「経審の点数を上げたいけれど、W点(社会性等)って何を見られていて、どう計算されるの?」
この記事では、その疑問に順番にお答えします。😊
結論から言うと、W点は「会社の社会的な信頼度」を点数化したもので、総合評定値(P点)の15%を占めます。
そして、建退共への加入やCCUSの導入など、要件を満たせば加点される項目が多いのが特徴です。
さらに2026年7月1日にW点が改正され、評価項目(社会保険3項目の削除・自主宣言の追加など)と最低点が変わりました(施行済み)。現在の申請はすべて新しい基準で審査されます。仕組みを知っておくと、ムダなく点数を伸ばせます。
📢 この記事のいちばん大事なポイント
2026年7月1日の改正で基準が切り替わりました(施行済み)。
現在の申請は、すべて新しい基準で審査されます。2026年6月30日までに申請された分は、改正前の基準で審査されています(神奈川県の手引き 令和8年7月1日版より)。
目次
経審の「W点(社会性等)」とは?
経営事項審査(経審)の最終的な点数=総合評定値(P点)は、5つの評価項目を合算して計算されます。
P点 = 0.25×X1 + 0.15×X2 + 0.20×Y + 0.25×Z + 0.15×W
- X1:完成工事高(会社の売上規模)
- X2:自己資本額・利益(会社の体力)
- Y:経営状況(財務の健全性)
- Z:技術力(技術者数・元請工事高)
- W:その他の審査項目(社会性等)← この記事のテーマ
💡 ここがポイント
W点は「人を育てているか」「災害時に協力する体制があるか」「退職金など職人を守る制度があるか」など、会社の“社会性”を評価する項目です。
売上や利益と違い、次の決算日(審査基準日)までに手続きや制度導入を済ませておけば、その決算期の経審から点数に反映できるのがW点の強みです(多くの項目は審査基準日の時点の状況で評価されます。ただしCCUSは、審査基準日以前1年に元請で契約した対象工事の全てで措置を実施していることが条件のため、期の途中から始めると、その決算期の経審では対象にならないことがあります)。
W点の計算の仕組み
W点は、次の流れで計算されます。
① 各項目(建退共、CCUS、防災協定など)ごとに点数がつく
↓
② すべての項目を合計して「素点」を出す
↓
③ 素点を一定の係数で換算して「W評点」にする
↓
④ そのW評点が、P点に 0.15(15%) のウェイトで反映される
神奈川県の令和8年度の基準では、W評点の最高点は2,073点(改正の前後で変わりません)。最低点は2026年7月1日の改正で▲1,837点から▲788点に引き上げられました(社会保険3項目の減点が廃止されたことなどによるものです)。
注目してほしいのは、W点には“マイナス”があること。
たとえば審査対象の事業年度に建設業法第28条の処分(指示処分・営業停止処分)を受けた場合や、民事再生・会社更生の手続中(平成23年4月1日以降の申立てで開始の決定を受け、終結の決定を受けていない場合)は減点され、P点全体を押し下げてしまいます。😿(改正前は、加入義務があるのに社会保険に未加入だと減点されましたが、2026年7月1日の改正でこの評価項目は削除されました。ただし、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の適用事業所に当たる場合、その届出は建設業許可の要件です)
⚠️ 注意
W点を上げる前に、まず足元を固めるのが先決です。社会保険は、適用事業所に当たる場合の届出が建設業許可の要件(適用事業所なのに未加入なら経審以前の問題)、法令違反などのマイナス要素は加点策よりも影響が大きいことがあります。
※配点や計算式の詳細は改正で変わります。最新の配点は管轄の行政庁・手引きでご確認ください。
W点を構成する評価項目【一覧】
W点は、大きく次のグループで構成されています(神奈川県・社会性等の申請書の項番をもとに整理)。
建設業退職金共済(建退共)/退職一時金・企業年金/法定外労災補償
※雇用保険・健康保険・厚生年金の加入状況は、令和8年7月1日の改正で評価項目から削除されました。
若年技術者の育成(35歳未満が15%以上)/新規若年者/CPD単位/技能レベル向上/えるぼし・くるみん・ユースエール認定
CCUS(就業履歴の蓄積)/建設技能者を大切にする企業の自主宣言(宣言の有無・2026年7月の改正で追加)/営業年数/民事再生・会社更生の有無
防災協定の締結/法令遵守の状況
監査の受審/公認会計士等・建設業経理士/研究開発費
建設機械の保有/エコアクション21/ISO9001・ISO14001
こうして見ると、「会社としてあたりまえに整えていくこと」がそのまま点数になるのがW点だとわかります。
【重要】2026年7月1日のW点改正で何が変わる?
