
「鉄骨、また上がったんですか…」
資材屋さんからそう聞くたびに、胃が痛くなる。そんな経営者さん、多いのではないでしょうか。
原価は確実に上がっているのに、元請けには言い出せない。
「今さら値上げなんて言ったら、次の仕事が来なくなるかもしれない」
「うちだけ強く言うのも気が引ける」
そうやって我慢を重ねているうちに、利益はじわじわ削られていきます。
人件費も、燃料費も、資材費も。上がる要素ばかりで、下がる要素が見当たらない。そんな日々が続いている方も多いはずです。
実はこの我慢、放置すると倒産に直結しかねないことが、データにはっきり出ています。
でも安心してください。2025年12月、価格転嫁のための「武器」になる法律が全面施行されました。😊
- なぜ建設業の「インフレ倒産」が過去最多なのか
- 価格転嫁の武器になる、改正建設業法の中身
- 明日から何をすればいいか
秦野市で建設業のお客様を多く担当している行政書士が、やさしく解説します。
目次
建設業の「インフレ倒産」が半期最多151件。なぜ建設業が一番多いのか
数字を見ると、大変さがよく分かります。
帝国データバンクの2026年上半期・物価高倒産動向調査によると、原材料やエネルギーのコスト増が主因の「物価高倒産」は、全業種で556件でした。前年同期比+23.8%です。
そのうち建設業は151件で、全業種の中で最多でした。

前年同期は118件だったので、約3割増(+27.9%)。半期ベースでは過去最多を更新しています。
要因を分解すると、鋼材・木材・コンクリートなどの「原材料高」が理由の倒産が65件。
さらに2026年4月以降は、中東情勢(ホルムズ海峡の緊張)に伴うナフサ関連の資材高も、新たな増加要因になっています。
「うちだけが苦しいわけじゃない」。そう分かるだけでも、次の一歩を踏み出しやすくなるのではないでしょうか。
そもそも「価格転嫁」とは?建設業(重層下請け構造)だと難しい理由
「価格転嫁」とは、原材料費や人件費の値上がり分を、請負代金にきちんと反映させることです。
本来はシンプルな話のはずです。

でも建設業は、元請け→一次下請け→二次下請け…と、何層にも重なる「重層下請け構造」が一般的。
下に行くほど、価格交渉力は弱くなりがちです。
「値上げを言うと、次から仕事が回ってこないかもしれない」
そんな不安から、声を上げられずにいる下請け企業が多いのが実情です。
契約から工事完成まで期間が長い現場もありますよね。契約時の資材価格と、実際に使う時の資材価格がズレる。このタイムラグも、価格転嫁を難しくしている一因です。
その差額を誰が負担するのか。声を上げなければ、下請け側が黙って被ってしまいがちなのが、これまでの構造でした。
【武器①】改正建設業法(2025年12月全面施行)で、価格転嫁はこう変わった
2024年に成立した改正建設業法(第三次担い手三法)は、段階的に施行が進んできました。
そして2025年(令和7年)12月、価格転嫁・労務費に関するルールがいよいよ全面施行されています。

下請け企業にとって特に重要な3つのポイントを紹介します。
① 標準労務費——「買いたたき」を防ぐ物差しができた
中央建設業審議会が、労務費の目安となる基準(「標準労務費」とも呼ばれます。正式名称は「労務費に関する基準」)を作成・勧告できるようになりました。
労務費が不当に安く買いたたかれないようにするための、いわば"物差し"です。
「相場よりかなり安い金額」を主張された時、この基準が交渉の拠り所になります。
② 著しく低い労務費の禁止——注文者にもペナルティが
著しく低い労務費での見積り・見積り変更を依頼することが、禁止されました。
違反した注文者(発注者)は、勧告・公表の対象になります。
なお、依頼する側(注文者)だけでなく、受ける側(受注者)も、著しく低い労務費で安請け合いをすると、国の指導・監督の対象になり得ます。制度は、片方だけでなく双方に規律を求めているということです。
③ 資材高騰の「変更協議」——値上げの手順が契約書に明記される
今回、実務に一番効いてくるポイントかもしれません。
改正法により、請負代金の「変更方法」を契約書に書いておくことが、必ず定めるべき項目(法定記載事項)の一つになりました。
さらに、受注者(下請け側)には「おそれ情報」という仕組みも整いました。資材が値上がりしそうだという見通しを、契約の前に注文者へあらかじめ伝えておけるものです。
実際に資材が高騰したら、受注者は請負代金や工期の変更協議を申し出ることができます。注文者側には、誠実に協議へ応じることが求められます。
つまり「言い出しにくいから我慢する」から、「契約書に書かれた手順に沿って、協議を申し出る」に変わったということです。
【武器②】不当に低い請負代金の禁止——実は前からあった盾
建設業法には、以前から「不当に低い請負代金」を禁じる規定もあります。
注文者が自分の立場の強さを利用して、工事に通常必要な原価にも満たない金額で契約を結ばせる。これを禁じるルールです(国土交通省・建設業法令遵守ガイドライン)。
武器①の「著しく低い労務費」の禁止と、この「不当に低い請負代金」の禁止。両方とも、法律違反になり得ると知っているだけで、交渉に臨む心構えは変わってくるはずです。
明日から何をすべきか——資材高騰への実務対策3ステップ
制度を知っただけでは、現場は変わりません。具体的に動きましょう。📋

