2026年9月29日時点の法令と、国土交通省の資料にもとづいて書いています。
「元請から注文書だけが届いた。請書に判を押して返せばいいのだろうか」
「ネットで拾ったひな形を使っているが、建設業法に合っているか自信がない」
「施主に口頭で頼まれた追加工事で、あとから金額がもめた」
工事請負契約書について、こんな不安を抱えていませんか。
工務店、リフォーム業者、一人親方の方はもちろんです。工事を頼む側の施主の方にも、知っておいてほしい内容です。
先に結論をお伝えします。
- 建設工事の請負契約は、書面で交わします。相手の承諾を得れば、電子契約でもかまいません。条文に、金額の下限や「許可業者だけ」という限定はありません。
- 書く内容は、建設業法19条1項が決めています。条文は1号から16号まで。国交省のガイドラインは「①〜⑮の15事項」として案内しています。
- 工事内容や金額が変わるときも、変更の内容を書面にします(19条2項)。
- 注文書と請書だけで済ませてよいかは、要件つきです。基本契約書も約款もない場合、国交省ガイドライン(元請と下請の契約について示したもの)は19条1項違反の例としています。
この記事では、次の順に整理します。
- 工事請負契約書とは(建設業法19条・交わす時期)
- 記載事項15の早見表と、欄の書き方の例
- つまずきやすい3つのポイントと、点検の順番
- 契約の形の選び方(注文書・請書・基本契約書)
- 押印を省ける3つの要件
- 電子契約の条件
- ひな形の入手先(国交省の標準約款)
- 記載事項が増えるケース(建設リサイクル法・訪問販売リフォーム)
- 印紙税と保存
- よくある質問
書いているのは、神奈川県秦野市で建設業許可・経営事項審査(公共工事の入札に必要な会社の評価)・補助金などを扱う、やさしい行政書士事務所の代表行政書士 宮本 雄介です。
目次
工事請負契約書とは?建設業法19条が決めているルール
請負とは「仕事の完成」を約束する契約
請負とは、仕事の完成を約束し、完成に対して代金を受け取る契約です。
建設工事についてのこの契約を書面にしたものが、工事請負契約書です。「請負工事契約書」「請負契約書」と呼ぶ人もいます。この記事では、建設工事に使う書面を工事請負契約書と呼びます。
書面を交わす義務は「両方の当事者」にある
建設業法19条1項は、建設工事の請負契約の当事者に、書面を交わすよう求めています。
当事者とは、次の二者です。
- 注文者:工事を頼む側(施主や元請)
- 請負人:工事を引き受ける側(工務店、リフォーム業者、一人親方、下請)
契約の締結に際して、決められた事項を書面に記載します。そのうえで、署名又は記名押印をして、お互いに交付します。
「署名又は記名押印」は、自筆で署名するか、名前を記して押印するか、という意味です。どちらか一方でかまいません。この記事では、以下「署名・押印」と短く書きます。
土台には18条があります。18条は、対等な立場での合意と、公正な契約、信義に従った誠実な履行を求めています。
「業務委託契約書」という名前でも同じ
題名は関係ありません。24条は、名義を問わず、報酬を得て建設工事の完成を目的として結ぶ契約を、請負契約とみなすと定めています。
「業務委託」「外注契約」と書いてあっても、中身が工事の完成を約束するものなら、19条がかかります。
書面はいつまでに交わす?
