「来月、現場が2つ重なる。でも監理技術者は1人しかいない」
建設業の許可を持つ会社なら、一度は直面する場面だと思います。
しかも困るのは、「この工事は専任にしてください」と発注者や元請から言われたとき。本当にこの工事は専任が必要なのか、その場で判断できる人は意外と多くありません。
判断を間違えると、建設業法が求める配置を満たさないまま工事を進めることになります。公共工事では、入札の申込前から手を打っておかないと間に合わない要件もあります(後半で説明します)。
📋 この記事でわかること
- そもそも「専任」とは何をさせることなのか(24時間の張り付きではありません)
- 監理技術者の専任が必要になる工事の線引き(3つの質問で判定できます。金額は税込で数えます)
- 1人で2現場まで見られる2つのルートと、その具体的な条件
- 特例を使っても絶対に外せないもの(ここを落とす会社がいちばん多い)
- その備えが、そのまま経審(公共工事の入札に必要な会社の評価)の点数にもつながる話
執筆・監修
やさしい行政書士事務所 代表行政書士 宮本 雄介(神奈川県行政書士会所属/登録番号 第12082434号)
秦野市を拠点に、神奈川県内の建設業者さまから建設業許可・決算変更届・経営事項審査のご相談をお受けしています。
本記事は、e-Gov法令検索で建設業法・同施行令・同施行規則の現行条文を取得し(2026年8月25日確認)、運用は国土交通省「監理技術者制度運用マニュアル」(最終改正 令和7年1月28日 国不建技第147号/令和7年2月1日適用)および「建設業許可事務ガイドライン」により確認したうえで記載しています。経審の区分は神奈川県『経営事項審査の手引き 令和8年7月1日版』第2分冊によります。
「うちは主任技術者と監理技術者、そもそもどう違うんだっけ?」という段階の方は、先に主任技術者とは?専任技術者との違いと4,500万円の専任ラインをご覧ください。この記事は、その先の「配置をどう決めるか」に絞って書いています。
目次
監理技術者の「専任」とは、その現場に張り付かせること
まず言葉を揃えます。
専任とは、ざっくり言えば「他の現場と掛け持ちさせず、その工事現場ごとに1人を置くこと」です。
建設業法26条3項には、こう書かれています。
公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるものについては、前二項の規定により置かなければならない主任技術者又は監理技術者は、工事現場ごとに、専任の者でなければならない。ただし、次に掲げる主任技術者又は監理技術者については、この限りでない。
最後の「ただし」以下が、この記事の後半で説明する2つの例外ルートの根拠です。条文を読むときは、この但書まで含めて1セットだと考えてください。
そして大事なのは、すべての工事で専任が必要なわけではないという点です。専任になるのは、条文が言う「重要な建設工事」に当たるときだけ。その線引きは次の章で見ていきます。
そもそも監理技術者を置くのは、どんな工事?
専任の話に入る前に、「監理技術者を置く工事」自体の条件を確認しておきます。
監理技術者が必要になるのは、次の2つがそろったときです(建設業法26条2項)。
- 発注者から直接請け負った工事であること(=元請)
- その工事のために結んだ下請契約の代金の総額が、5,000万円以上(建築工事業の場合は8,000万円以上)になること
この金額は建設業法施行令2条で決まっています。そしてこの金額の下請契約を結ぶには、そもそも特定建設業の許可が必要です。
つまり監理技術者は、「元請で、下請にたくさん出す、大きめの工事」に置く技術者です。それ以外の現場は主任技術者を置きます。
⚠️ 条文のかっこ書きに注意
指定建設業の7業種(土木一式・建築一式・電気・管・鋼構造物・舗装・造園)では、監理技術者になれるのは1級の国家資格者など(法15条2号イ該当者)か、国土交通大臣が同等以上と認定した人に限られます。実務経験だけでは監理技術者になれません。この7業種を持っている会社は、ここで人選の幅が一段狭くなります。
金額の改正の経緯は建設業法改正|下請5,000万円で特定許可・専任4,500万円ににまとめています。
「専任=24時間その現場に張り付く」ではありません
よくいただく質問に「専任って、ずっとその現場にいないとダメですか?」があります。
