執筆・監修:やさしい行政書士事務所 代表行政書士 宮本 雄介(神奈川県行政書士会所属/神奈川県秦野市)
「元請から『建退共の辞退届を出して』と言われたけど、うちは中退共に入ってるし、どう書けばいいのか分からない」
神奈川県央で工事を請けている下請事業者の社長さん・総務担当の方から、こういう相談をよく受けます。
先に結論からお伝えします。
「辞退届」という書式は、建退共(建設業退職金共済制度)にはそもそもありません。 公共工事、または元請が掛金納付を一括して代行する民間工事で出すべきなのは、「建設業退職金共済制度加入労働者数報告書(建退共事務受託様式第6号)」という別の書類です。
この記事では、なぜ元請は辞退届を求めてくるのか、その代わりに何をどう書いて出せばいいのか、公共工事と民間工事で扱いがどう違うのかを、行政書士の立場から順番に整理します。
この記事の要点
- 建退共に「辞退届」という書式はありません。国の通知でも「使用しないこと」とされています
- 代わりに出すのは「建設業退職金共済制度加入労働者数報告書(建退共事務受託様式第6号)」。Excelの様式と記入例は建退共の公式サイトで入手できます
- 「辞退の理由」は文章で書きません。内訳欄(役員/中退共など他の制度/自社の退職金制度のみ/その他)に人数を書いて伝えます
- 経審では建退共の加入は素点15点(P点でおよそ20点)。ただし加入しているだけでなく、証紙の交付など契約上の義務を果たしていることが条件です
目次
- 「辞退届」という書式は、実はありません
- では、元請はどうして辞退届を求めてくるのか
- 辞退届の代わりに提出するもの=建設業退職金共済制度加入労働者数報告書
- うちは中退共・自社の退職金制度・一人親方――それぞれどう考える?
- 公共工事と民間工事で、扱いは同じではない
- 「証紙を貼っていない」と元請から指摘されたら
- 元請が発注者に提出する「掛金収納書」
- 経審への影響――建退共は「入っているだけ」では足りない
- よくある質問(FAQ)
- Q1. 元請から「辞退届を出してほしい」と言われたら、断っていいですか?
- Q2. うちは中退共に入っているので、建退共には入らなくていいですか?
- Q3. 公共工事と民間工事で、辞退届の扱いは同じですか?
- Q4. 一人親方なのですが、建退共にはどう関わればいいですか?
- Q5. 建退共に入っていると、経審の点数はどれくらい上がりますか?
- Q6. 辞退届のテンプレート(Word・Excel)はありますか?
- Q7. 社長や役員も建退共に入れますか?
- Q8. 建退共の辞退届は廃止されたのですか?
- Q9. 一人親方の場合、建退共を辞退する理由はどう伝えればいいですか?
- Q10. 掛金収納書は、下請も提出しなければなりませんか?