条文の書き方は、「契約の締結に際して」です。
「着工前に」という時期は、条文ではありません。国交省の『建設業法令遵守ガイドライン(第12版・令和8年1月)』が示す原則です。災害時などのやむを得ない場合は、例外とされています。
このガイドラインは、元請と下請の関係について示したものです。
違反の例としては、元請の指示で下請が契約前に工事に着手し、途中や終了後に契約書面を交わした場合が挙がっています。この場合は、19条1項違反とされています。
書面がなぜ大切なのか
ガイドラインは、書面の意義を次のように説明しています。
- 請負契約の内容を明確で正確なものにする
- 紛争を防ぐ
- 請負契約の「片務性(一方に有利になりやすいこと)」を改善する
許可を受けた建設業者が建設業法に違反した場合は、指示などの監督処分の対象になり得ます。
工事請負契約書の記載事項|15項目の早見表と「16号」の扱い
数え方は「条文は16号、国交省は15事項」
19条1項の条文は、1号から16号まであります。16号は「その他国土交通省令で定める事項」という受け皿です。
一方、国交省のガイドラインは、19条1項に基づいて契約書面に記載しなければならない事項を、「①から⑮までの15事項」として案内しています。
この記事も、ガイドラインと同じ15事項で表にします。16号を受けて記載事項を足す定めは、当事務所が確認した範囲では、建設業法施行規則(令和8年7月1日施行の版)に見当たりません。
早見表
「つまずきやすい点」の列は、実務でよく見かける抜けの例です。法令の条文そのものではありません。

| 番号 | 項目 | 書くこと | つまずきやすい点 |
|---|---|---|---|
| ① | 工事内容 | 責任施工範囲と施工条件を、具体的に | 「○○工事一式」だけで終わる |
| ② | 請負代金の額 | 契約の金額 | 追加・変更分が書面に反映されない |
| ③ | 着手の時期・完成の時期 | 着手の時期と完成の時期の両方 | 完成日だけで、着手の時期が空欄 |
| ④▲ | 工事を施工しない日・時間帯 | 定めるときは、その内容 | 休工日を決めたのに書面にない |
| ⑤▲ | 前金払・出来形払 | 定めるときは、支払の時期と方法 | 前払いの約束が口約束のまま |
| ⑥ | 設計変更・着手の延期・中止の申出があったとき | 工期の変更、代金の変更、損害の負担と、それらの額の算定方法 | 決め方を何も書いていない |
| ⑦ | 天災などの不可抗力 | 工期の変更、損害の負担と、その額の算定方法 | 台風や地震のときの扱いが空白 |
| ⑧ | 価格等の変動・変更 | 工事内容や代金の変更と、その額の算定方法 | 項目がない、または「変更しない」と書いてある |
| ⑨ | 第三者への損害賠償 | 工事で第三者が損害を受けたときの、賠償金の負担 | 誰が負担するか書いていない |
| ⑩▲ | 注文者が出す資材・貸す機械 | 提供・貸与するときは、その内容と方法 | 施主支給の材料の扱いが不明 |
| ⑪ | 完成検査・引渡し | 検査の時期と方法、引渡しの時期 | 引渡しの時期が書かれていない |
| ⑫ | 完成後の支払 | 支払の時期と方法 | 支払日や振込方法が書かれていない |
| ⑬▲ | 契約不適合の責任・保証 | 定めるときは、その内容(責任、または保証保険などの措置) | 責任の内容があいまい |
| ⑭ | 遅延利息・違約金 | 履行の遅れなどのときの、遅延利息・違約金・その他の損害金 | 損害金の定めがない |
| ⑮ | 紛争の解決方法 | 契約に関する紛争の解決方法 | 何も書いていない |
表の見方です。
- ①〜⑮は、条文の1号〜15号と同じ順番です。
- ▲は、条文に「定めをするときは」「提供し、又は貸与するときは」とある項目です。当てはまるときだけ書きます。
- 出来形払(できがたばらい)は、出来上がった部分に応じた支払いです。