答えは、国土交通省の「監理技術者制度運用マニュアル」(最終改正 令和7年1月28日 国不建技第147号/令和7年2月1日適用)にはっきり書かれています。
専任とは、他の工事現場に係る職務を兼務せず、勤務中は常時継続的に当該工事現場に係る職務にのみ従事していることをいう。
ポイントは「勤務中は」です。
さらに同じマニュアルは、この直後でこう言い切っています。
専任の趣旨を踏まえると、必ずしも当該工事現場への常駐(現場施工の稼働中、特別の理由がある場合を除き、常時継続的に当該工事現場に滞在していること)を必要とするものではない。
つまり「専任=常駐」ではありません。求められているのは、勤務時間中に他の現場の仕事を兼務しないこと。ここを読み違えて、必要以上に人を縛っている会社は少なくありません。
なお、元請の場合は、専任で設置すべき期間が、設計図書や打合せ記録などの書面で発注者との間で明確になっている必要があります(同マニュアル)。
専任が必要かどうかは「工事の種類」×「金額」の2つで決まる
ここが、この記事のいちばん実務に効く部分です。
専任が必要になるのは、建設業法施行令27条1項が定める工事。条件は2つとも満たしたときだけです。片方だけでは専任になりません。
条件1:工事の種類(どんな施設か)
施行令27条1項は、対象になる施設・工作物を細かく列挙しています。読みやすいように整理しました。民間工事でも入るものがあるのが要注意です。
| 分類 | 施設・工作物 |
|---|---|
| ① 発注者で決まる 27条1項1号 | 国または地方公共団体が注文者である施設・工作物 =神奈川県・秦野市・厚木市・伊勢原市などの発注工事はすべてここ |
| ② インフラ・エネルギー 27条1項2号(令15条1号・3号) | 鉄道/軌道/索道/道路/橋/護岸/堤防/ダム/河川に関する工作物/砂防用工作物/飛行場/港湾施設/漁港施設/運河/上水道/下水道/電気事業用施設/ガス事業用施設 |
| ③ 教育・文化 27条1項3号 | 学校/図書館・美術館・博物館・展示場 |
| ③ 医療・福祉 | 病院・診療所/社会福祉事業の用に供する施設 |
| ③ 住まい・宿泊 | 共同住宅・寄宿舎・下宿/ホテル・旅館 ← 民間のアパート・マンションはここ |
| ③ 仕事・商業 | 事務所/市場・百貨店/工場・ドック・倉庫 ← 民間の事務所ビル・工場・倉庫もここ |
| ③ 人が集まる場所 | 集会場・公会堂/興行場・ダンスホール/公衆浴場/神社・寺院・教会 |
| ③ その他 | 火葬場・と畜場・廃棄物処理施設/熱供給施設/展望塔/石油パイプライン事業用施設/電気通信事業者の施設/基幹放送の用に供する施設(鉄骨造・鉄筋コンクリート造の塔等に限る) |
💡 ここがポイント
個人が住む戸建て住宅は、この列挙に入っていません。一方で、民間のアパート・事務所ビル・工場・倉庫は該当します。「民間工事だから関係ない」は成り立ちません。
条件2:金額(1件の請負代金)
そのうえで、工事1件の請負代金の額が次の金額以上になると、専任が必要です。
| 工事の種類 | 専任が必要になる請負代金 |
|---|---|
| 建築一式工事以外 | 4,500万円以上 |
| 建築一式工事 | 9,000万円以上 |
さきほど出てきた「下請総額5,000万円以上(建築8,000万円以上)で監理技術者」という金額とは別の基準です。数字が近いので、社内で混ざりやすいところです。
- 4,500万円/9,000万円 … 専任にするかどうか(施行令27条)
- 5,000万円/8,000万円 … 特定建設業許可・監理技術者が必要かどうか(施行令2条)
3つの質問で判定する
自社の工事がどちらなのか、この順番で当てはめてみてください。

Q1. 元請として直接受けた工事で、下請に出す総額が5,000万円(建築工事業は8,000万円)以上ですか?
→ いいえなら、置くのは主任技術者です(専任が必要かどうかの判定はQ2へ進んでください。主任技術者にも専任のルールは同じようにかかります)。
→ はいなら、監理技術者を置きます。Q2へ。
Q2. その工事は、国・自治体の発注か、インフラか、学校・病院・事務所・共同住宅・工場・倉庫など「多数の人が使う施設」の工事ですか?
→ いいえ(例:個人の戸建て住宅)なら、専任は不要です。
→ はいなら、Q3へ。
Q3. その工事1件の請負代金は、4,500万円(建築一式工事なら9,000万円)以上ですか?