- 建退共・経審まわりでお困りの方へ
「辞退届」という書式は、実はありません
まず前提を整理します。建退共とは、建設現場で働く人のための退職金を積み立てる国の共済制度です。中小企業退職金共済法に基づく制度で、独立行政法人勤労者退職金共済機構が運営しています。現場で働いた日数に応じて、共済証紙(切手のようなもの)や電子ポイントを積み立てていく仕組みです。
建退共の公式Q&Aには、こう書かれています。
建退共には、「辞退届」という書式はありません。
(出典:建退共 よくあるご質問 E1-1)
つまり「辞退届」は、機構が定めた正式な様式ではなく、現場で慣用的に使われてきた書式にすぎません。国の通知(令和3年3月30日 雇均勤発0330第1号・国不建整第186号)でも、次のように明記されています。
下請事業主が他の退職金制度を活用している場合等に慣用的に用いられてきた、いわゆる「辞退届」は使用しないこと。
この通知は、公共工事における電子申請方式・証紙貼付方式それぞれの運用を定めた別紙のなかで、元請・下請の両方に向けて計4か所、同じ文言で繰り返されています。民間工事についても、元請が掛金納付を一括して代行する場合は公共工事の運用に準ずるとされています(後述)。通知の本文では、令和3年4月以降に発注される工事についてこの運用によることとされています。
「辞退届は廃止されたの?」と調べている方も多いのですが、「様式が廃止された」「昔はあったが今はない」という話ではありません。もともと機構の様式ではなかったものを、慣行として使い続けるのはやめましょうという整理だと理解してください。
では、元請はどうして辞退届を求めてくるのか
「うちは中退共に入っているのに、なぜ建退共の書類を出せと言われるのか」と疑問に思う方も多いはずです。
理由は、公共工事では建退共の掛金相当額が、あらかじめ工事費(予定価格)に積算されているからです。
公共工事では、元請が下請分も含めて退職金ポイント・共済証紙を購入し、下請の労働者の就労日数に応じて交付・充当することになっています(建退共 よくあるご質問 E1-1)。下請が「うちは要らない」と一存で辞退できる性質のものではなく、同じQ&Aに「退職金ポイントの充当・共済証紙の交付を辞退することはできません」とはっきり書かれています。
なお、建退共制度そのものは任意加入の制度です(建退共 よくあるご質問 A1-4)。「加入するかどうか」と「公共工事で証紙・ポイントの交付を受けるかどうか」は別の話だと押さえておいてください。
だからこそ元請は、下請一社一社について「建退共に入っているか、入っていないか」「入っていない場合はなぜか」を、きちんとした様式で把握する必要があるのです。その様式が、次に説明する「様式第6号」です。
辞退届の代わりに提出するもの=建設業退職金共済制度加入労働者数報告書

正式名称は「建設業退職金共済制度加入労働者数報告書」(建退共事務受託様式第6号)といいます。長いので、現場では「加入労働者数報告書」と呼ばれることもあります。
様式第6号のダウンロード先(Excel・記入例)
「辞退届 テンプレート」「辞退届 Word」「辞退届 エクセル」と探しても、建退共の公式な辞退届の書式は見つかりません。現場によっては「建設業退職金共済証紙交付辞退届」のような名前の書式を元請から渡されることがありますが、これも機構の様式ではありません(建退共 よくあるご質問 E1-1「建退共には、「辞退届」という書式はありません。」)。使うのは様式第6号です。
建退共の公式サイトの「事務受託に関する様式」のページに、様式第6号のExcelファイルと、記入例(PDF・2025年10月1日付)が掲載されています(2026年10月6日に確認)。
元請が昔からの「辞退届」の書式を用意している場合でも、通知の考え方に沿うなら、様式第6号での報告に差し替えるのが筋です。このあとの「元請への返し方(文例)」のように伝えれば、角が立ちにくいはずです。
様式第6号の書き方(基本)
書き方の骨格はシンプルです。
- 宛先は元請事業者、差出は下請事業者、工事番号・工事名を記入
- 次の2つのうち、当てはまる方に☑(チェック)
- □1.建退共制度に加入している
- □2.建退共制度に加入していない(就労予定労働者数を記入)
- 表に、共済契約者番号・事務所名・就労予定労働者数・うち被共済者数(実際に建退共に入っている人数)を記入
表の「被共済者以外(①-②)」に人数が立つ場合は、その内訳欄に区分ごとの人数を記入します(内訳の合計が①-②の人数と一致するように)。□2(加入していない)を選んだ場合は、全員がここに入ります。□1(加入している)を選んだ場合でも、役員など建退共の対象にならない人がいれば、その人数をここに書きます。
- 企業の役員(役員報酬を受けている人は建退共の対象外)
- 中退共、商工会など他の退職金制度に加入
