建設業

経営状況分析のY点とは?上げ方には「効く順番」がある|8指標の寄与度と3分セルフ診断【神奈川・建設業】

経営状況分析のY点の上げ方には順番がある|やさしい行政書士事務所

経審の結果通知書を開いて、Y点のところで止まってしまった。

「うちだけ、ここが低い気がする」
「でも、決算はもう終わっている。今さら何ができるんだ」

——そう思って、そのまま1年放置してしまう。これがいちばん、もったいないパターンです。

Y点(経営状況分析の評点)は、8つの指標から機械的に計算されます。つまり「どこを触れば何点動くか」が、あらかじめ決まっているということです。

しかも、8つの指標は平等ではありません。影響力の大きい4つで、Y点のおよそ8割が決まります。

この記事では、Y点のしくみと、手をつける順番を、行政書士がやさしく整理します。決算書さえあれば3分でできるセルフ診断もつけました。😊

経営状況分析のY点とは?——決算書だけで決まる、経審の「財務の点数」

経審(経営事項審査)は、国や地方公共団体などが発注する工事のうち、1件500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)のものを、発注者から直接請け負うために必要な、会社の通信簿です。

📋 法律の言い方だと「公共性のある施設又は工作物に関する建設工事で政令で定めるもの」(建設業法第27条の23第1項)。その「政令で定めるもの」の中身が、上の発注者+金額の条件です(建設業法施行令第45条)。堤防の決壊や道路の埋没などによる応急の建設工事は除かれます(同条第1号)。

その通信簿は、大きく5つの点数でできています。

  • X1:完成工事高(業種別の売上)
  • X2:自己資本額・利払前税引前償却前利益
  • Y経営状況(=この記事のテーマ)
  • Z:技術力(元請完成工事高・技術職員数)
  • W:その他の審査項目(社会性等)

このうちY点は「決算書の数字だけ」で決まります。技術者の人数も、CCUSも、防災協定も関係ありません。純粋に財務です。

正確にいうと、X2(自己資本額・利払前税引前償却前利益)も決算書から機械的に決まります。ただしX2が見ているのは会社の規模です。決算書の「中身の良し悪し」を8つの指標で評価するのはY点だけ。だからY点は、会社を大きくしなくても動かせます。

Y点は最高1,595点・最低0点。P点への効き目は20%

神奈川県の手引きに、審査項目ごとの上限・下限・ウェイトが載っています。

経審P点の内訳とY点の位置づけ。Y点は最高1,595点・最低0点・ウェイト0.20で、P点への貢献は最大319点
項目 内容 最高点 最低点 ウェイト
X1完成工事高(許可業種別)2,3093970.25
X2自己資本額・利払前税引前償却前利益2,2804540.15
Y経営状況1,59500.20
Z技術力2,4414560.25
Wその他の審査項目(社会性等)2,073−7880.15

💡 総合評定値 P=0.25×X1+0.15×X2+0.20×Y+0.25×Z+0.15×W

出典:神奈川県『経営事項審査の手引き 令和8年7月1日版』第1分冊 P.3
※Wの最低点は令和8年7月1日以降の申請から −1,837 → −788 に変わりました。同時にPの最低点も 6 → 163 に変更されています。

ここで大事なのはウェイト 0.20です。

Y点が1,595点(満点)なら、P点への貢献は1,595 × 0.20 = 319点
Y点が0点なら、その319点がまるごとゼロになります。

X1やZは、会社の規模や技術者の人数で決まるので、そう簡単には動きません。同じくらいの規模の会社どうしで差がつきやすいのが、実はY点なのです。

📚 書籍『建設業経営事項審査制度の実務と究極的評点アップ対策』第4章 p.353 は、中小建設業者どうしでは経営状況の評点に500点程度の差が出ることがあり、これは総合評定値に直すと100点程度の差になる、と指摘しています。