→ いいえなら、専任は不要です。
→ はいなら、専任が必要です。次の章の「2つのルート」を検討してください。
金額は「税込」で数えます。ここを間違える会社が多い
条文は「工事一件の請負代金の額」としか書いていません。そこで実務が迷うのですが、答えは行政の解釈で決まっています。

1. 消費税は含めて数えます(税込)
建設業許可事務ガイドラインに、こう定められています。
法、令及び規則の規定中、「請負代金の額」その他の個々の取引に係る請負代金に係る用語は、当該取引に係る消費税及び地方消費税の額を含むものとする。
「令」=施行令が入っているので、専任を判定する4,500万円・9,000万円も税込です。神奈川県の建設業許可の手引きでも、4,500万円の基準額に「(消費税込み)」と明記されています。
具体的にはこうなります(消費税10%の場合)。
| 税抜の請負代金 | 税込 | 専任は? |
|---|---|---|
| 4,100万円 | 4,510万円 | 必要(4,500万円以上) |
| 4,000万円 | 4,400万円 | 不要 |
🚨 税抜4,100万円を「4,500万円未満だからセーフ」と判断すると、そこで間違えます。
2. 発注者が材料を出す場合は、その分を足します
注文者が材料を提供する工事では、その材料の市場価格(および運送費)を請負代金に加えた額で判定します。
3. 契約を分けても、合算されることがあります
同じ建設業者が、工期の重なる複数の契約を結び、かつそれぞれの工事の対象が同一の建築物または連続する工作物である場合は、注文者全員から書面で承諾を得たうえで、これらを一の工事とみなす取扱いがあります。このとき請負代金の合計が4,500万円(建築一式は9,000万円)以上になれば、専任が必要です。
「契約を2本に分ければ基準額を下回る」という発想は、この取扱いに当たると通りません。
1人で2現場まで見る、2つのルート
「専任が必要」と分かっても、そこで終わりではありません。
技術者不足を背景に、条件つきで2現場までの掛け持ちを認める例外が、建設業法26条3項のただし書に置かれています。ルートは2つ。どちらを使うかで、準備するものがまったく変わります。
💡 なぜ「2つ」なのか
主任技術者には、これに加えて「近接した場所の密接に関連する工事をまとめて見る」という3つ目の例外があります(施行令27条2項)。ただしこの3つ目は監理技術者には使えません。だから監理技術者のルートは2つです(詳しくは記事末のよくある質問へ)。

ルートA:ICTと連絡員を使って兼任する(法26条3項1号)
イ・ロ・ハの3つすべてを満たすと、監理技術者(主任技術者も同じ)が2現場を兼任できます。
イ:金額の上限
工事1件の請負代金が1億円未満(建築一式工事は2億円未満)であること(施行令28条)。
ロ:現場と体制の要件(施行規則17条の2第1項)
| # | 要件 |
|---|---|
| 1 | 現場間の距離が、1日の勤務時間内に巡回できること。かつ災害・事故が起きたときの現場間の移動時間がおおむね2時間以内であること |
| 2 | 下請契約が一次・二次・三次までに限られること(四次以降がないこと) |
| 3 | 技術者との連絡などを担当する人を現場に置くこと(土木一式・建築一式工事の場合は、その工事の実務経験1年以上の人に限る) |
| 4 | 施工体制を、技術者が情報通信技術を使って確認できる措置を講じていること |
| 5 | 人員配置の計画書を作り、工事現場に備え置き、帳簿と同じ期間営業所で保存すること |
ハ:情報通信機器(施行規則17条の3)
現場以外の場所から現場の状況を確認できる映像と音声を送受信できる機器が設置され、その通信が使える環境が確保されていること。
なお5の計画書には、工事名や請負代金額のほか、その技術者の1日あたりの時間外労働の見込みと実績まで書きます。「カメラを付けただけ」では要件を満たしません。書類と運用がセットの制度だと考えてください。
ルートB:監理技術者補佐を専任で置く(法26条3項2号)
もうひとつは、現場に「監理技術者補佐」を専任で置く方法です。補佐を置けば、その監理技術者は専任でなくてよくなります。
補佐になれるのは、施行令29条が定める人です。
- 建設業法7条2号イ・ロ・ハに当たる人のうち、監理技術者の職務の基礎的な知識と能力があると認められる人として、工事の種類ごとに国土交通大臣が定める要件に当てはまる人
- 国土交通大臣が、上と同等以上の能力があると認定した人