- 自社の退職金制度のみを適用
- その他(具体的に記入)
□2(加入していない)を選んだときは、様式の注記どおり「共済契約者番号」は「-」、「うち、被共済者数②」は「0人」と書き、それ以外の項目は記入します。
つまり、「辞退届に理由を書く」のではなく、「様式第6号」の内訳欄に、該当する区分の人数を書いて説明するのが正しいやり方です。チェック(レ点)を入れるのは、冒頭の「加入している/していない」の二択だけです。
「うちの場合はどう書けばいいのか」だけ確認したい、という単発のご相談でも構いません(メール相談フォーム)。
記入例:よくある3つのケース
人数は説明のための例です。実際には、その工事に従事する予定の人数で書きます。
ケースA:建退共に加入している。社員の一部は中退共(公式の記入例と同じ形)
- チェック:「1.建退共制度に加入している」
- 共済契約者番号:自社の番号
- 就労予定労働者数①:10人/うち被共済者数②:5人/被共済者以外(①-②):5人
- 内訳:「中退共、商工会など他の退職金制度に加入」に5人
- 添付:中退共の加入証明書など、加入していることが分かる資料の写し
ケースB:建退共には加入していない。現場に出るのは役員1人と、中退共に入っている社員4人
- チェック:「2.建退共制度に加入していない」(就労予定労働者数 5人)
- 共済契約者番号:「-」/うち被共済者数②:「0人」
- 就労予定労働者数①:5人/被共済者以外(①-②):5人
- 内訳:「企業の役員」に1人、「中退共、商工会など他の退職金制度に加入」に4人
- 添付:中退共の加入証明書など、加入していることが分かる資料の写し
ケースC:建退共には加入していない。自社の退職金規程だけを適用(社員3人)
- チェック:「2.建退共制度に加入していない」(就労予定労働者数 3人)
- 共済契約者番号:「-」/うち被共済者数②:「0人」
- 就労予定労働者数①:3人/被共済者以外(①-②):3人
- 内訳:「自社の退職金制度のみを適用」に3人
- 添付:就業規則・退職金規程の写しなど、適用していることが分かる資料
建退共と自社の退職金制度を両方適用している人は、「うち、被共済者数②」に数えます(様式の注1)。内訳欄の人数の合計は、①-②の人数と一致させてください。
「辞退理由」はどう書く?社長・役員は?
様式第6号には、辞退の理由を文章で書く欄はありません。「なぜその人に建退共の証紙が要らないのか」は、内訳欄のどの区分に何人いるかで伝わる作りになっています。役員・他の退職金制度・自社の退職金制度のどれにも当てはまらない人だけ、「その他(具体的に)」の欄に人数を書き、事情を具体的に添えます。
また、事業主(社長)や、役員報酬を受けている役員は、そもそも建退共の被共済者になれません(建退共 よくあるご質問 B1-1)。現場に出る役員がいる場合は、内訳の「企業の役員」の欄に人数を書きます。
添付が必要な資料
内訳の書き方によって、添付書類が変わります。
- 「中退共など他の退職金制度に加入」→ 加入証明書や契約書の写しなど、加入が分かる資料
- 「自社の退職金制度のみを適用」→ 就業規則・退職金規程の写しなど、適用が分かる資料
- 就労予定労働者数が著しく少ない場合 → その理由が分かる資料
建退共のQ&Aでは、一次下請は自社の分だけでなく、二次下請以下の分も取りまとめて元請に併せて報告するよう案内されています(建退共 よくあるご質問 E1-1。国の通知では、一次下請が二次下請以下の建退共の事務を引き受けている場合の取扱いとして定められています)。現場全体の労働者を誰が把握して束ねるかという流れは、再下請負通知書や作業員名簿・施工体制台帳の提出フローとも重なる部分なので、まとめて確認しておくと二度手間になりません。
元請への返し方(文例)
公共工事(または元請が掛金納付を一括して代行する民間工事)で、元請から「辞退届を出して」と言われたときは、次のように返すと話が早く進みます。中退共に入っている会社の例です。
〇〇建設株式会社 御中
いつもお世話になっております。ご依頼のあった建退共の「辞退届」の件です。
建退共には「辞退届」という書式がなく、国の通知(令和3年3月30日付)でも使用しないこととされているため、建退共事務受託様式第6号「建設業退職金共済制度加入労働者数報告書」でご報告いたします。
弊社は建退共に加入しておらず、本工事に従事する社員は中小企業退職金共済(中退共)に加入しておりますので、内訳欄に人数を記入し、加入証明書の写しを添付しております。
ご確認のほど、よろしくお願いいたします。
自社の退職金規程だけの会社は、「中退共に加入しております」の部分を「自社の退職金規程を適用しております」に、添付を「就業規則・退職金規程の写し」に置き換えてください。
うちは中退共・自社の退職金制度・一人親方――それぞれどう考える?