神奈川県の手引き(令和8年7月1日版)によると、令和8年(2026年)7月1日以降の申請(受付)から、W点まわりは次のように変わりました(施行済み)。
・雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入状況の評価項目を削除
・「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の宣言の有無(項番52)を評価項目に追加(審査基準日の時点で宣言していることが必要)
・これにあわせて、CCUS(就業履歴を蓄積するための措置・項番51)の配点を見直し
・加点対象の建設機械に、アスファルト・フィニッシャと不整地運搬車を追加(項番62)
・W点の最低点は▲1,837点から▲788点へ、P点の最低点は6点から163点へ引き上げ
🗓️ 切り替えのタイミング
・2026年6月30日までの申請 → 改正前の基準で結果通知
・2026年7月1日以降の申請 → 新しい基準で結果通知(現在はこちら)
すでに新しい基準の適用が始まっています。これから経審を受ける方は、新基準での加点・減点を前提に、決算変更届や必要書類を早めに整えておきましょう。
改正前の基準で結果通知を受けた会社は、令和8年10月28日までに限り、①自主宣言の有無(あわせてCCUSの加点配分の見直し)②新たに対象となった建設機械(アスファルト・フィニッシャ、不整地運搬車)③技術職員コード「703」「704」で加点対象となる業種の追加、の3つについて無料で再審査を申し立てられます(神奈川県「経営事項審査の事務取扱いについての改正に伴う再審査について」)。申し立てられるのは、その時点で審査基準日から1年7か月以内の経審に限られ、再審査を受けなくても改正前の経審は有効です。詳しくは 経審はやり直しできる? で整理しています。
判断に迷うときは、お問い合わせからお気軽にご相談ください。
改正の詳しい内容は 経審W点改正(2026年7月施行)の解説記事 でも紹介しています。
手引きが挙げる変更点6つ(W点以外の変更も含みます)の一覧は、神奈川県の経審(経営事項審査)完全ガイドの「令和8年7月1日版の主な変更点」にまとめています。
W点を上げる5つの具体策
その前に、社会保険について1点だけ。雇用保険・健康保険・厚生年金保険は、2026年7月1日の改正でW点の評価項目から削除されたため、加入してもW点は上がりません。ただし、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の適用事業所に当たる場合、その届出は建設業許可の要件です(建設業法施行規則第7条第2号)。点数とは別に、まずここが整っているかを確認しておきましょう。
① 「建設技能者を大切にする企業の自主宣言」を行う(2026年7月の改正で追加された評価項目)
2026年7月1日の改正で、「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の宣言の有無(項番52)がW点の評価項目に加わりました。審査基準日の時点で宣言していることが必要で、申請のときに誓約書(様式第7号)と、宣言していることを証する書面(宣言書)の写しを出します。
宣言のしかたは 職人いきいき宣言(自主宣言)で経審加点 で解説しています。
② 建退共・退職金・法定外労災で“人を守る体制”を示す
建設業退職金共済(建退共)、退職一時金または企業年金、法定外の労災補償。
要件を満たして加入・導入していれば、加点になります(建退共は契約上の義務を正しく履行していること、退職一時金は原則として建設業に従事する全ての従業員を対象にしていること、法定外労災は下請の職員まで含めて補償の対象にしていることなど)。
元請・下請の間でよく話題になる建退共の「辞退届」の扱いは、建退共の「辞退届」、元請に言われたけど出していいの?様式第6号での正しい答え方で解説しています。
③ CCUS(建設キャリアアップシステム)で就業履歴を蓄積する
審査基準日以前1年に元請として請け負った工事のうち、対象となる工事の全て(民間を含む全ての建設工事、または全ての公共工事)で、CCUSに就業履歴を蓄積する措置(現場・契約情報の登録と、カードリーダー等で蓄積できる体制づくり)を実施すると加点対象になります。一部の工事だけでは対象になりません。なお、2026年7月1日の改正で、自主宣言の評価項目の追加にあわせて配点が見直されています。
これからの建設業で重視される項目で、早めの導入がおすすめです。
📖 あわせて読みたい:経審のCCUS加点とは|何点上がる・3つの要件
④ 若手の育成・資格・働き方で伸ばす
35歳未満の技術者の割合(15%以上)、新規の若手、CPD単位の取得、技能レベルの向上、えるぼし・くるみん等の認定。
「人を育てる会社」であることが評価されます。
CPD単位を証する書面をどこでもらうか、様式第4号(CPD単位を取得した技術者名簿)の書き方は「経審のCPD証明書はどこでもらう?様式第4号の書き方【神奈川版】」で解説しています。
⑤ 防災協定・経理・規格認証で土台を固める
行政機関等との防災協定の締結、建設業経理士(1級・2級。合格または登録経理講習の受講の翌年度の開始日から5年以内の人)の常勤や監査受審、ISO9001・ISO14001やエコアクション21の取得。
中長期で取り組むと、安定した加点になります。
W点が上がると、受注はどう変わる?