神奈川県の経審の手引きでは、技術職員の資格区分(コード005「監理技術者補佐」)の要件として「主任技術者の要件となる資格を持ち、1級技士補である人」または「監理技術者の要件を満たす人」が挙げられています。
⚠️ 注意点が2つあります
1. この特例が使えるのは監理技術者だけです。条文上、主任技術者には使えません。
2. 補佐そのものは「専任」で置く必要があります。監理技術者制度運用マニュアルも「専任特例2号の場合は、当該工事現場に設置する監理技術者補佐は専任の者でなければならない」と明記しています。補佐を掛け持ちさせることはできません。
2つのルートの比較
| ルートA(ICT等で兼任) | ルートB(監理技術者補佐) | |
|---|---|---|
| 根拠 | 法26条3項1号 | 法26条3項2号 |
| 対象 | 主任技術者・監理技術者 | 監理技術者のみ |
| 金額の上限 | 1億円未満(建築一式2億円未満) | 条文上の金額の定めなし |
| 必要な人 | 連絡等を担当する者 | 監理技術者補佐(専任) |
| 必要な設備・書類 | 情報通信機器+人員配置計画書 | — |
| 現場数の上限 | 2現場 | 2現場 |
金額の大きい工事ではルートAが使えません。1億円以上の工事で兼任させたいなら、補佐を育てておく——これが実務上の分かれ目です。
どちらも「2現場まで」。3現場目でルールごと消える
ここは特に注意してください。
建設業法26条4項は、「現場の数が政令で定める数を超えるときは、ただし書の規定は適用しない」と定めています。そして施行令30条が、その数を「二」としています。
つまり3現場目を持たせた瞬間、特例そのものが使えなくなり、原則の「1現場に1人専任」に戻ります。2現場のうち1つだけが違反になるのではなく、組み立て全体が崩れるという理解が安全です。
⚠️ 混ぜないでください
営業所技術者(かつての「専任技術者」)が現場を兼ねる特例(法26条の5)は別の制度で、上限は1現場です(施行令34条)。「2現場」は本章の話、「1現場」は営業所技術者の話です。
特例を使っても外せない、「資格者証+講習」
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい落とし穴です。
建設業法26条5項は、こう定めています。
第三項の規定により専任の者でなければならない監理技術者(同項各号に規定する監理技術者を含む。次項において同じ。)は、…監理技術者資格者証の交付を受けている者であつて、…国土交通大臣の登録を受けた講習を受講したもののうちから、これを選任しなければならない。
注目していただきたいのは、かっこ書きです。
「同項各号に規定する監理技術者を含む」の「同項各号」とは、さきほどのルートA(1号)とルートB(2号)のこと。
🚨 特例を使って兼任させる監理技術者にも、資格者証と講習は必要です。
「専任じゃなくなったから資格者証は要らない」とはなりません。ここを読み落とすと、体制そのものが成り立たなくなります。
有効期間も押さえておきましょう。
| 期間 | |
|---|---|
| 監理技術者資格者証 | 5年(申請により更新/建設業法27条の18第4項・5項) |
| 監理技術者講習 | 受講した日の属する年の翌年から起算して5年を経過しないこと(施行規則17条の21)。しかも選任されている期間中、どの日をとってもこの5年内でなければなりません |
講習のほうは「受講日から5年」ではなく「受講した年の翌年から5年」という数え方です。1年ぶん長く見えるので、更新時期を勘違いしやすいところです。
また、選任された監理技術者は、発注者から請求があれば資格者証を提示しなければなりません(法26条6項)。現場に携行しておく運用が安全です。
公共工事なら、「3か月前から雇っていたか」も見られます
ここは、直前の準備では間に合わない要件です。採用のタイミングを逆算しておく必要があります。
配置技術者には、会社との直接的かつ恒常的な雇用関係が必要です。そのうち「恒常的」について、監理技術者制度運用マニュアルは公共工事に厳しい線を引いています。
国・地方公共団体・公共法人等が発注する工事で、次の人については、会社から入札の申込があった日以前に3か月以上の雇用関係にあることが必要です。
- 元請の専任の主任技術者
- 元請の専任の監理技術者
- 専任特例(ルートA・ルートB)の場合の監理技術者
- 監理技術者補佐
※指名競争で入札の申込を伴わないときは入札の執行日、随意契約のときは見積書を提出した日が基準になります。
