建設業

施工体制台帳は必要?5,000万円ラインと公共工事の落とし穴

施工体制台帳は自社の現場にも必要か

元請けの仕事が決まった。契約書を読んでいたら「施工体制台帳」という聞き慣れない言葉が出てきた——そんな状況ではありませんか。

「うちの現場に、本当に必要なのか」「必要だとして、何を書けばいいのか」。調べれば調べるほど、サイトによって金額の数字が違っていて、余計に不安になった方もいるはずです。

実は、ネット上の解説には古い金額のまま更新されていないものが少なくありません。この記事では、2026年8月時点の建設業法・建設業法施行令・建設業法施行規則、そして公共工事にかかわる入札契約適正化法の条文にもとづいて、施工体制台帳が必要になる条件を正面から整理します。

結論から先に言うと、施工体制台帳が必要になるのは「民間工事で3つの条件がそろったとき」と「公共工事で、元請けとして下請と契約するとき」の2パターンだけです。この記事では、その判定方法から、記載する中身、保存期間、守らなかったときにどうなるかまで、行政書士が条文にもとづいて解説します。

※この記事は、神奈川県秦野市の行政書士(登録番号 第12082434号)が、e-Gov法令検索で取得した現行条文にあたって作成しています。

この記事でわかること

  • 施工体制台帳が必要になる条件(民間工事・公共工事それぞれ)
  • 混同しやすい「5,000万円ライン」3種類の違い
  • 台帳に何を書くか、添付書類は何か
  • 保存期間と、作らなかったときに実際に起きること

施工体制台帳とは

施工体制台帳とは、元請けの会社が、下請けも含めた工事現場の体制——誰が、どの範囲を施工しているか——を1冊にまとめて記録しておく書類です(建設業法24条の8)。

条文は「作成し、工事現場ごとに備え置かなければならない」と定めています(同条1項)。事務所で作って保管しておけばよい書類ではなく、その現場に置いておくことまでが義務です。

工事現場に何社もの下請けが入ると、発注者からは「誰が実際に工事をしているのか」が見えにくくなります。それを可視化して、手抜き工事や不当な重層下請けを防ぐ、というのがこの制度の目的です。

結論:施工体制台帳が必要になるのは、この2パターンだけ

一文で言うと、こうなります。

  • 民間工事:3つの条件がすべてそろったときだけ
  • 公共工事:金額に関係なく、元請けが建設工事の下請契約を1件でも結んだら

順番に見ていきましょう。

民間工事:3つの条件がすべてそろったとき

民間工事で施工体制台帳が必要になるのは、次の3つが同時に成り立つときだけです(建設業法24条の8第1項、建設業法施行令7条の4)。

  1. あなたの会社が特定建設業者であること(下請けに出す代金の合計が一定額以上になる元請けのための、より要件が重い建設業許可です。一般建設業者は民間工事では対象外です)
  2. 発注者から直接請け負った工事であること(=元請けの立場。下請けとして工事を受けている場合は対象外です)
  3. その工事のために結んだ下請契約の総額が5,000万円以上であること
    ※元請けが発注者から直接請け負った工事が建築一式工事なら、8,000万円以上で判定します

ここでいう下請契約とは、建設工事の請負契約のことです(建設業法2条4項)。ですので、資材を買う契約、機材のリース、廃棄物の運搬、現場の警備といった建設工事の請負ではない契約は、5,000万円の集計に入れません。「支払った金額の合計」ではなく「建設工事を請け負わせた金額の合計」で見てください。

この3つのうち、どれか1つでも欠けると、民間工事では施工体制台帳を作る義務はありません。

なお、作成義務がある場合、発注者から請求があったときは、備え置いた台帳を発注者の閲覧に供する必要があります(建設業法24条の8第3項)。「作って現場に置いておけば、見せなくてよい」ではありません。