- 契約不適合は、引き渡した工事が契約の内容と合っていないことです。昔の「瑕疵(かし)」にあたります。
- ⑮を書いても、実際にもめたときの代理は行政書士にはできません。紛争の代理は弁護士の仕事です。
施主の方も、この表を「自分の契約書に全部載っているか」の確認に使えます。
欄の書き方の例(一例です)
契約書の全文ひな形は、この記事には載せません。ここでは、欄の埋め方の一例だけ示します。実際の契約では、工事に合わせて調整してください。
- ① 工事内容:「○○邸 外壁塗装工事(範囲・仕様は、別紙の図面・仕様書・見積書のとおり)」
- ② 請負代金の額:「金○○円(うち消費税及び地方消費税の額 金○○円)」
- ③ 工期:「着手 令和○年○月○日/完成 令和○年○月○日」(着手と完成の両方を書きます)
- ⑧ 価格等の変動:「価格等の変動又は変更があったときの工事内容・請負代金の額の変更と、その額の算定方法は、注文者と請負人が協議して定める。」(算定方法を「協議して定める」とするのは、ガイドラインが挙げる書き方の例です。次の章で詳しく説明します)
- ⑪ 完成検査・引渡し:「注文者は、完成の通知を受けた日から○日以内に検査を行い、検査に合格した後、○日以内に引渡しを受ける。」(元請が許可を受けた建設業者である下請契約では、法律の決まりがあります。すぐ下の注意書きをご覧ください)
- ⑫ 完成後の支払:「引渡しを受けた日から○日以内に、請負人の指定する口座へ振り込んで支払う。」
- ⑭ 遅延利息・違約金:「支払が遅れたときは、遅れた日数に応じ、年○%の割合で計算した遅延利息を支払う。」(施主が消費者の契約と、特定建設業者が元請の下請契約では、法律の決まりがあります。すぐ下の注意書きをご覧ください)
- ⑮ 紛争の解決方法:「この契約に関する紛争は、当事者の協議で解決する。協議が整わないときは、建設工事紛争審査会のあっせん又は調停により解決を図る。」(建設工事紛争審査会は、建設業法25条に基づく機関で、あっせん・調停・仲裁を行います。どの方法を選ぶかは効果が大きく変わるため、迷うときは弁護士にご相談ください)
○の数字や日数は、当事者で話し合って決めます。この記事で「何日にすべき」「何%にすべき」とは決めていません。
ただし、法律の決まりがかかる場合があります。
施主が消費者(事業のためではなく契約する個人)のときに⑭を決めるとき:施主の支払が遅れたときの損害金と違約金は、合わせた額のうち、年14.6%の割合で計算した額を超える部分が無効になります(消費者契約法2条1項・9条1項2号)。
元請が許可を受けた建設業者である下請契約で⑪⑫⑭を書くとき:建設業法に期限と遅延利息の決まりがあります(「元請負人」は、下請契約の注文者で建設業者であるもの=2条5項)。次の決まりに合わせて、書き方を変えてください。
- 検査:完成の通知を受けた日から20日以内で、かつ、できる限り短い期間内に完了する(24条の4第1項)。
- 引渡し:検査で完成を確認した後、下請が申し出たら、直ちに引渡しを受ける(24条の4第2項)。遅らせてよいのは、下請契約で定めた工事完成の時期から20日を経過した日以前の一定の日に引渡しを受ける特約がある場合だけです。⑪は「下請負人が申し出たときは、直ちに引渡しを受ける」と書くか、特約の日を書きます。
- 支払期日と遅延利息(特定建設業者が元請のとき):下請代金の支払期日は、引渡しの申出の日(上の特約がある場合は、その一定の日)から起算して50日を経過する日以前で、かつ、できる限り短い期間内に定めます(24条の6第1項)。⑫の起算日は「引渡しを受けた日」ではなく「引渡しの申出の日(特約があるときは、その一定の日)」にします。下請が特定建設業者である場合と、下請が資本金4,000万円以上の法人である場合は除かれます(同項・施行令7条の2)。期日を定めなかったときは申出の日が、この決まりに反して定めたときは申出の日から起算して50日を経過する日が、支払期日とみなされます(同2項)。支払期日までに払わなかったときは、元請は下請に遅延利息を払わなければなりません。申出の日(特約があるときは、その一定の日)から起算して50日を経過した日から支払をする日までの日数に応じ、未払金額に年14.6%を掛けた額です(同4項・施行規則14条。上の除かれる場合は対象外)。⑭に何を書いたかにかかわらず、法律で支払が義務づけられている遅延利息です。