W点が上がるとP点(総合評定値)が上がります。
P点が上がると、公共工事の入札参加資格の「格付け(等級)」が上がりやすくなります。
つまり、等級が上がればこれまで参加できなかった規模の公共工事に入札できる可能性が広がる——これがW点対策の最終的なメリットです(入札参加資格の認定と等級の格付けは、経審とは別に各発注者が行います)。😊
関連記事もあわせてどうぞ。
・経審の点数(P点)の上げ方|原因と加点策
・決算変更届を出し忘れるとどうなる?
・建設業の手続き解説(記事一覧)
よくある質問(FAQ)
Q. W点だけ上げればP点は上がりますか?
A. W点はP点の15%なので、W点アップはP点アップに直結します。ただし完成工事高(X1)や技術力(Z)などとあわせて取り組むと効果的です。
📖 あわせて読みたい:経営事項審査の点数(P点)計算方法
Q. 改正で有利・不利はどう変わりますか?
A. 会社の状況によります。今回の改正の中心はW点の評価項目と配点で、決算内容に関わる変更はありません。たとえば、改正前に社会保険の減点を受けていた会社(加入義務があるのに未加入だった会社)は、7月1日以降の申請ではその減点がなくなりました。一方で、CCUSで加点を受けていた会社は、CCUSの配点が引き下げられたため、自主宣言をしていないと改正前より点数が下がることがあります。また、アスファルト・フィニッシャと不整地運搬車は、新たに建設機械の加点の対象になりました。気になる方は一度ご相談ください。
Q. 何から手をつければいいですか?
A. まず、社会保険の届出(適用事業所に当たる場合は建設業許可の要件)ができているかを確認し、次にCCUSや建退共など、要件を満たせば加点される項目から進めるのがおすすめです。
📖 あわせて読みたい:改正への対策として何から手をつけるかは 経審改正の対策チェックリスト|中小企業は何から? で整理しています。
まとめ:W点は“準備した分だけ”上がる
W点(社会性等)は、建退共・退職金・法定外労災といった人を守る体制、CCUS、防災協定、規格認証など、会社の取り組みがそのまま点数になる項目です。なお、雇用保険・健康保険・厚生年金は2026年7月1日の改正でW点の審査項目から削除されました(適用事業所に当たる場合、その届出は建設業許可の要件です)。
2026年7月1日の改正で基準が切り替わりました。これから受ける方には、新しい基準がそのまま適用されます。
「うちは何点上げられる?」——そんなときは、決算書をお見せいただき、あわせて建退共・CCUS・防災協定などの取組状況をお知らせいただければ、W点・P点の見通しをお伝えします。
経審のもう一つの主要指標「Y点(経営状況分析)」の上げ方は、経営状況分析のY点とは?上げ方には「効く順番」があるで解説しています。
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【執筆・監修】やさしい行政書士事務所 代表行政書士 宮本 雄介(神奈川県行政書士会所属・登録番号 第12082434号)
建設業許可・経営事項審査・公共工事入札を専門に対応しています。→ 事務所・代表者プロフィール
※本記事は2026年9月時点の情報(令和8年7月1日施行の改正後の基準・神奈川県の手引き 令和8年7月1日版)に基づく一般的な解説です。経営事項審査の配点・計算方法・改正内容は変更される場合があります。実際の申請にあたっては、管轄の行政庁および最新の手引きを必ずご確認ください。個別の判断については当事務所までご相談ください。