⚠️ よくある誤解:ネットで調べると「4,000万円以上」「4,500万円以上」「6,000万円以上」「7,000万円以上」といった説明を見かけることがあります。これはいずれも古い政令の金額です。現在の金額は5,000万円(建築一式工事は8,000万円)です。根拠は建設業法施行令7条の4で、e-Govで誰でも確認できます(出典は記事末尾にまとめています)。

公共工事:金額に関係なく、下請に1件でも出したら

まず「公共工事」の意味をはっきりさせておきます。入札契約適正化法2条2項は、公共工事を「国、特殊法人等又は地方公共団体が発注する建設工事」と定義しています。市役所や県が発注する工事は、ここに入ります。

見るのは「あなたが誰から直接請け負ったか」です。民間企業から下請けとして入っている工事は、その先の発注者が市役所であっても、あなたは台帳を作る側ではありません(元請けへの通知・協力を求められる側です)。

そのうえで、公共工事は話が変わります。入札契約適正化法15条1項が建設業法24条の8を読み替えていて、民間工事とは次の2点が違います。

  • 「特定建設業者」ではなく「建設業者」が対象になる(=一般建設業者も対象)
  • 金額の条件が消え、下請契約を1件でも締結したら作成義務が発生する

つまり公共工事では、「うちは金額が小さいから大丈夫」という民間工事の感覚は通用しません。この点は事故が起きやすいところなので、あとの章でさらに詳しく説明します。

混同しやすい「5,000万円ライン」を整理する

建設業法まわりには、似たような金額のラインがいくつもあります。施工体制台帳の5,000万円と、他の制度の金額を混同している方は少なくありません。3つを並べて整理しておきましょう。

制度根拠条文金額ライン何が変わるか
施工体制台帳の作成建設業法施行令7条の4下請契約の総額 5,000万円以上(建築一式8,000万円以上)台帳・施工体系図を作る義務が発生する
特定建設業許可が必要になる下請代金建設業法施行令2条5,000万円以上(建築一式8,000万円以上)この金額以上を下請に出すには、特定建設業許可そのものが必要になる
主任技術者・監理技術者の専任建設業法施行令27条請負代金 4,500万円以上(建築一式9,000万円以上)現場に置く技術者を、その現場専属(専任)で配置する義務が発生する
混同しやすい3つの金額。施行令7条の4は下請契約の総額5,000万円で施工体制台帳、施行令2条は特定建設業許可、施行令27条は請負代金4,500万円で技術者の専任

3つとも「元請け」「下請け」にかかわる金額ですが、何が発生するかがまったく違います。台帳の要否を考えるときは、まず一番上の行(施行令7条の4)だけを見てください。

フローチャートで確認:うちの現場は対象になる?

施工体制台帳の要否の判定フロー。公共工事は下請と契約すれば必要、民間工事は元請け・特定建設業者・下請契約の総額5,000万円以上の3条件がそろったとき

ここまでの内容を、判定フローの形にまとめます。上から順に読んでいってください。

Q1.その工事は公共工事ですか?

  • はい(公共工事) → Q2へ
  • いいえ(民間工事) → Q3へ

Q2.(公共工事の場合)下請と契約する予定がありますか?

  • 1件でもある施工体制台帳が必要です(金額は関係ありません。一般建設業者でも対象です)
  • まったくない(すべて自社施工) → 不要です

Q3.(民間工事の場合)発注者から直接請け負った、元請けの立場ですか?

  • いいえ(下請けの立場) → 施工体制台帳を作る義務はありません(むしろ元請けへの通知・協力を求められる側です)
  • はい(元請け) → Q4へ

Q4.(民間工事・元請けの場合)あなたの会社は特定建設業者ですか?

  • いいえ(一般建設業者) → 民間工事では作成義務はありません
  • はい(特定建設業者) → Q5へ

Q5.(民間・元請け・特定建設業者の場合)下請契約の総額は5,000万円以上ですか?