- 支払(元請が支払を受けたとき):契約書の支払日とは別に、元請が注文者から出来形払や完成後の支払を受けたときは、その支払の対象になった工事を施工した下請に、受けた支払に相応する下請代金を、支払を受けた日から1か月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払います(24条の3第1項)。
金額まわりの2つのルール
請負代金(②)に関わる決まりが、契約書の前後にあります。
- 原価割れの禁止(19条の3):注文者は、取引上の地位を不当に利用して、通常必要な原価に満たない金額を請負代金とする契約をしてはいけません。許可を受けた建設業者も、自ら持っている安い資材を使えるなど、国土交通省令で定める正当な理由がある場合を除き、原価割れの契約を結んではいけません(19条の3第2項・施行規則13条の11)。
- 契約前の提示(20条3項):注文者は、契約を結ぶまで(入札なら入札まで)に、②を除く記載事項を、できる限り具体的に示す必要があります。あわせて、見積りに必要な期間を設けます。
関連する話です。中央建設業審議会は、工期や労務費に関する基準も作成し、実施を勧告できます(34条2項)。詳しくは、当事務所の記事労務費の基準をご覧ください。
工事請負契約書の書き方でつまずく3つのポイントと点検の順番
つまずき1:工事内容(①)が「○○工事一式」だけになっている
ガイドラインは、①の工事内容について、責任施工範囲や施工条件を具体的に書く必要があるとしています。「○○工事一式」のような曖昧な書き方は、避けるべきとされています。
「一式」だけだと、どこまでが自分の仕事かで、あとから争いになりやすくなります。
工夫のひとつは、上の記入例のように、図面・仕様書・見積書を別紙にして、契約書の工事内容から引く形です。
つまずき2:価格変動の定め(⑧)に「変更しない」と書いてある
⑧は、価格等の変動や変更があったときの定めです。ガイドラインによると、「価格等の変動」は、価格の高騰や下落を指します。
⑧については、次のとおりです。
- 書かないのは、19条1項違反です。
- 「変更しない」「変更を認めない」のように、協議を前提としない書き方も、19条1項違反とされています。
- 書き方の例は、「協議して定める」です。協議のときに、価格等の変動の内容などの事情を考慮する旨を添える例も、ガイドラインに挙がっています。
下請契約では、標準下請契約約款22条(請負代金額の変更)にあたる内容がない契約も、19条1項違反とされています。
⑧の根拠である19条1項8号の文言は、令和6年12月13日の施行から、「その額の算定方法に関する定め」まで含む形になりました。古いひな形は、この文言に追いついていない可能性があります。
具体的な条文例は、スライド条項の書き方・条文例|民間工事の契約書に「値上げできる仕組み」を組み込む方法で解説しています。
公共工事のスライド3種の違いは単品スライド・全体スライド・インフレスライドの違い、価格転嫁と改正建設業法の全体像は価格転嫁と改正建設業法をご覧ください。
つまずき3:追加工事や変更を口頭で済ませてしまう
19条2項は、19条1項の事項に当たる内容を変更するときも、書面にするよう求めています。変更の内容を書面に記載して、署名・押印をして、お互いに交付します。
追加工事で工事内容や金額が変わるなら、口頭のままにはできません。

変更のときの流れは、次のとおりです。
- 追加・変更の話が出る(口頭で聞いた内容を、まずメモする)
- 変更点(工事内容・金額・工期)を整理する
- 変更の内容を、書面に書く
- 署名・押印をして、お互いに交付する
