
法令は改正されることがあります。実際の判断にあたっては、最新の条文と発注者の指示をあわせてご確認ください。神奈川県・秦野市に固有の取扱いがある場合、この記事では扱っていません。発注者や県の窓口にあわせてご確認ください。
執筆・監修:やさしい行政書士事務所 代表行政書士 宮本 雄介(登録番号 第12082434号)
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