※発注者から直接請け負った工事が建築一式工事なら、8,000万円以上で判定します

  • いいえ → 施工体制台帳を作る義務はありません
  • はい施工体制台帳が必要です

「そもそも自社が一般建設業者か特定建設業者か、許可証のどこを見れば分かるのか分からない」という方もいらっしゃいます。許可の種類や必要書類の全体像は「神奈川県の建設業許可に必要な書類一覧【令和8年度版】」でも確認できます。

判断に迷う場合、特に「うちは特定建設業者だったか一般建設業者だったか分からない」「発注者から直接請け負ったのか微妙なケース」は、自己判断せずにご相談ください。

お電話:0463-57-8330(平日9:00〜18:00)/お問い合わせフォーム(24時間受付)

公共工事は要注意——民間と変わる5つのポイント

民間工事と公共工事の違い。公共工事は金額の条件がなく一般建設業者も対象で、施工体系図は公衆が見やすい場所にも掲示し、台帳の写しを発注者に提出する

公共工事の施工体制台帳は、民間工事の感覚のままだと見落としが出やすいところです。入札契約適正化法15条にもとづいて、5つのポイントを押さえておきましょう。

①金額のラインが消える

民間工事なら「5,000万円未満だから大丈夫」で済みますが、公共工事にその理屈は通用しません。入札契約適正化法15条1項により、金額の条件そのものが取り払われます。下請契約を1件でも結べば対象です。

②一般建設業者も対象になる

民間工事では特定建設業者だけが対象でしたが、公共工事では条文の「特定建設業者」が「建設業者」に読み替えられます。一般建設業許可の会社が元請けになった場合も、下請契約を結べば施工体制台帳が必要です。

③施工体系図は「公衆が見やすい場所」にも掲示する

施工体系図(誰がどの範囲を施工しているかを1枚で示す図)は、民間工事なら「工事現場の見やすい場所」に掲げれば足ります(建設業法24条の8第4項)。公共工事はここにも読み替えがあり、「工事関係者が見やすい場所」及び「公衆が見やすい場所」の両方への掲示が必要です(入札契約適正化法15条1項)。現場の中だけでなく、外から通行人にも見える場所に掲げるイメージです。

④台帳の写しを発注者に提出する

公共工事では、作成した施工体制台帳の写しを発注者に提出しなければなりません(入札契約適正化法15条2項)。ただし、発注者が情報通信技術を利用する方法で施工体制を確認できる措置を講じている場合は、この提出は不要です。この「措置」は、建設キャリアアップシステム(CCUS)その他適切なシステムを利用する方法で発注者が台帳の記載事項を確認できるようにするもの、と省令に明記されています(入札契約適正化法施行規則3条)。この場合、さきほど民間工事のところで触れた建設業法24条の8第3項(発注者から請求があれば閲覧させる規定)は適用されません。閲覧させる義務が、写しを出す義務に置き換わると捉えてください。

⑤発注者の点検は拒めない

発注者から施工体制の点検を求められたときは、拒むことができません(入札契約適正化法15条3項)。

はじめて公共工事に挑戦する場合、施工体制台帳の前段階として、入札参加資格や経営事項審査(経審)が必要になることがほとんどです。入札参加資格の等級(ランク)と経審点数の関係は「入札参加資格の等級(ランク)とは?経審点数との関係と上げ方【神奈川】」、経審の全体像は「経審のやり方を最初から全部」でまとめています。

