「経審(経営事項審査)の点数は上げたのに、狙っていた金額の公共工事に入札できなかった」
「うちの会社のランク(等級)って、結局どこで・何で決まっているの?」
建設業の社長さんから、こうしたご相談をよくいただきます。神奈川県・秦野の当事務所でも、公共工事に参入したい・CランクからBランクへ上げたい、という建設業者さまが増えています。
結論から言うと、入札の「等級(ランク)」は、経審のP点(客観点)だけでは決まりません。そこに発注者ごとの「主観点」が足され、その合計(総合点数)でクラス分けされます。ここを知らないと、「P点を上げたのにランクが変わらない」という遠回りをしてしまいます。
📢 この記事でわかること
- 入札の「等級(ランク)」とは何か(公共工事の”出場クラス”)
- 等級は「経審P点(客観点)+主観点」で決まる仕組み
- 【神奈川県・令和7・8年度】業種別の格付け点数(実数値)
- 経審の結果通知書から自社ランクを読む「見方」
- A〜Dの等級を上げる2つの王道と、よくある落とし穴
目次
入札参加資格の「等級(ランク)」とは?公共工事の”出場クラス”
公共工事の入札では、発注者(国・県・市町村)が、申請してきた建設業者を会社の規模や実力ごとにクラス分けしています。これが「等級(ランク・格付け)」です。多くの発注者で A・B・C・D のように分けられます。
等級が大切なのは、クラスごとに参加できる工事の金額帯(発注標準金額)が決まっているからです。上位等級(A)ほど大きな金額の工事に入札でき、下位等級(C・D)は規模の小さい工事が中心になります。つまり「狙う工事の規模」と「自社の等級」がかみ合っていないと、そもそも入札の土俵に上がれません。

神奈川県(県の発注工事)の場合、建設工事のうち 土木・建築・電気・管・舗装・水道施設の6業種はA〜Dの4段階、造園のみA〜Cの3段階で格付けされています(出典:かながわ電子入札共同システム/神奈川県県土整備局建設業課)。
まずは「公共工事に出るには、許可だけでなく経審と入札参加資格の登録が要る」という全体像から押さえましょう。はじめての方は 経審を初めて受ける流れ5ステップ もあわせてご覧ください。
等級は「経審P点(客観点)+主観点」で決まる ― P点だけでは決まらない
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい核心です。入札の等級は、次の2つの点数を足した「総合点数」で決まります。
| 点数の種類 | 中身 | 特徴 |
|---|---|---|
| 客観点数 | 経審の総合評定値(P点)をそのまま使う | 全国共通のものさし。どの発注者でも同じP点 |
| 主観点数 | 発注者独自の評価(工事成績・地域貢献・災害協定など) | 発注者ごとに基準が違う。無い発注者もある |
神奈川県の公式の手引きには、たとえば土木工事で「客観点915+主観点10=総合925点」でA等級、という例が示されています(出典:かながわ電子入札共同システム「等級変更の案内」)。経審のP点(客観点)に、県が独自に評価する主観点を足して、最終的なランクが決まるわけです。

参考に、国(国土交通省の地方整備局)の発注工事では、客観点と主観点の最高点の比率を5:5としています(出典:国土交通省「公共工事入札参加資格制度」)。主観点をどう評価するかは発注者ごとにまったく違うため、「同じP点でも、発注者が違えばランクや順位は変わりうる」という点を押さえておきましょう。
⚠️ つまずきポイント
「経審のP点を上げればランクが上がる」は半分だけ正解です。P点(客観点)は等級の土台ですが、主観点(工事成績などの実績)も合わさって総合点になります。P点対策だけでなく、狙う等級の「総合点のボーダー」を意識することが大切です。
【神奈川県・令和7・8年度】業種別の等級ライン(格付け点数)
では、神奈川県(県の発注工事)で各等級に入るには、総合点数が何点必要なのでしょうか。令和7・8年度の「等級別基準点数」から、主な業種の各等級の下限(このライン以上ならその等級)をまとめました。