社員が中退共に入っている場合
同じ人を建退共と中退共(中小企業退職金共済)の両方の被共済者にすることはできません。すでに中退共の被共済者になっている人は、建退共には入れない扱いです(建退共 よくあるご質問 B1-1)。これは労働者一人ひとりの単位の話で、会社として建退共に加入しつつ一部の社員は中退共、という併存はあり得ます。
□1/□2の選び方は、「自社が建退共の共済契約者(加入している事業所)かどうか」で決まります。
- 建退共にも加入している会社(□1を選ぶ):「1.加入している」を選び、被共済者数を書いたうえで、中退共の人数を内訳の「中退共、商工会など他の退職金制度に加入」の欄に書きます。
- 中退共だけで建退共には加入していない会社(□2を選ぶ):「2.加入していない」を選び、内訳の「中退共、商工会など他の退職金制度に加入」の列に該当人数を書いて、中退共の加入証明書の写しを添付します。
「うちは中退共だから辞退届」ではなく、「加入の有無と、被共済者でない人の内訳」をきちんと様式に落とし込む、という違いです。
自社の退職金制度だけを適用している場合
就業規則や退職金規程で自社独自の退職金制度を用意している会社も、建退共に加入していなければ「2.加入していない」を選び、内訳の「自社の退職金制度のみを適用」の列に該当人数を書いて、就業規則・退職金規程の写しを添付します。
なお、建退共と自社制度を両方適用している場合は、「加入していない」ではなく「被共済者数」に含めて記載する扱いになります。ここは混同しやすいポイントなので注意してください。
一人親方(個人事業主)の場合
一人親方は、個人では建退共に直接加入できません。任意組合をつくるか、既存の任意組合に加入する形で制度を利用します。公共工事で下請が一人親方の場合、証紙は本人にではなく、所属する任意組合に交付される仕組みです。
ただし「技能修得中の者以外を常時雇用して事業を営む者」は、一人親方と名乗っていても任意組合には加入できないとされています。実際に人を雇っているかどうかで扱いが変わるため、判断に迷う場合は個別に確認したほうが安全です。なお、一人親方がCCUS(建設キャリアアップシステム)に登録するときの費用は、別の記事で解説しています。
公共工事と民間工事で、扱いは同じではない

ここは元請とのやり取りで誤解が生まれやすいところなので、はっきり分けて説明します。
公共工事では、掛金相当額があらかじめ工事費に積算されているため、元請が下請分も含めて証紙・退職金ポイントを負担し、交付・充当する仕組みです。国の通知で「辞退届は使用しないこと」と書かれている4か所は、いずれもこの公共工事の運用を定めた部分にあります。
民間工事は、工事費の中に掛金相当額の積算がされていません。建退共の公式Q&Aでは、こう説明されています。
民間工事の場合には、工事費の中に掛金相当額の積算がされていないため、原則として従業員を直接雇用した事業主(共済契約者)が退職金ポイント・共済証紙購入代金を負担することとなりますが、元請業者の意向により下請業者の退職金ポイント・共済証紙購入代金を負担していただくことは問題ありません。
つまり民間工事では、原則は雇用主(下請自身)が費用を負担するという考え方です。
ただし国の通知は、掛金納付の義務は「公共工事、民間工事の別を問わず適用される」としたうえで、掛金納付に係る費用は建設業法第19条の3の「通常必要と認められる原価」に含まれるものとして「元請事業主及び下請事業主において必要経費として適正に確保されるべきものと解される」ので、民間工事でも掛金納付・充当の徹底に努めるよう求めています(通知別紙 第3「6.民間工事における運用」)。
では、民間工事なら辞退届を使ってよいのかというと、そうではありません。元請が一括代行する民間工事でも、辞退届は使わずに様式第6号で報告するのが通知の建付けです。