県外の発注機関も併願する場合は「入札参加資格 東京都は今も申請できる|毎月20日締切と5ステップ」が参考になります(手続きは発注機関ごとに異なります)。

施工体制台帳には何を書く? 記載事項を4つのかたまりで整理

施工体制台帳の記載事項は、建設業法施行規則14条の2第1項に定められています。細かく見ると量が多いのですが、4つのかたまりで捉えると分かりやすくなります。

①作成建設業者(あなたの会社)について

  • 許可を受けて営んでいる建設業の種類
  • 健康保険・厚生年金・雇用保険への加入状況

②元請けとして請け負った工事について

  • 工事の名称・内容・工期
  • 発注者と契約した年月日、発注者の商号など、契約した営業所
  • 発注者側の担当者(監督員)
  • 自社の現場代理人(現場での契約事項を任される、現場の窓口役)
  • 現場に置く主任技術者・監理技術者(工事現場の施工管理を担う技術者)の氏名・資格・専任かどうか
  • 監理技術者補佐を置く場合は、その氏名・資格
  • 技術上の管理を別の人が担当する場合は、その人の情報
  • 工事に従事する人全員の氏名・生年月日・年齢・職種・社会保険の加入状況・中退共(中小企業退職金共済)の対象かどうか・安全衛生教育の内容・保有資格(資格欄は本人が希望しない場合は記載を省略できます)
  • 一号特定技能外国人・外国人技能実習生が従事しているかどうか

③下請負人について

  • 商号又は名称・住所
  • 建設業許可を持っている場合は、許可番号と許可業種
  • 健康保険等の加入状況

④下請が請け負った工事について

  • 工事の名称・内容・工期
  • 下請契約を結んだ年月日
  • 注文者側の担当者(監督員)
  • 下請けの現場代理人
  • 下請けが置く主任技術者の氏名・資格・専任かどうか
  • 契約した元請けの営業所
  • 従事者の情報(②と同じ項目)
  • 一号特定技能外国人・外国人技能実習生の従事状況

見落とされやすいのが、下請けの分です。一号特定技能外国人・外国人技能実習生の従事の状況は、自社だけでなく④(下請けが請け負った工事)にも記載事項として並んでいます。

添付書類と、記載を省略できるケース

施工体制台帳には、元請けの請負契約書、そして各下請契約の契約書等(建設業法19条1項・2項に定める書面)の写しなどを添付します(建設業法施行規則14条の2第2項)。

添付書類にすでに同じ事項が書かれている場合は、台帳のどの部分が添付書類のどこに対応するかを明らかにすれば、台帳側への重ねての記載を省略できます(同施行規則14条の5第1項)。

台帳の作り方には、ほかにも次のルールがあります。

  • 下請けの記載・添付は、下請負人ごとに、施工の分担関係が分かるように行う(同施行規則14条の5第2項)
  • 事実が生じた、または明らかになったら遅滞なく記載し、見やすいところに商号又は名称・許可番号・「施工体制台帳である旨」を明示して作成する(同条第3項)

下請契約の内容——特に金額——が適正かどうかを考えるときは、労務費の相場も参考になります。「建設業の労務費の基準(標準労務費)とは?神奈川の実数と3ステップ」もあわせてご覧ください。

⚠️ 様式について:施工体制台帳や施工体系図について、建設業法施行規則は「何を書くか」(記載事項)を定めていますが、工事経歴書(様式第2号)のような法定の様式番号は定めていません。一方で、発注者や元請けから様式を指定されることがあります。着手前に、指定の様式がないか確認しておくと安心です。

施工体制台帳とセットで作る「施工体系図」

施工体系図とは、誰がどの範囲を施工しているかを、下請負人ごとに系統立てて1枚で示す図のことです(建設業法24条の8第4項)。台帳が「一覧表」だとすれば、体系図は「相関図」のイメージです。

記載事項は建設業法施行規則14条の6に定められています。

  • 作成建設業者の商号又は名称
  • 元請工事の名称・工期、発注者の商号など、主任技術者又は監理技術者の氏名(監理技術者補佐等を置く場合はその氏名)
  • 現にその工事を施工している下請負人の商号・代表者氏名・一般建設業者か特定建設業者かの別・許可番号(下請けが建設業者でない場合は商号と代表者氏名のみ)
  • その下請工事の内容・工期、特定専門工事(※)に該当するかどうか、下請けが置く主任技術者の氏名