| 業種 | A等級(下限) | B等級(下限) | C等級(下限) |
|---|---|---|---|
| 土木 | 920 | 740 | 610 |
| 建築 | 930 | 810 | 640 |
| 電気 | 850 | 700 | 540 |
| 管 | 810 | 690 | 530 |
| 舗装 | 920 | 700 | 620 |
| 水道施設 | 880 | 750 | 590 |
| 造園 | 780 | 610 | ―(B未満がC) |
同じ「A等級」でも、業種によって必要な点数が違うのがポイントです(土木は920点、建築は930点、管は810点)。各等級の下限を下回ると、ひとつ下の等級になります(D等級は各C下限の未満)。
⚠️ 数値は「令和7・8年度」のものです
この基準点数は2年ごとの定期受付のたびに見直されます。神奈川県の現在の認定期間は令和7年4月1日〜令和9年3月31日で、次回は令和9・10年度の定期申請です。申請時は必ず最新の「申請の手引き」でご確認ください。
自社のランクの「見方」― 経審の結果通知書から等級を読む
「自社のランクはどこを見れば分かりますか?」というご質問も多いです。順番に見ていきましょう。

① 経審の「総合評定値通知書」でP点を確認する
経審を受けると、「経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書」が交付されます。ここに、許可業種ごとの総合評定値(P点)と、その内訳である5つの評点(X1・X2・Y・Z・W)が記載されています。これが、自社の客観点を知る一次資料です。
P点は、5つの評点を次の式で合計したものです。
P=0.25×X1 + 0.15×X2 + 0.20×Y + 0.25×Z + 0.15×W
X1=完成工事高/X2=自己資本額・利益/Y=経営状況/Z=技術力(元請完工高・技術職員)/W=社会性等
このうち、X1とZは業種ごとに評価が変わり、X2・Y・Wは会社全体で共通です。だから「同じ会社でも、業種によってP点が違う」ということが起こります。P点の中身と上げ方は 経審の点数の上げ方|P点が低い原因と加点策 でくわしく解説しています。
② P点を、狙う発注機関の「等級区分表」に当てはめる
次に、自社が入札したい発注機関(神奈川県・市など)の等級区分表に、通知書のP点(客観点)を当てはめます。そこに主観点を足した総合点数が、先ほどの基準点数のどこに入るかで等級が決まります。最終的な等級は、発注者が作る資格者名簿(格付け)で確認します。
注意:等級の基準は「発注機関ごと・年度ごと」に違う
ここはとても誤解が多いところです。「P点が◯◯点ならAランク」という全国共通の早見表はありません。等級のボーダーラインも、参加できる工事の金額帯も、発注機関・年度・業種ごとにバラバラだからです。
たとえば、土木工事のA等級の総合点ラインを比べると――
| 発注機関(令和7・8年度) | 土木のA等級ライン(総合点) |
|---|---|
| 神奈川県 | 920点以上 |
| 国土交通省 関東地方整備局(一般土木) | 3,040点以上 |
同じ「土木のAランク」でも、点数の桁が違いますよね。これは、足し合わせる主観点の仕組みが発注機関ごとにまったく別物だからです。必ず「どの発注機関の・いつの年度の基準か」をセットで見るようにしてください。
⚠️ 「神奈川県でA」でも「横浜市でA」とは限りません
横浜市・川崎市・相模原市・秦野市などの市は、県とは別の制度・別の申請です。
等級の記号・対象になる工種・参加できる金額帯・有効期間が、それぞれ違います。たとえば横浜市は、等級の記号や対象工種が県とは別に定められています。
同じ会社でも、県ではA・市ではB、ということが起こり得ます。県の資格と市の資格は、それぞれ別に申請が必要です。
なお、国の「全省庁統一資格」は物品・役務の調達向けの制度で、建設工事とは別物です。建設工事の国の等級は、地方整備局などの競争参加資格審査で付与されます。混同しないようご注意ください。
等級(ランク)を上げる2つの王道
ランクを上げるには、総合点数を上げる必要があります。アプローチは大きく2つ。「短期で効くもの」と「時間がかかるもの」を分けて考えるのがコツです。