P点で100点の差。等級(ランク)が1つ動いてもおかしくない幅です。

誰が計算する?——県ではなく「登録経営状況分析機関」

ここでつまずく方が多いので、先に整理します。経審は、2か所に申請します。

  1. 経営状況分析(Y) → 国土交通大臣の登録を受けた登録経営状況分析機関(民間)へ
  2. 経営規模等評価(X・Z・W)と総合評定値(P)の請求神奈川県

総合評定値(P)まで取るなら、順番は入れ替えられません。先に①を申請して「経営状況分析結果通知書」を受け取り、その原本を②に添付します。結果通知書がないと、総合評定値(P)の請求そのものができません(神奈川県手引き 第1分冊 P.8)。

⚠️ Pを請求せず、経営規模等評価(X・Z・W)だけを申請する場合は、分析結果通知書の添付は不要です。ただし入札参加資格ではPを求められるのが通常です。

「県に経審を出しに行ったのに受け付けてもらえなかった」——原因の多くが、これです。

👉 経審の全体の流れは 経審のやり方を最初から全部。決算変更届から入札参加までの一気通貫ロードマップ にまとめています。

Y点はどう計算される?——8つの指標 →「経営状況点数(A)」→ Y点

Y点は、2段階で計算されます。

【第1段階】8つの指標から「経営状況点数(A)」を出す

経営状況点数(A) =
 -0.4650×(x1) -0.0508×(x2) +0.0264×(x3) +0.0277×(x4)
 +0.0011×(x5) +0.0089×(x6) +0.0818×(x7) +0.0172×(x8)
 +0.1906

【第2段階】AをY点に換算する

経営状況評点(Y) = 167.3 × 経営状況点数(A) + 583

(出典:同書 第4章。「経営状況点数(A)」という呼び方は、経営状況分析結果通知書=建設業法施行規則 様式第二十五号の十 の記載欄によります)

式そのものを覚える必要はまったくありません。覚えてほしいのは「x1の前だけマイナスが大きい」という一点です。純支払利息は、Y点を最も強く押し下げます。

計算式は全国共通。だから「どの機関に出しても点数は同じ」

よくいただく質問です。「分析機関を変えたら点数が上がりますか?」

上がりません。経営事項審査の項目と基準は、中央建設業審議会の意見を聴いたうえで国土交通大臣が定めることになっています(建設業法第27条の23第3項)。つまり指標も計算式も全国共通です。同じ内容の財務諸表を出す限り、どの機関でも評点は同じになります。

機関ごとに違うのは、手数料・処理日数・サポート内容です。神奈川県の手引き(第2分冊 P.109)には、次の10機関が掲載されています。

登録番号 機関の名称
1(一財)建設業情報管理センター
2㈱マネージメント・データ・リサーチ
4ワイズ公共データシステム㈱
5㈱九州経営情報分析センター
7㈱北海道経営情報センター
8㈱ネットコア
9㈱経営状況分析センター
10経営状況分析センター西日本㈱
11㈱NKB
22㈱建設業経営情報分析センター

最新の一覧と手数料は、国土交通省の登録経営状況分析機関一覧と各機関のホームページでご確認ください。

8つの指標と「寄与度」の一覧

Y点への影響力を「寄与度」といいます。ここが今日いちばんの本題です。

経営状況分析8指標の寄与度。純支払利息比率29.9%、総資本売上総利益率21.4%、自己資本比率14.6%、負債回転期間11.4%で合計77.3%
属性 記号 指標 寄与度 計算のしかた 上限値 / 下限値 ざっくり言うと
負債抵抗力x1純支払利息比率29.9%(支払利息−受取利息配当金)÷売上高×100−0.3% / 5.1%売上に対して利息をいくら払っているか
負債抵抗力x2負債回転期間11.4%(流動負債+固定負債)÷(売上高÷12)0.9か月 / 18.0か月借金が月商の何か月分あるか
収益性・効率性x3総資本売上総利益率21.4%売上総利益÷総資本(2期平均)×10063.6% / 6.5%粗利をどれだけ稼げているか
収益性・効率性x4売上高経常利益率5.7%経常利益÷売上高×1005.1% / −8.5%売上に対する経常利益の割合
財務健全性x5自己資本対固定資産比率6.8%自己資本÷固定資産×100350.0% / −76.5%固定資産を自己資本でどれだけ賄えているか
財務健全性x6自己資本比率14.6%自己資本÷総資本×10068.5% / −68.6%総資本のうち自分のお金の割合
絶対的力量x7営業キャッシュ・フロー5.7%営業キャッシュ・フロー÷1億円(2年平均)15.0億円 / −10.0億円本業で現金を稼げているか
絶対的力量x8利益剰余金4.4%利益剰余金÷1億円100.0億円 / −3.0億円過去の利益がどれだけ残っているか