- 変更後の工事に取りかかる
工期や代金にどう響くかは、契約書の⑥〜⑧の定めに従って協議します。
点検の順番:当事務所が契約書を見るとき
当事務所で契約書を点検するときは、まず⑧と①、次に注文書・請書の形を見ます。
理由は、ガイドラインの書き方にあります。
- ⑧に「変更しない」と書いてあるものは、19条1項違反の例とされています。
- 基本契約書も約款もなく、注文書と請書だけのものも、19条1項違反の例とされています。
- ①が「一式」だけのものは、ガイドラインが「避けるべき」としている書き方です。
注文書と請書、基本契約書|工事請負契約書の「形」の選び方
先に押さえたい前提
この章の要件は、国交省ガイドラインが、元請と下請の契約について示しているものです。
施主との契約でも、19条1項は同じようにかかります。⑤〜⑮にあたる内容が、どの書類に書かれているかを、必ず確認してください。
契約の形の比較


| 契約の形 | 書面に入れるもの | 注意点 |
|---|---|---|
| A. 契約書1通 | ①〜⑮のすべて。署名・押印をして、お互いに交付 | 元請と下請なら、標準下請契約約款、またはこれに準拠した内容の書面の活用が求められる |
| B. 基本契約書+注文書・請書 | 基本契約書に⑤〜⑮(注文書・請書に個別に書く事項を除く)。注文書・請書に①〜④と必要な事項。注文書・請書に「書いていない事項は基本契約書による」と明記 | 注文書には注文者が、請書には請負人が、署名・押印する。省略できる場合は次の章で説明 |
| C. 注文書・請書+契約約款 | 注文書と請書の両方に、同じ内容の約款を添付または印刷。約款に⑤〜⑮(注文書・請書に個別に書く事項を除く)。個別記載欄に①〜④とその他必要な事項。「書いていない事項は約款による」と明記。複数枚なら割印 | 注文書には注文者が、請書には請負人が、署名・押印する。この形には、署名・記名押印を省ける定めは示されていない |
| D. 注文書と請書だけ | 基本契約書も約款もない | 元請と下請では、19条1項違反の例 |
どの形を選ぶ?
- 同じ相手から繰り返し工事を受ける:Bが向いています。工事ごとの書類は注文書・請書で済みます。
- 単発の工事:Aが基本です。
- 相手が出してきた注文書・請書に約款が付いている:Cの形です。⑤〜⑮(注文書・請書に個別に書く事項を除く)が約款に入っているかを、必ず確認します。
- 注文書と請書しか出てこない:Dの状態です。約款や基本契約書がないなら、整えることをおすすめします。
「注文書と請書だけで契約できる」という言い切りは、この形ではできません。
「うちはDの状態かもしれない」と思ったら、整え方を無料相談でご相談いただけます(電話 0463-57-8330/お問い合わせフォーム)。
注文書・請書の押印は省ける?署名も記名押印もいらなくなる3要件
はじめに、ことばの整理です。19条1項が求めるのは、「署名又は記名押印」です。自筆で署名すれば、ハンコがなくても足ります。
この章でいう「押印の省略」は、署名も記名押印もしないことを指します。
省けるのは、B(基本契約書を交わしたうえでの注文書・請書)の場合だけです。
国交省の通知(「注文書及び請書による契約の締結について」平成12年6月29日建設省経建発第132号、最終改定 令和7年9月30日国不建第81号)が示す、3つの要件を、すべて満たす必要があります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| (ア) | 注文者が、消費者契約法2条1項の「消費者」ではないこと |
| (イ) | 基本契約書の締結時に、対等なパートナーの関係にあることを、お互いに確認すること |
| (ウ) | 基本契約書の締結時に、繰り返し取引した実績があることを、お互いに確認すること |
省略には、次の限界があります。
- 自宅のリフォームを頼む個人の施主は、「消費者」にあたります。この場合、省略は使えません。注文書・請書に、署名・押印が必要です。