理由は、同じ通知の「第3 6.民間工事における運用」が、民間工事でも元請が掛金納付を一括して代行する場合、その事務の取扱いは「公共工事における運用に準ずるものとする」と定めているからです。そのただし書きで適用除外とされているのは、発注機関への掛金収納書の提出(4.(1)③④⑥・5.(1)④⑤⑦)など発注機関が相手になる手続きだけで、「辞退届は使用しないこと」(4.(1)①・5.(1)②)は除外されていません。
「証紙を貼っていない」と元請から指摘されたら
証紙貼付方式で工事を進めている場合、共済手帳の更新と就労日数に応じた証紙の貼付・受払簿への記録が実務のポイントになります。
指摘を受けたときにまず確認すべきことは、次の3つです。
- 対象労働者の共済手帳が、直近まで適正に更新されているか
- 就労日数に見合う枚数の証紙が、実際に貼付・記録されているか
- 共済手帳・共済証紙の受払簿(様式第029号・第030号)で、手帳と証紙の受払い状況が明らかになっているか。
証紙の交付を受けたとき・貼付したときの都度「共済証紙貼付状況報告書」(建退共事務受託様式第3号)に記録しているか。
工事期間中に作成したその報告書を備え付けて工事完成後1年間保存しているか。
元請へは、月ごと、または担当する工事の終了後に報告しているか
なお「工事別共済証紙受払簿(様式第032号)」は、元請が工事ごとに作成する帳簿で、工事完成時には掛金充当実績総括表とあわせて発注機関に提示するのが原則です(工事完成後1年間は備え付け)。下請が備えるものではありません。
証紙は代理店契約を結んだ金融機関でしか購入できません(金券ショップなどでの購入は不可)。掛金収納書は、証紙を購入するたびに金融機関が作成するもので、事前に単独で入手することはできない点にも注意してください。
元請が発注者に提出する「掛金収納書」
公共工事を受注した元請は、契約締結後、発注者に対して建退共関連の書類を提出する義務があります。
- 電子申請方式:退職金ポイント購入後、電子申請専用サイトから出力した「掛金収納書」を、工事契約締結から40日以内に発注者へ提出
- 証紙貼付方式:金融機関発行の掛金収納書を「掛金収納書提出用台紙(様式第033号)」に貼り付けて、工事契約締結から1ヶ月以内に提出
掛金収納書は、元請が退職金ポイントや共済証紙を購入したときに発行され、いくら購入したかを発注者に示す書類です。
どれだけ購入するか(計算方法)は、次の順序で考えます。
- 原則の算定方法:元請は、下請から出される様式第6号をふまえて、その工事に従事する予定の労働者数・対象労働者数・就労予定日数を把握して算定するのが原則です(国の通知 別紙 第3 の4.(1)②・5.(1)③)。
- 把握がむずかしいとき:建退共の「掛金納付の考え方」を参考にします。総工事費に、工事の種別と総工事費の規模ごとに決められた率を掛け、さらに【その工事の労働者の建退共加入率(%)÷70%】を掛けて算定します。表の率は、加入率を7割と仮定した値です。
- 建退共が示している計算例:総工事費5,000万円(50,000千円)の土木・舗装工事で、労働者の建退共加入率が50%の場合、「50,000,000×2.9/1000×50%/70%=103,571円」となります(退職金ポイントまたは共済証紙の購入額の参考値)。
- 事前の確認と計算用Excel:発注者が独自に購入率を設けている場合があるので、事前に発注者に確認します(建退共)。率の表と購入額を計算するExcelは、建退共の「元請としてやること」のページに掲載されています(2026年10月14日に確認)。
提出義務を整理すると、掛金収納書を発注者に出すのは公共工事を受注した元請です(期限は上の箇条のとおり)。下請は掛金収納書を出す立場ではなく、様式第6号と就労状況報告書を元請に出します。なお、元請が掛金納付を一括して代行する民間工事でも、発注機関への掛金収納書の提出は、通知の準用から外されています(上の「公共工事と民間工事で、扱いは同じではない」の節の説明と同じです)。