これらを、下請負人ごとに、施工の分担関係が分かるように系統的に表示します。

※特定専門工事とは、土木一式工事・建築一式工事以外の建設工事のうち、①コンクリートの打設に用いる型枠の組立てに関する工事(大工工事、とび・土工・コンクリート工事のうち)と②鉄筋工事の2つで、その工事のために結んだ下請契約の総額が4,500万円未満のものをいいます(建設業法26条の3第2項、建設業法施行令31条)。この2工事では、一定の条件のもとで元請けの主任技術者が下請けの主任技術者の職務を兼ねられる特例があります。

掲示場所は、民間工事と公共工事で異なります。

工事の種類施工体系図の掲示場所
民間工事工事現場の見やすい場所(建設業法24条の8第4項)
公共工事工事関係者が見やすい場所及び公衆が見やすい場所(入札契約適正化法15条1項)

台帳を作ることになったら、下請への通知・掲示も忘れずに

施工体制台帳を作らなければならない立場(作成建設業者)になったら、それで終わりではありません。下請負人に対して、次の対応も必要です(建設業法施行規則14条の3)。

  • 遅滞なく、下請負人に対して①作成建設業者の商号又は名称、②再下請負通知を行うべき旨と提出場所書面で通知する
  • 同じ内容を、工事現場の見やすい場所に掲示する

この通知を受けた下請けは、さらに他の業者に工事を出す場合、元請けに対して再下請負通知書を提出することになります(建設業法24条の8第2項、名称の定めは建設業法施行規則14条の4第2項)。

再下請負通知書の書き方は項目が多いため、本記事では扱いません。ここでは「下請けから提出してもらう書類」として位置づけを押さえておいてください。詳しい書き方は、別記事で改めて解説する予定です。

記載事項が変わったときの直し方

工期が延びた、下請けが増えた、技術者が交代した——施工体制台帳の記載事項に変更があったときは、遅滞なく変更した年月日を付記して書き換えます(建設業法施行規則14条の5第4項)。

「工事が終わるタイミングでまとめて直す」ではなく、変更のたびに直していくのが原則です。台帳は一度作って終わりの書類ではなく、現場が動いている間ずっと更新し続ける書類だと考えてください。

保存期間はどれくらい?——台帳は5年、施工体系図は10年

施工体制台帳そのものの保存を直接定めた条文があるわけではありません。実務上は、台帳のうち一定の事項を「帳簿」(建設業法40条の3)の添付書類として保存する、という組み立てになっています。

具体的には、帳簿には次の部分を添付しなければなりません(建設業法施行規則26条2項3号)。

  • 主任技術者・監理技術者の氏名と資格等
  • 下請負人の商号と許可番号
  • 下請工事の内容・工期
  • 下請けが置いた主任技術者の氏名と資格

保存期間は、請け負った建設工事ごとに、目的物の引渡しをしたときから5年間です(建設業法施行規則28条1項)。ただし、発注者と締結した、住宅を新築する建設工事にかかるものは10年間です。

ここで見落とされやすいのが施工体系図です。施工体系図は帳簿の添付書類ではなく、「営業に関する図書」として別に位置づけられています(建設業法施行規則26条5項3号)。そして図書の保存期間は、目的物の引渡しをしたときから10年間です(同施行規則28条2項)。

つまり、同じ現場の書類でも保存する年数が違います。整理すると次のとおりです。

何を位置づけいつまで保存するか
施工体制台帳のうち一定の部分帳簿の添付書類(規則26条2項3号)引渡しから5年間
(発注者と締結した住宅の新築工事は10年間)
施工体系図営業に関する図書(規則26条5項3号)引渡しから10年間

営業に関する図書には、完成図や、発注者との打合せ記録、材料費等記載見積書なども含まれます。なお施工体系図を保存するのは、台帳を作る立場(作成建設業者)の会社だけです(同施行規則26条5項)。

守らなかったらどうなる?——「罰金」ではなく「指示処分」

「施工体制台帳を作らないと罰金〇〇万円」という説明を見かけることがありますが、正確ではありません。

建設業法が定めているのは、許可行政庁による指示処分(役所からの是正の指示)です。

建設業法28条1項には、指示処分の対象となる規定のなかに、入札契約適正化法15条1項によって読み替えて適用される24条の8第1項・第2項・第4項が含まれることが、条文上はっきり書かれています。つまり、施工体制台帳・施工体系図にかかわる義務違反は、指示処分の対象です。