- A(契約書1通)やC(注文書・請書+約款)の形には、省略の定めは示されていません。署名・押印をします。
- 基本契約書そのものへの署名・押印は、省けません。
- 3つのうち、1つでも欠けたら省略できません。
- 契約金額や工期などを踏まえて、双方の合意で署名・押印することは妨げられていません。
電子契約で工事請負契約書を交わすときの条件
電子契約は、19条3項で認められています。相手の承諾を得て、国交省令で定める措置を講じれば、書面に書いて署名・押印をし、お互いに交付したものとみなされます。
押さえる主な条件は、次のとおりです(施行令5条の5、施行規則13条の4〜13条の6)。
- 相手の承諾:あらかじめ、電子契約の種類と内容(どの方法を使うかと、ファイルへの記録の方式)を示して、書面または電磁的方法(国土交通省令で定める電子的な方法)で承諾を得ます。相手から、書面または電磁的方法で承諾を撤回する申出があったら、電子ではできません。再び承諾をもらえば、電子でできます。
- 書面にできること:相手が、記録を出力して書面を作れること。
- 改ざんの確認:内容が変更されていないか、確認できる措置があること。
- 本人確認:相手が本人であることを、確認できる措置があること。
送り方は、通信回線で送信・閲覧させる方法と、電磁的記録媒体を渡す方法があります。相手に閲覧させる方法のときは、契約の内容を自分の側のファイルに記録すること、または記録したことを、相手に通知します。相手が閲覧していたことを確認したときは、通知は要りません(施行規則13条の4第3項)。
電子で交わしても、①〜⑮の記載は必要です。注文書と請書を電子で交わす場合も、19条3項が適用されます。国交省は「電磁的措置による建設工事の請負契約の締結に係るガイドライン」(令和7年9月30日)を出しています。電子契約を行うときの参照先です。
電子契約の印紙税の扱いは、この記事では扱いません。税務署か税理士にご確認ください。
工事請負契約書のひな形は?国交省の標準約款4種
契約書の全文ひな形は、この記事には載せません。国が正式版を公開しているからです。
中央建設業審議会(中建審)は、標準請負契約約款を作成し、その実施を勧告できます(建設業法34条2項)。国交省のページで、PDFとWordの両方が公開されています。
| 約款 | 使う場面 |
|---|---|
| 公共工事標準請負契約約款 | 公共発注者の工事。電力・ガス・鉄道など、常時工事を発注する民間企業の工事にも使えるよう作られている |
| 民間建設工事標準請負契約約款(甲) | 民間工事用 |
| 民間建設工事標準請負契約約款(乙) | 民間工事用 |
| 建設工事標準下請契約約款 | 下請工事用 |
- 直近の改正は、令和7年12月2日改正、令和7年12月12日施行です。建設業法などを一体で改正した「第三次・担い手3法」の全面施行を踏まえたものです。
- 民間の(甲)と(乙)の使い分けは、国交省のページでご確認ください。
- 元請と下請の契約書面は、標準下請契約約款、またはこれに準拠した内容の書面の活用が求められます。
- 公共工事では、発注者が用意する契約書式に従います。
- 中建審の標準約款は、業界団体などが作る別の約款とは別物です。
入手先は、国交省の建設工事標準請負契約約款についてです。
8号の書き方は、スライド条項の書き方・条文例をご覧ください。
工事によって記載事項が増えるケース|建設リサイクル法と訪問販売リフォーム
対象建設工事は、記載事項が4つ増える
建設リサイクル法13条は、対象建設工事の請負契約に、建設業法19条1項のほかに記載する事項を求めています。下請契約にも、同じです。
増える4項目は、分別解体等に関する省令7条が定めています。
- 分別解体等の方法
- 解体工事に要する費用
- 再資源化等をするための施設の名称と所在地
- 再資源化等に要する費用
変更するときも書面にします。電子契約も使えます。