元請は、全ての下請に様式第6号の提出を求めて被共済者数を把握し、証紙は下請の「被共済者就労状況報告書(事務受託様式第2号)」に基づいて交付します。下請の立場からすると、様式第6号をきちんと出すことが、元請の提出義務の履行を助けることにもつながっている、というわけです。
経審への影響――建退共は「入っているだけ」では足りない

御社が公共工事の入札参加を考えているなら、建退共は経審(経営事項審査=公共工事の入札に必要な会社の評価)にも関わってきます。まだ経審の全体像を掴んでいない方は、先に経審のやり方(ロードマップ)を読んでおくと話が早いです。
神奈川県の経審の手引き(令和8年7月1日版)では、建退共の加入は申請様式の項番41で報告する項目とされ、こう明記されています(令和8年6月30日までの申請に使われていた旧様式では項番44でした。社会保険の3項目が審査項目から削除され、番号が繰り上がっています)。
※契約上の義務を正しく履行している場合にのみ対象となります。
評価のうえではW1(建設工事の担い手の育成・確保)に属し、配点は素点15点です。
つまり、加入しているだけではなく、証紙の購入・交付といった義務をきちんと果たしていることが条件です。実際、自社に被共済者がおらず下請へ交付するためだけに加入している会社が、決算期間中に一度も交付をしていない場合、経審用の証明願は原則として受け付けてもらえません(建退共 よくあるご質問 F1-6)。特段の事情で交付できなかった場合は、証明願の提出先である建退共の都道府県支部か本部に相談するよう案内されています。
素点15点は、係数を通じてP点(総合評定値)に反映されます。
- 計算式:令和8年7月1日以降の申請でも、W評点は「W1〜W8の素点の合計×1750/200」で計算します(改正後の素点の合計の最高点237点が、W評点の最高点2,073点に当たります)。
- 建退共の15点の換算:P点ではW評点に0.15を掛けるので、建退共の15点は「15×1750/200×0.15≒19.7」、P点でおよそ20点の差になります。
- 古い係数との違い:ネットで見かける「約21点」は、令和5年の改正より前の係数(1900/200)で計算した数字です(15×1900/200×0.15≒21.4)。
- 端数の処理:実際のP点は端数の処理があるため、1点前後ずれることがあります。
W点・P点の計算式そのものは、経審W点の計算方法や経審のW点の目安と最新配点一覧、経審の点数(P点)計算方法で詳しく解説しています。点数がどの入札等級(ランク)に響くかは入札参加資格の等級(ランク)もあわせてご覧ください。
なお、中退共に加入している場合は、建退共とは別の評価項目(項番42「退職一時金制度若しくは企業年金制度導入の有無」)で評価される仕組みです(原則として建設業に従事するすべての従業員を対象としていることなどの条件があります)。建退共は独立した加点項目なので、中退共に入っていなくても、建退共側できちんと加入・履行していれば加点対象になります。
加入・履行証明書のもらい方(神奈川県支部)
経審で建退共の加点(項番41)を受けるには、「建設業退職金共済事業加入・履行証明書」の添付が必要です(加入している場合のみ添付する確認書類です)。この証明書は、証明書の決算日・決算期間に審査基準日が含まれていることが条件になります。
神奈川県内の事業者は、建設業退職金共済事業 神奈川県支部(横浜市中区太田町2-22 神奈川県建設会館内/電話 045-201-8454)に申請します。案内ページは神奈川県建設業協会のサイトに掲載されています。手数料は1部につき800円(内税)で、必要書類とともに現金書留・簡易書留・レターパックなどで郵送するのが原則の運用です。混み具合によっては1週間程度かかる場合もあるとされているので、決算期・入札のタイミングから逆算して、早めに動くことをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q1. 元請から「辞退届を出してほしい」と言われたら、断っていいですか?