出典:国土交通省 関東地方整備局『経営規模等評価申請・総合評定値請求の手引き』〔3〕Y(経営状況分析)表4。寄与度・上限値・下限値も同表による

色をつけた4つを足すと29.9+21.4+14.6+11.4 = 77.3%
寄与度ベースでは、この4つだけで77.3%(=8割近く)を占めます。

📌 数え方の注意:出典書籍が「4つの指標だけで7割近くが決まる」と書いているのは、属性でまとめた4つ(負債抵抗力の x1・x2 + 収益性・効率性の x3・x4 = 68.4%)のことです。本記事の「上位4つで77.3%」は、寄与度の大きい順に並べた4つ(x1・x3・x6・x2)。同じ表の数字を、違う切り方で足しているだけです。

上げ方には順番がある——寄与度の大きい順に手をつける

「Y点を上げたい」と相談を受けたとき、私たちが最初に見るのはここです。全部を同時に良くするのは無理なので、効く順にやります。

Y点対策の効く順番。①純支払利息比率29.9%、②総資本売上総利益率21.4%、③自己資本比率14.6%、④負債回転期間11.4%

💡 P点全体(X1・X2・Z・Wを含む)でどこから手をつけるかは 経審の点数の上げ方|P点が低い原因と加点策 にまとめています。この記事は、そのうちY点だけを指標レベルまで掘り下げたものです。

① 純支払利息比率(寄与度29.9%)——最優先

売上高に対して、実質的にいくら利息を払っているか。Y点を動かす力が突出しています。

  • 上限値(これ以上良くしても加点なし):−0.3%
  • 下限値(これ以上悪くしても減点なし):5.1%

下限の5.1%というのは、売上1億円の会社で年510万円(およそ500万円)の純支払利息を払っている状態です。書籍は「企業の存続を危うくする異常な状態」と表現しています。

打ち手(同書 第4章より)

  • 使っていない定期預金・積立を解約して、借入金を一括返済する
  • 遊休の土地・有価証券を売って、その資金を返済に充てる
  • 過剰在庫を適正化して、浮いた資金を返済に充てる
  • 公的資金など低金利への借り換えで、支払利息そのものを減らす
  • 支払利息に「手形売却損(手形割引料)」が混ざっていないか確認する(現在の建設業財務諸表では、手形売却損は支払利息に含めません)
  • 信用保証協会の保証料を全額その期の支払利息に入れていないか確認する(翌期以降に対応する分は前払費用へ)

最後の2つは、お金を1円も動かさずに数字が直るタイプです。まずここを見てください。

⚠️ ただし、資金繰りを犠牲にしてまで返済を優先するのは本末転倒です。借り方そのものの整理は 建設業の資金繰りが苦しい|その借り方、許可と経審の点数まで削っています をご覧ください。

② 総資本売上総利益率(寄与度21.4%)——粗利で稼ぐ

売上総利益(粗利)を、総資本(2期平均)で割ったものです。

  • 上限値:63.6% / 下限値:6.5%
  • ※総資本の2期平均が3,000万円に満たない場合は、3,000万円とみなして計算します

打ち手は2方向あります。

ア.総資本(=総資産)を減らす
固定預金の解約、過剰在庫の圧縮、遊休資産の処分、仮払金などの通過勘定を放置せず正しい科目に振り替える、減価償却を実施する(ただし赤字になるなら他の指標が悪化するので要注意)。