① 客観点(経審P点)を上げる ― 短期で効く
経審の点数は、書類の整え方や制度の活用で年度内に動かせる部分があります。代表的なのが社会性等(W点)の加点項目です。
たとえば、建設キャリアアップシステム(CCUS)の加点、ISO(9001・14001)やエコアクション21などの認証、ワーク・ライフ・バランスの取組、若年技術者の育成、各種保険の加入などです。社会性等(W点)の計算は 経審W点の計算方法 でくわしく扱っています。
こうした客観点の対策は、行政書士がお手伝いしやすい領域です。「どの加点を取れば、P点が何点上がるか」を逆算してご提案できます。
② 主観点を上げる ― 中長期でじっくり
主観点の中心は工事成績(実際の公共工事の出来ばえの評価)の積み上げです。発注者によっては、災害協定の締結や地域貢献なども評価されます。こちらは数年単位の実績づくりが必要で、すぐには動きません。
だからこそ、「狙う等級 → 必要な総合点 → 必要なP点」を逆算して、短期はP点(経審)対策、中長期は工事成績の積み上げ、という二段構えで計画するのが現実的です。
🚨 落とし穴:等級は「下げる」ことはできても、元に戻せません
神奈川県には、主観点をゼロとして客観点だけで下位の等級に変更する「等級変更申出」という制度があります。ただし一度下げた等級を、再び元の等級へ戻すことはできません。発注基準額も下がり、経常JV(共同企業体)の構成にも影響します。安易な等級変更は慎重にご検討ください。
よくあるご質問(FAQ)
Q. 経審を受ければ、自動でランクがつきますか?
いいえ。そもそも公共工事を発注者から直接請け負うには、法律(建設業法第27条の23第1項)で経審を受けることが義務づけられています。経審(P点の取得)に加えて、入札したい発注機関ごとに「入札参加資格審査申請」を別途行う必要があります。その登録の中で等級(格付け)が付きます。流れは「建設業許可 → 経審 → 入札参加資格の申請 → 等級登録」です。
Q. 神奈川県でAランクなら、横浜市でもAですか?
必ずしも同じにはなりません。市は県と別制度・別基準です。同じ会社でも、発注機関が変われば等級が変わることがあります。
Q. ランクはすぐに上がりますか?
客観点(経審P点)の対策には年度内に効くものもありますが、主観点(工事成績)は数年単位です。「短期で効く対策」と「時間がかかる対策」を分けて計画するのがおすすめです。
Q. いくつも業種で経審を受けると、業種ごとにランクが違うのはなぜ?
P点の内訳のうち、完成工事高(X1)と技術力(Z)は業種ごとに評価が変わるためです。そのため、土木はB・舗装はC、のように業種ごとに等級が異なることがあります。
まとめ:等級は「P点+主観点」。狙う等級から逆算しよう
- 入札の等級(ランク)は、公共工事の”出場クラス”。上位ほど大きな工事に入札できる。
- 等級は「客観点(経審P点)+主観点(発注者独自の評価)=総合点数」で決まる。P点だけでは決まらない。
- 神奈川県(令和7・8年度)は6業種A〜D・造園A〜C。業種ごとに必要点数が違う(土木A=920点 など)。
- 基準は発注機関ごと・年度ごとに違う。「神奈川県でA」が「横浜市でA」とは限らない。
- ランクアップは、短期=P点対策、中長期=工事成績、の二段構えで逆算するのが王道。
「自社が狙う工事だと、何等級が必要?」「今のP点だと、あと何点でB等級?」――こうした逆算のご相談こそ、建設業専門の行政書士の出番です。決算前から関わることで、無理なく等級アップを狙える場合もあります。会社設立や許可の段階からの設計は 会社設立の流れ|許認可から逆算する設計 もご参考に。
📞 経審・入札の「等級アップ」を無料でご相談ください
やさしい行政書士事務所では、神奈川県・秦野を中心に、建設業許可・経営事項審査・入札参加資格の申請を一気通貫でサポートしています。「うちは今どの等級?」「狙う工事に必要な点数は?」のP点・等級診断は無料です。まずはお気軽にどうぞ。
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監修:やさしい行政書士事務所 代表行政書士 宮本 雄介(神奈川県行政書士会所属/登録番号 第12082434号)
神奈川県秦野市を拠点に、建設業許可・経営事項審査・入札参加資格を中心に、補助金・在留資格・相続まで対応。建設業の「公共工事参入」を、決算・経審の段階から伴走支援しています。
※本記事は2026年6月時点の情報をもとに、一般的な制度の解説としてまとめたものです。神奈川県の等級別基準点数(令和7・8年度)など具体的な数値・要件は、発注機関や年度によって異なり、改定される場合があります。実際の申請にあたっては、各発注機関の最新の「申請の手引き」や公表資料をご確認いただくか、当事務所までご相談ください。
主な出典:かながわ電子入札共同システム(神奈川県県土整備局建設業課)/国土交通省「公共工事入札参加資格制度」/国土交通省 関東地方整備局。