対象になる工事の規模は、施行令2条で決まっています。特定建設資材を使う工事のうち、次の基準以上のものです。
| 工事 | 基準 |
|---|---|
| 建築物の解体 | 床面積の合計 80㎡以上 |
| 建築物の新築・増築 | 床面積の合計 500㎡以上 |
| 建築物の修繕・模様替えなど | 請負代金 1億円以上 |
| 建築物以外の解体・新築など | 請負代金 500万円以上 |
- 同じ業者が工事を複数の契約に分けて請け負っても、正当な理由がなければ、1つの契約で請け負ったものとみなして判断します(施行令2条2項)。
- 都道府県は、条例で基準を変えられます。神奈川県で別の基準が定められていないかは、届出先の窓口でご確認ください。
事前の届出は、建設リサイクル法 届出の書き方で解説しています。
訪問販売のリフォームは、特商法の書面もかかる
営業所など以外の場所で、契約の申込みを受けたり、契約を結んだりする取引は、特定商取引法の「訪問販売」にあたります(2条)。お客様の自宅での契約が、代表例です。
その場合、建設業法の契約書とは別に、次のルールがかかります。
- 申込みのとき、契約のときに、法律で決められた書面を渡す(4条・5条)。
- クーリング・オフは、書面を受け取った日から数えて、原則として8日以内(9条)。
例外(適用除外)もあります。自分の取引が例外に当たるかは、e-Gov 特定商取引法でご確認ください。
印紙税と保存|契約書を交わしたあとの注意
印紙税の税額は、国税庁で確認する
建設工事の請負契約書は、印紙税の対象です。契約金額が100万円を超えるものは、令和9年3月31日までに作成するものについて、税額が軽減されます。
税額は、契約金額ごとの表で決まります。この記事に金額は書きません。国税庁のタックスアンサー No.7108の表をご覧ください。
個別の判断に迷うときは、税務署か税理士にご相談ください。
契約書は帳簿に添付して保存する
許可を受けた建設業者は、営業所ごとに帳簿を備えて保存します(40条の3)。帳簿には、19条1項・2項の書面(または写し)を添付します(施行規則26条2項1号)。
保存期間は、安全書類の保管期間の記事で解説しています。
下請に出す工事では、施工体制台帳など別の書類が必要になる場合があります。施工体制台帳の記事もご覧ください。
よくある質問(FAQ)
小さな工事(数十万円)でも工事請負契約書は必要ですか?
必要です。19条の条文に、金額の下限はありません。
許可が要らない「軽微な建設工事」でも同じです。軽微な建設工事は、次のとおりです(神奈川県の手引き令和8年度版)。
- 建築一式工事:請負代金1,500万円未満、または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事
- それ以外の工事:請負代金500万円未満(いずれも消費税込み)
小さな工事は、標準約款を付けた注文書・請書の形にすると、書類の量を抑えやすくなります。
注文書と請書だけで契約してもいいですか?
要件つきです。国交省ガイドラインは、元請と下請の契約について、次の要件を示しています。
- 基本契約書(または、注文書と請書の両方に付けた同じ約款)に、⑤〜⑮(注文書・請書に個別に書く事項を除く)が書かれていること
- 注文書と請書に、①〜④とその他必要な事項が書かれていること
- 注文書と請書に、「書いていない事項は基本契約書(約款)による」と明記されていること
- 注文書には注文者が、請書には請負人が、それぞれ署名・押印をすること(約款を付ける形で、注文書または請書と約款が複数枚になるときは割印。基本契約書がある形では、3要件を満たせば、注文書・請書への署名・押印を省けます。基本契約書そのものへの署名・押印は省けません=次の質問)
基本契約書も約款もなく、注文書と請書だけ(またはどちらか一方だけ)で契約した場合は、19条1項違反の例とされています。詳しくは、本文の比較表をご覧ください。
ハンコ(押印)は省けますか?