イ.売上総利益(粗利)を増やす
実行予算を組む、積算ミスをなくす、材料の重複・過剰仕入れをなくす、工程管理を徹底して手待ちと余分な人員投入を防ぐ。

「売上を増やす」ではなく「粗利率を上げる」が正解です。外注費が同じだけ増える売上では、この指標は動きません。

③ 自己資本比率(寄与度14.6%)——会社の体力

自己資本(純資産合計)÷総資本。総資本のうち、返さなくていいお金がどれだけあるか、です。

マイナス=債務超過。Y点が大きく沈むうえ、金融機関の融資審査でも不利に働き、新規の借入が難しくなることがあります。打ち手は、利益を出して利益剰余金を積み増すこと。そして増資です。

💡 中小建設業でよく検討されるのが「社長からの借入金を資本金に振り替える(DES=デット・エクイティ・スワップ)」。負債が減って自己資本が増えるので、③自己資本比率と④負債回転期間に直接効きます。

ただし、効く範囲は正確に押さえてください。

  • ②総資本売上総利益率には効きません。総資本=負債+純資産の合計なので、負債から純資産へ振り替えても総資本は変わらないからです。
  • ①純支払利息比率は、その借入金に利息を付けていた場合だけ効きます。無利息の役員借入なら、もともと支払利息が発生していないので動きません。

⚠️ 実行の前に。時価評価・債務免除益・株式評価の上昇による贈与税といった税務上の論点は顧問税理士へ、資本金の額の変更登記は司法書士へご相談ください(登記手続の代理は行政書士の業務ではありません)。当事務所がお手伝いできるのは、経審・決算変更届の側から「その処理で数字の見え方がどう変わるか」を確認する部分です。書籍(同書 第4章)も、時価評価・債権免除益・贈与税の3点に注意するよう促しています。

【2025年7月から】「資本性借入金」は自己資本とみなせる

役員借入のDESとは別に、金融機関からの借入でも自己資本とみなせる制度が経審に入りました。令和7年(2025年)7月1日以降の経営状況分析の申請から使えます(審査基準日が令和7年3月31日以降・単独決算の申請者に限ります)。

一定の要件を満たす借入金は、負債から差し引き、自己資本に足して計算できます。効くのはここです。

  • ④負債回転期間(負債から控除)
  • ③自己資本比率(自己資本に加算)
  • 自己資本対固定資産比率(自己資本に加算)
  • 経営規模等評価の X2 自己資本額(加算)

要件は5つすべてを満たすこと。①償還期間が5年超 ②期限一括償還 ③配当可能利益に応じた金利設定(業績連動型が原則) ④法的破綻時の劣後性の確保 ⑤貸出主が金融機関(政府系を含む)であること、または日本政策金融公庫の挑戦支援資本強化特例制度など、通知の別紙に挙げられた制度による借入であること。

⚠️ ⑤があるので、社長個人からの借入はこの制度の対象外です。そこは前項のDESの話になります。

なお、残存期間が5年未満になると、1年ごとに20%ずつ自己資本とみなす部分が減っていきます。

手続は、公認会計士・税理士・建設業経理士1級などが指定様式の「資本性借入金」該当証明書を作成し、経営状況分析申請書の余白に金額を書いて、証明書と契約書の写しを分析機関へ提出。経営規模等評価では、項番17の自己資本額にその金額を含めて記載し、証明書の写しを添えます。

出典:国土交通省 国不建第41号「資本性借入金に係る経営事項審査の事務取扱いについて」令和7年6月25日、および同概要資料

④ 負債回転期間(寄与度11.4%)——借金は月商の何か月分か

(流動負債+固定負債)÷平均月商。要は「負債月商倍率」です。上限値は0.9か月、下限値は18.0か月

書籍は、負債のうち借入金に絞って見る「正味借入金月商倍率」という考え方を紹介し、平均月商の3か月以内(2か月なら良好、3か月が許容範囲)を経営指導の目安、6か月を超えると倒産のシグナルとしています。

打ち手は①とほぼ同じで、負債そのものを減らすことです。

なお書籍は、資金ができたらまず流動負債から充てると流動比率が上がって短期の資金繰りが好転する、としています(同書 第4章)。ただし返済の優先順位は一律ではありません。負債回転期間の分子は「流動負債+固定負債=負債合計」なので、流動と固定のどちらを先に減らしてもY点への効き方は同じです。実際には借入条件・買掛金や未払金の支払サイト・手元資金への影響で決まります。金融機関や顧問税理士と確認しながら進めてください。