「辞退届」という様式自体が正式には存在しないので、その書式を出す必要はありません。公共工事、または元請が掛金納付を一括代行する民間工事では、代わりに「建設業退職金共済制度加入労働者数報告書(様式第6号)」で、加入の有無と内訳を報告するのが正しい対応です。断る・断らないという話ではなく、様式を差し替えて対応する、と考えてください。
Q2. うちは中退共に入っているので、建退共には入らなくていいですか?
同じ人を建退共と中退共の両方の被共済者にはできないので、中退共の被共済者は建退共には入れません。ただし、様式第6号で加入の有無を選び(建退共に加入していない会社は「2」)、内訳の「中退共、商工会など他の退職金制度に加入」の列に人数を書いて加入証明書の写しを添付する、という報告は必要です。「何も出さなくていい」わけではありません。
Q3. 公共工事と民間工事で、辞退届の扱いは同じですか?
国の通知で「辞退届は使用しないこと」と書かれている4か所は、公共工事の運用を定めた部分にあります。ただし同じ通知は、民間工事でも元請が掛金納付を一括代行する場合は「公共工事における運用に準ずる」とし、辞退届不使用の条項を適用除外にしていません。費用面では、民間工事は掛金相当額が工事費に積算されておらず、原則は雇用主側の負担という考え方です(建退共 よくあるご質問 E1-2)。民間だから何も気にしなくてよい、という話ではありません。
Q4. 一人親方なのですが、建退共にはどう関わればいいですか?
一人親方は個人では建退共に直接加入できず、任意組合をつくるか既存の任意組合に加入する形になります。公共工事で下請が一人親方の場合、証紙はその任意組合に交付されます。ただし人を常時雇っている場合は任意組合に加入できない扱いになるため、実態に応じた確認が必要です。
Q5. 建退共に入っていると、経審の点数はどれくらい上がりますか?
神奈川県の経審では、建退共加入はW1・項番41にあたり素点15点、P点への換算で約20点の上乗せになります。ただし加入しているだけでなく、証紙の購入・交付といった契約上の義務を実際に履行していることが条件です。詳しい計算式は当事務所の経審関連の記事もあわせてご覧ください。
Q6. 辞退届のテンプレート(Word・Excel)はありますか?
建退共の公式な辞退届の書式はありません(建退共 よくあるご質問 E1-1)。「建設業退職金共済証紙交付辞退届」のような名前の書式も、機構の様式ではありません。使うのは様式第6号で、Excelの様式と記入例は建退共の公式サイトの「事務受託に関する様式」のページから入手できます。
Q7. 社長や役員も建退共に入れますか?
事業主や、役員報酬を受けている役員は、建退共の被共済者になれません(建退共 よくあるご質問 B1-1)。様式第6号では、現場に出る役員の人数を内訳の「企業の役員」の欄に書きます。
Q8. 建退共の辞退届は廃止されたのですか?
廃止されたのではありません。建退共には、もともと「辞退届」という書式がないためです(建退共 よくあるご質問 E1-1)。国の通知(令和3年3月30日)が、下請事業主が他の退職金制度を活用している場合等に慣用的に用いられてきた、いわゆる「辞退届」を使用しないこととしました。公共工事(と、元請が掛金納付を一括して代行する民間工事)では、代わりに様式第6号で加入の有無と内訳を報告します。
Q9. 一人親方の場合、建退共を辞退する理由はどう伝えればいいですか?