ハンコが必ず必要とは限りません。19条1項は「署名又は記名押印」を求めており、自筆の署名でも足ります。
そのうえで、基本契約書を交わしたうえでの注文書・請書に限り、3要件をすべて満たすと、署名も記名押印もしなくてよいとされています。
個人の施主のような「消費者」が注文者の場合は、この省略は使えません。署名・押印が必要です。
電子契約でもいいですか?
かまいません。相手の承諾を得て、書面にできること、改ざんの確認、本人確認の3つの技術的な条件を満たす措置で行います。
電子で交わす場合は、19条3項の措置が、書面に書いて署名・押印をし、お互いに交付することに代わります。電子でも、①〜⑮の記載は必要です。
口頭で追加工事を頼まれたらどうすればいいですか?
工事内容や金額が変わるなら、変更の内容を書面にします。署名・押印をして、お互いに交付します。
工期や代金への影響は、契約書の⑥〜⑧の定めに従って協議します。書面が整う前に工事を進めると、あとで金額や範囲をめぐって、もめやすくなります。
一人親方が「業務委託契約書」を渡されました。請負契約書とは別ですか?
題名が「業務委託」でも、報酬を得て建設工事の完成を目的とする契約なら、請負契約とみなされ、建設業法が適用されます(24条)。
国交省ガイドラインは、元請に、個人事業主の建設業者との取引で契約書面を示すことを求めています。
請負人の側から、契約書面を出すこともできます。元請と合意した契約内容や条件に基づいて出した書面が、標準下請契約約款に基づくもの、または19条1項の記載事項を満たすものであるのに、元請が取引上の立場を利用して、正当な理由なく受取りを拒むことは、建設業法18条の趣旨からも適当ではないとされています。
ひな形はどこにありますか?
国交省の標準約款4種が、PDFとWordで公開されています。建設工事標準請負契約約款についてで入手できます。
印紙はいくらですか?
契約金額によって変わります。国税庁のNo.7108の表でご確認ください。迷うときは、税務署か税理士へ。
まとめ|工事請負契約書を交わす前の確認リスト
工事請負契約書は、金額の大小にかかわらず、書面で交わすのが基本です。
契約を交わす前に、次の8点を確認してください。
- ①〜⑮が、契約書または約款のどこかに書かれている(▲は当てはまる場合だけ)
- ⑧に「変更しない」と書いていない
- 工事内容が「一式」だけで終わっていない
- 注文書と請書だけで終わらせていない(基本契約書か約款がある)
- 署名・押印をして、お互いに交付している(電子契約では19条3項の措置で代わります。基本契約書がある形で3要件を満たすときは、注文書・請書の署名・押印を省けます)
- 着工前に交わしている(ガイドラインの原則)
- 建設リサイクル法の対象工事なら、4項目が入っている
- 自宅などで契約する訪問販売リフォームなら、特商法の書面も渡している
工事を頼む側の施主の方も、同じリストで確認できます。4と6は、ガイドラインが元請と下請の契約について示しているものです。施主との契約では、①〜⑮がどの書類に書かれているかを確かめてください。
ここまでの内容には、次の根拠があります。
- 建設業法(e-Gov法令検索・令和7年12月12日施行の版)
- 建設業法施行令(令和8年4月1日施行の版)・同施行規則(令和8年7月1日施行の版)
- 国土交通省『建設業法令遵守ガイドライン(第12版)』(令和8年1月)
- 国土交通省「建設工事標準請負契約約款について」
- 建設リサイクル法・同施行令・特定建設資材に係る分別解体等に関する省令
- 特定商取引法(e-Gov掲載の現行版)
- 国税庁 タックスアンサー No.7108(令和8年4月1日現在法令等)
法令の原文は、e-Gov 建設業法で確認できます。個別の契約への当てはめは、契約の内容や相手方によって変わります。迷うときは、ご相談ください。
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なお、紛争の代理は弁護士の領域です。印紙税の個別の扱いは、国税庁の表や税務署でご確認ください。必要に応じて、適切な専門家をご案内します。
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