決算書だけでできる「3分セルフ診断」

決算書を1部お手元に置いて、電卓を4回叩いてください。下限値に張り付いている指標が、あなたの会社の伸びしろです。

決算書でできる3分セルフ診断。純支払利息比率5.1%以上、負債回転期間18.0か月以上、総資本売上総利益率6.5%以下、売上高経常利益率−8.5%以下が下限ライン
見るところ 計算 🚨 下限(=伸びしろ最大) ✅ 上限(=これ以上は加点なし)
損益計算書(支払利息−受取利息配当金)÷売上高×1005.1%以上−0.3%以下
貸借対照表+損益計算書負債合計÷(売上高÷12)18.0か月以上0.9か月以下
損益計算書+貸借対照表売上総利益÷総資本(2期平均)×1006.5%以下63.6%以上
損益計算書経常利益÷売上高×100−8.5%以下5.1%以上

上限値・下限値の出典:同書 第4章 各指標の算出式

🚨側に1つでも当てはまったら、そこが最優先です。

逆に、すでに✅側に振り切っている指標を、さらに磨いても1点も増えません。ここを知らずに頑張ってしまう会社が、本当に多いのです。

なお、下限値があるということは「赤字というだけでY点がゼロになるわけではない」ということでもあります。落ち込みは下限で止まります。悲観せず、次の決算に向けて手を打ってください。

Y点は、神奈川の等級(ランク)にどう響くか

「Y点を上げると、何が変わるんですか?」——最後はここに行き着きます。計算はシンプルです。

  • Y点が100点上がる → P点は100 × 0.20 = 20点上がる
  • Y点が500点上がる → P点は100点上がる

そして入札の等級(ランク)は、客観点(=経審P点)+主観点で決まります。P点で100点動けば、等級が1つ動く可能性は十分にあります。

ただし注意点があります。等級の基準は、発注機関ごと・年度ごとに違います。神奈川県でAランクでも、横浜市で同じとは限りません。

👉 業種別の格付けラインと等級の読み方は 入札参加資格の等級(ランク)とは?経審点数との関係と上げ方 で詳しく解説しています。
👉 P点全体の伸ばし方は 経営事項審査の点数(P点)計算方法|どこを上げれば伸びる? をどうぞ。

見落とされがち:Y点は「建設業財務諸表」で決まる

ここが、実務でいちばん差がつくところです。

分析機関に出すのは、税理士さんが作った決算書そのものではありません。建設業法の様式に組み替えた「建設業財務諸表」です。組み替えの段階で、たとえばこんなことが起きます。

  • 兼業(建設以外)の売上を完成工事高に混ぜてしまう → 完成工事高がふくらみ、消費税の課税標準と合わなくなる
  • 仮払金・立替金などの通過勘定を放置している → 総資産(総資本)がふくらみ、寄与度21.4%の総資本売上総利益率が下がる
  • 完成工事原価と販管費の線引きが曖昧 → 売上総利益(粗利)が変わり、寄与度21.4%の指標が動く
  • 課税事業者なのに消費税込みで作ってしまう → 数字が全部ずれる(※免税事業者は税込みで作るのが正しい扱いです)

📋 なお、役員借入金を流動負債に置くか固定負債に置くかは、Y点そのものは動かしません(負債回転期間の分子は「流動負債+固定負債=負債合計」、自己資本比率は「純資産合計÷負債純資産合計」なので、内訳をどちらに寄せても合計は同じだからです)。とはいえ、記載の正確性としては必要ですし、金融機関の見方は変わります。「Y点のために区分を動かす」は無意味、「正しく書く」は必要——ここは分けて考えてください。

神奈川県の手引きも、完成工事高>確定申告書の課税標準となる場合は、兼業売上や雑収入を混ぜていないか、財務諸表が税込みで作られていないかを確認するよう促し、その場合は経営状況分析の申請をやり直すことになると明記しています(第2分冊 P.59)。