その指示に従わなかった場合は、1年以内の期間を定めて、営業の全部または一部の停止を命じられることがあります(建設業法28条3項)。条文は「命ずることができる」という書き方なので、必ず営業停止になるわけではありません。ただし、放置すればそこまで進みうる、という建て付けです。

似ているようで別の話として、10万円以下の過料という規定もあります(建設業法55条5号)。ただしこれは、先ほどの「保存」の章で説明した帳簿や図書(建設業法40条の3)を備えなかった、記載しなかった、虚偽の記載をした、保存しなかった場合の話です。さきほどの施工体系図(10年保存)も、この「図書」に含まれます。台帳そのものを作らなかったこと自体は指示処分の話で、こちらは保存を怠ったときの話です。別の義務なので、混同しないよう注意してください。

まとめ:まず確認すべき3つのこと

長くなったので、判断の入り口だけ振り返ります。

  1. その工事は公共工事民間工事か(公共工事なら金額に関係なく、元請けとして建設工事の下請契約を結べば施工体制台帳が必要です)
  2. 民間工事の場合、自社は特定建設業者で、発注者から直接請け負った元請け
  3. 民間工事の場合、下請契約の総額が5,000万円以上(元請けが直接請け負った工事が建築一式工事なら8,000万円以上)か

この3つを押さえれば、多くの現場で「作成義務があるかどうか」の判断がつきます。判断に迷うケースや、すでにある台帳が正しく作られているか不安なケースは、自己判断せずにご相談ください。

施工体制台帳の作成・チェックは、やさしい行政書士事務所へ

施工体制台帳の要否の判定だけでも、やさしい行政書士事務所へご相談ください

施工体制台帳は、一度作って終わりの書類ではありません。工期が延びれば直し、下請けが増えれば追記する——現場が動いている間、ずっと更新し続ける書類です。

「うちの現場、本当に作成義務があるのか判断がつかない」「今ある台帳がこれで正しいのか不安」——そんなときは、無料相談でお気軽にご相談ください。

やさしい行政書士事務所は、神奈川県秦野市を拠点に、神奈川県央エリアの建設業者さまの許可・経審・現場書類をサポートしています。まずは施工体制台帳の要否判定だけでも、お気軽にお電話ください。

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出典(根拠条文)

本記事の記載は、以下の条文にもとづいています(2026年8月時点の現行法で確認)。

  • 建設業法(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100
  • 建設業法施行令(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/331CO0000000273
  • 建設業法施行規則(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/324M50004000014
  • 公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/412AC0000000127

法令は改正されることがあります。実際の判断にあたっては、最新の条文と発注者の指示をあわせてご確認ください。神奈川県・秦野市に固有の取扱いがある場合、この記事では扱っていません。発注者や県の窓口にあわせてご確認ください。

執筆・監修:やさしい行政書士事務所 代表行政書士 宮本 雄介(登録番号 第12082434号)

執筆・監修者について

〒257-0003 神奈川県秦野市南矢名2123-1 オレンジハイツ今井2E

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神奈川県央エリア(秦野市を中心に)で、建設業許可・経営事項審査(経審)を専門に取り扱っています。

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宮本 雄介
やさしい行政書士事務所 代表。行政書士(登録番号 第12082434号/神奈川県行政書士会所属)。2011年に行政書士試験に合格し、2012年に開業。以来1,000件以上の相談に対応してきました。建設業許可・経営事項審査(経審)、補助金、会社設立、在留資格、相続を取り扱い、なかでも建設業の許認可を中心にしています。弁護士事務所・社労士事務所での実務経験と、複数企業の社外取締役の経験を持ち、手続きの代行だけでなく経営の視点からも助言します。神奈川県秦野市を拠点に、県内を中心に全国の事業者をサポートしています。