ステップ1:契約書・見積書に「変更方法」を書く
新しく契約を結ぶ時は、資材価格が変わった場合の請負代金の見直し方法を、契約書にあらかじめ盛り込んでおきましょう。
ステップ2:「おそれ情報」を書面で伝える
「今後、鋼材価格が上がりそうです」など、値上がりの可能性は口約束でなく書面で伝えておきます。あとで「言った・言わない」にしないためです。
ステップ3:資金繰り・補助金もあわせて考える
価格転嫁の交渉には、時間がかかることもあります。その間の資金繰りも大切な備えです。
中東情勢の影響を受ける建設業向けには、セーフティネット保証5号という資金繰り支援の制度があります。
また、資材費・労務費の負担そのものを圧縮する方向として、省力化・IT化の設備投資補助金も選択肢になります。
資金繰りが安定すると、経審(経営事項審査=公共工事の入札に必要な評価)の点数にも良い影響が出ることがあります。公共工事の入札を考えている方は、あわせてチェックしてみてください。
公共工事そのものが初めてで、経審の進め方から知りたい方は、経審のやり方(決算変更届から入札参加までの一気通貫ロードマップ)もあわせてご覧ください。
行政書士ができること・できないこと——業際を正直にお伝えします
ここまで読んで「じゃあ、うちの交渉も手伝ってもらえますか?」と思われたかもしれません。正直にお伝えします。
行政書士ができるのは、次のようなサポートです。
- 契約書・見積書など、書類の作成・整備
- 改正建設業法などの制度の理解サポート
- 資金繰り・補助金をあわせた複合的なご提案
たとえば、契約書に「変更方法」の条項を入れる、おそれ情報を伝える通知書のひな形を整える——といった実務です。
一方で、元請けとの個別の価格交渉を代理すること、揉め事になっている交渉を代行することは、行政書士の業務範囲を超えます。これは弁護士の専門領域(弁護士法72条)にあたるためです。
「代わりに交渉します」とは言えません。ここは正直にお伝えしておきたいところです。その代わり、交渉の土台となる書類づくりや制度の理解は、しっかりお手伝いできます。
まとめ——「言い出せない」を「言える」に変える一歩を
資材高・燃料高は、簡単には収まりそうにありません。でも2025年12月の改正建設業法で、価格転嫁のための武器は確かに増えました。
- 標準労務費(労務費に関する基準)という物差し
- 著しく低い労務費・不当に低い請負代金の禁止
- 「変更協議」という正式な手続き
これらを知っているだけで、交渉に臨む姿勢は変わってくるはずです。
「うちの契約書、このままで大丈夫かな」
「おそれ情報って、どう書けばいいんだろう」
そう思われたら、まずは一度お話を聞かせてください。📢

資材高の価格転嫁、契約書の整備、資金繰り・補助金のご相談を承っています。
やさしい行政書士事務所では、契約書・見積書の整備から、資金繰り・補助金とあわせた複合的なご提案まで、無料相談で対応しています。「建設業のブログを見た」とお伝えいただくとスムーズです。「聞くだけ」でも大丈夫です。😊
やさしい行政書士事務所(代表行政書士 宮本 雄介)
📞 電話:0463-57-8330
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・帝国データバンク「建設業」の倒産・休廃業解散動向(2026年上半期):https://www.tdb.co.jp/report/industry/20260714-kensetsu26y1-6/
・帝国データバンク「物価高倒産」の動向(2026年上半期):https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260707-inflationbankruptcy2606/
・国土交通省「建設業法・入契法改正(令和6年法律第49号)について」:建設業法・入契法改正のページ
・国土交通省「建設業法令遵守ガイドライン(第12版)」:建設業法令遵守ガイドライン
※本記事は2026年7月時点で確認できる公開情報をもとに、代表行政書士 宮本 雄介が執筆・監修しています。建設業法・補助金・融資制度は改正や更新が頻繁にあります。実際のご契約・お手続きにあたっては、最新の一次情報のご確認、または専門家への個別相談をおすすめします。