ただし、海外工事や米軍等の工事の売上(不課税)が含まれているために差が出ている場合は、当該工事の契約書のコピー等を添付すれば足ります(同)。横須賀・厚木周辺では実際にある類型なので、あわてて出し直さないでください。

👉 出し直しの可否と手順は 経審はやり直しできる?直せるミスと直せないミスの境界線 にまとめています。

組み替えは「点数を作る作業」ではなく「正しく翻訳する作業」です。会社の実態は何ひとつ変えなくても、決算書に出ている数字が経審上できちんと評価されるようになることがあります。

👉 建設業財務諸表の組替えとは?決算書をそのまま出せない理由
👉 決算変更届は自分でできる?必要書類と手順

🚨 念のため申し添えます。財務諸表や申請書に虚偽の記載をして提出した場合、建設業法上、6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処せられます。さらにその刑に処せられると許可が取り消され、その刑の執行を終えた日(または執行を受けることがなくなった日)から5年間は、改めて許可を受けられません(神奈川県手引き 第1分冊「申請における注意点」。手引きが掲げる関係法令=建設業法第28条・第29条・第50条・第52条)。正しい組替えと、粉飾はまったくの別物です。

動くなら、決算日の「前」

Y点対策のタイミング。決算日の前に借入整理・在庫圧縮・増資を済ませる。決算日を過ぎたら次の決算まで効かない

Y点の材料は、審査基準日=決算日の財務諸表です。

決算が締まった後にできるのは、組み替えを正しくすることだけ。借入の整理も、在庫の圧縮も、増資も、決算日を過ぎたら次の決算まで効きません。

そして経審の結果には期限があります。経審が必要な公共工事(1件500万円以上/建築一式1,500万円以上。災害の応急工事などを除く)を発注者から直接請け負えるのは、結果通知書を受け取ったうえで審査基準日から1年7か月の間です(神奈川県手引き 第1分冊)。

決算日 → 決算確定 → 決算変更届 → 経営状況分析 → 経営規模等評価。ここを毎年つなげ続けないと、入札参加資格に空白ができます。

制度として「何か月前まで」という決まりはありません。そのうえで当事務所は、実務上の目安として決算の3か月前からの着手をおすすめしています。今日が決算日の直後なら、次の決算に向けた1年がまるごと使えます。いちばん恵まれた位置にいます。

よくあるご質問(FAQ)

Q. 分析機関を変えれば、点数は上がりますか?
A. 上がりません。指標も計算式も全国共通に定められているため、同じ財務諸表なら結果は同じです。違うのは手数料・処理日数・サポート内容です。

Q. Y点だけ先に取ることはできますか?
A. できます。というより、総合評定値(P)まで取るなら、その順番でしか進みません。先に登録経営状況分析機関へ申請し、「経営状況分析結果通知書」を受け取ってから、神奈川県へ経営規模等評価を申請します。(Pを請求せず経営規模等評価だけを申請する場合は、結果通知書の添付は不要です。)

Q. 赤字だと、Y点はゼロになりますか?
A. 赤字というだけでゼロになることはありません。各指標には下限値があり、落ち込みはそこで止まります。ただし、8つの指標がそろって下限に張り付くような状態になると計算値がマイナスになり、最低点の0点として扱われることはあります。

Q. 総資本が3,000万円に満たない小さな会社は不利ですか?
A. 総資本売上総利益率(x3)は、総資本の2期平均が3,000万円未満の場合、3,000万円とみなして計算されます。その意味では小規模な会社にはやや不利に働きますが、寄与度の大きい純支払利息比率や負債回転期間は規模と関係なく改善できます。

Q. 決算をやり直せばY点は上がりますか?
A. 誤りの是正(勘定科目の振り替えなど、事実に沿った修正)と、粉飾はまったく別です。後者は建設業法上の罰則と許可取消しの対象です。判断に迷ったら、着手前にご相談ください。

Q. W点とY点、どちらから手をつけるべきですか?
A. W点が先に効くことが多いです。加点項目を取るだけで動きますし、決算数値を作り込む必要がないぶん、今日からでも動けます。ただしW点の加点項目も、審査基準日=決算日の時点で要件を満たしている必要があります。「次の決算日までに取り終える」計画で進めてください。Y点は「効くが時間がかかる」対策です。両方の設計は 経審W点の計算方法 とあわせてご検討ください。