「一人親方だから辞退します」という辞退届は使わず、様式第6号で加入の有無を報告するのが通知の考え方です。一人親方は個人では建退共に直接加入できず、任意組合をつくるか既存の任意組合に加入して制度を利用します。公共工事で下請が一人親方の場合、共済証紙は、一人親方が所属する任意組合からの申請に基づいて任意組合に現物交付されます(建退共 よくあるご質問 E1-4)。なお、技能修得中の者以外の者を常時雇用して事業を営む人は、一人親方と名乗っていても任意組合に加入できません。任意組合に入っていない一人親方を様式第6号のどの欄に書くかは、様式にも記入例にも書かれていない(2026年10月14日に確認)ので、元請に確認してください。
Q10. 掛金収納書は、下請も提出しなければなりませんか?
掛金収納書を発注者に提出するのは、公共工事を受注した元請です(電子申請方式は工事契約締結から40日以内、証紙貼付方式は工事契約締結から1ヶ月以内)。下請は、様式第6号と就労状況報告書を元請に出します。掛金収納書に載る購入額の考え方は、本文の「元請が発注者に提出する「掛金収納書」」の節をご覧ください。
建退共・経審まわりでお困りの方へ
「様式第6号、うちの場合どう書けばいいか一緒に確認してほしい」「経審の加入・履行証明書、審査基準日との兼ね合いが不安」——こうしたご相談、よくいただきます。
やさしい行政書士事務所は、神奈川県秦野市を拠点に、神奈川県央エリアの建設業者様の経審・入札参加資格・許可手続きをサポートしています。建退共そのものの加入手続きや退職金の請求手続きは、当事務所の業務範囲外(社会保険労務士の業務にあたる可能性があります)となりますが、経審の評価項目としての整理や、公共工事の提出書類まわりのご相談であれば、お気軽にお声がけください。
📞 様式第6号・経審の加入・履行証明書のご相談(無料)
「うちの場合はどう書けばいいのか」だけ確認したい、という単発のご相談でも構いません。まずは今の状況をお聞かせください。
電話:0463-57-8330(やさしい行政書士事務所 代表行政書士 宮本 雄介)
神奈川県秦野市南矢名2123-1 オレンジハイツ今井2E
出典・参考資料
- 厚生労働省・国土交通省「建設業退職金共済制度における電子申請方式及び証紙貼付方式の運用等について」(令和3年3月30日 雇均勤発0330第1号・国不建整第186号)別紙・別添
- 建退共(勤労者退職金共済機構 建設業退職金共済事業本部)よくあるご質問(公共工事に関すること/契約締結・従業員・一人親方・証紙購入・加入履行証明)
- 建退共事務受託様式第6号「建設業退職金共済制度加入労働者数報告書」(建退共「事務受託に関する様式」掲載のExcel様式・記入例 2025年10月1日付)
- 神奈川県『経営事項審査の手引き 令和8年7月1日版』第1分冊・第2分冊
- 国土交通省「経営事項審査の主な改正事項(令和8年7月1日施行)」
- 神奈川県建設業協会(建退共神奈川県支部)加入履行証明のご案内
- 建退共「公共工事を受注したら 元請としてやること」(掛金納付の考え方・掛金収納書の提出/2026年10月14日に確認)
※本記事は上記の一次資料に基づき、行政書士 宮本雄介(やさしい行政書士事務所)が執筆・監修しています。制度の詳細・最新の運用は、必ず建退共および所轄の窓口にもご確認ください。
※本記事は2026年9月に執筆し、2026年10月に更新しました(令和8年7月1日施行の経審改正後の基準、建退共の様式・記入例の掲載先、掛金納付の考え方を確認)。内容は、国の通知(令和3年3月30日 雇均勤発0330第1号・国不建整第186号)・建退共の公式案内・神奈川県『経営事項審査の手引き 令和8年7月1日版』に基づく一般的な解説です。建退共の加入手続・退職金請求そのものの代行は当事務所の業務範囲外です。個別の判断は、最新の案内・所管窓口の取扱いをご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。