まとめ

  • 経営状況分析(Y点)は、決算書だけで決まる経審の財務評価。最高1,595点・最低0点、P点へのウェイトは0.20
  • 申請先は県ではなく登録経営状況分析機関。結果通知書がないとP点の請求ができない
  • Y点は8つの指標から計算され、純支払利息比率(29.9%)・総資本売上総利益率(21.4%)・自己資本比率(14.6%)・負債回転期間(11.4%) の4つで約8割が決まる
  • 手をつける順番は寄与度の大きい順。上限値に届いている指標をさらに磨いても加点はゼロ
  • Y点が500点上がれば、P点は100点上がる。等級が1つ変わる可能性がある幅
  • 材料は決算日時点の財務諸表。動くなら決算日の前
  • そして土台は建設業財務諸表への正しい組替え。粉飾とは別物

📢 経審のY点、ご一緒に見てみませんか

「うちの決算書だと、どこが下限に張り付いているんだろう」

決算書2期分をお持ちいただければ、どの指標が伸びしろなのか、次の決算までに何ができるのかを一緒に確認します。数字を作る話ではありません。正しく評価してもらうための話です。

初回のご相談は無料です。まずは「経審のY点のことで」とだけお伝えください。😊

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秦野市・伊勢原市・平塚市・厚木市・小田原市ほか神奈川県央・県西部に対応

参考・出典

  • 神奈川県『経営事項審査の手引き(令和8年7月1日版)』第1分冊 P.1〜P.3(改正点・審査項目と配点)、P.2(申請における注意点=虚偽記載の罰則)、P.5〜P.6(審査基準日・有効期間)、P.8(申請の手順)/第2分冊 P.59(消費税・完成工事高の確認事項)、P.109(登録経営状況分析機関一覧)
  • 建設業法第27条の23第1項・第3項、建設業法施行令第45条(経営事項審査の対象となる建設工事の範囲/審査の項目・基準は国土交通大臣が定めること)
  • 建設業法施行規則 様式第二十五号の十(経営状況分析結果通知書/「経営状況点数(A)」欄)
  • 『建設業経営事項審査制度の実務と究極的評点アップ対策』第4章「経営状況の評点アップ対策」(8指標・寄与度・算出式・上限値/下限値・評点アップ対策)
  • 国土交通省 関東地方整備局『経営規模等評価申請・総合評定値請求の手引き』〔3〕Y(経営状況分析)表4(8指標の寄与度・上限値・下限値・経営状況点数Aと評点Yの算式)
  • 一般財団法人 建設業情報管理センター(CIIC)『経営状況分析(Y)における指標の算式および意味』
  • 国土交通省 国不建第41号「資本性借入金に係る経営事項審査の事務取扱いについて」(令和7年6月25日)および概要資料
  • 国土交通省「登録経営状況分析機関一覧」

※この記事は2026年9月1日時点の情報に基づいています。制度・様式・配点は改正されることがあります。実際の申請にあたっては、最新の手引きおよび管轄行政庁・登録経営状況分析機関の案内をご確認ください。個別の会計処理については顧問税理士にご相談ください。

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宮本 雄介
やさしい行政書士事務所 代表。行政書士(登録番号 第12082434号/神奈川県行政書士会所属)。2011年に行政書士試験に合格し、2012年に開業。以来1,000件以上の相談に対応してきました。建設業許可・経営事項審査(経審)、補助金、会社設立、在留資格、相続を取り扱い、なかでも建設業の許認可を中心にしています。弁護士事務所・社労士事務所での実務経験と、複数企業の社外取締役の経験を持ち、手続きの代行だけでなく経営の視点からも助言します。神奈川県秦野市を拠点に、県内を中心に全国の事業者をサポートしています。