つまり、入札に合わせて技術者を採用しても間に合いません。神奈川県や市の工事を取りにいくなら、入札の3か月前には人が決まっている必要があります。ルートBのために監理技術者補佐を用意する場合も同じです。
「直接的」のほうも押さえておきましょう。マニュアルはこう定義しています。
直接的な雇用関係とは、監理技術者等とその所属建設業者との間に第三者の介入する余地のない雇用に関する一定の権利義務関係(賃金、労働時間、雇用、権利構成)が存在することをいい、在籍出向者や派遣社員については直接的な雇用関係にあるとはいえない。
確認資料としては、資格者証の写し、住民税特別徴収税額通知書の写し、健康保険・厚生年金被保険者標準報酬決定通知書の写し、雇用証明書の写しなどが挙げられています。採用の日付が残る書類を揃えておくことが、そのまま備えになります。
3か月ルールには、3つの例外があります
同じマニュアルが、次の3つを定めています。自社が当てはまるなら、結論が変わります。
- 合併・営業譲渡・会社分割などの組織変更で所属会社が変わった場合は、変更前の会社での3か月以上の雇用関係を通算できます(契約書や登記事項証明書などで確認)。事業承継やM&Aの直後でも、前の会社での期間が生きます。
- 震災などの自然災害の発生またはそのおそれがあり、最寄りの建設業者が即時に対応することが被害の防止に最も合理的で、その会社に要件を満たす技術者がいない場合など、緊急でやむを得ない事情があるときは、この限りではありません。
- 継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の適用を受けている人は、その雇用期間にかかわらず、常時雇用されている(=恒常的な雇用関係にある)ものとみなされます。定年後に再雇用したベテランも配置できます。
その資格者証と講習は、経審の点数にもそのまま効く
ここからは、許可の話と入札の話をつなぎます。
経審(経営事項審査=公共工事の入札に参加するために受ける、会社の評価)には、技術力を見るZという項目があります。その中で、技術職員1人ひとりを資格に応じて点数化します。

神奈川県『経営事項審査の手引き 令和8年7月1日版』(第2分冊)の区分は、次のとおりです。
| 技術職員の区分 | 技術職員数値 |
|---|---|
| 1級技術者で、監理技術者資格者証を保有し、かつ監理技術者講習を修了 | 6点 |
| 1級技術者(上記以外) | 5点 |
| 監理技術者補佐 | 4点 |
| 基幹技能者、または能力評価基準でレベル4と判定された技能者 | 3点 |
| 2級技術者、または能力評価基準でレベル3と判定された技能者 | 2点 |
| その他(一定の実務経験が必要な資格) | 1点 |
見えてくることが2つあります。
1つめ。専任の監理技術者に必要な「資格者証+講習」は、同じ1級技術者でも5点を6点に変えます。義務として揃えるものが、そのまま評価にも効くということです。
2つめ。ルートBのために置く監理技術者補佐は4点です。「現場を回すために補佐を育てる」ことが、技術力の評価にも乗ります。人手不足の対策と点数対策を、別々にやる必要はありません。
ただし、正確にお伝えしておきます。手引きにはこう注記されています。
上記の点数は評点算定の基礎となる数値であり、直接P点(総合評定値)に加算されるものではありません。
つまり「講習を受ければP点が◯点上がる」という単純な足し算ではありません。あくまでZの計算の材料になる数値です。P点の仕組みは経営事項審査の点数(P点)計算方法で、加点の考え方は経審の点数の上げ方で解説しています。
なお、経審で講習受講「有」として申請するときは、期限の数え方に条件があります。
- 監理技術者講習の修了年月日の属する年の翌年から5年以内に、審査基準日が含まれていること
- 確認資料は監理技術者資格者証(写し)+監理技術者講習修了証(写し)(平成28年6月1日施行の新様式なら、資格者証の裏表両面の写し)
- 資格が「実経(実務経験)」と記載されている場合は1級相当技術者ではないため、監理技術者としての加点対象になりません
レベル3・レベル4の技能者についてはCCUSレベルアップの条件もあわせてご覧ください。
神奈川県央でよくある3つのケース
条文だけだと分かりにくいので、実際に当てはめてみます。(金額はいずれも税込。契約前の確認が前提です)
ケース1:秦野市発注の市道改良工事 4,800万円(土木一式・元請)
市=地方公共団体の発注なので、施行令27条1項1号に当たります。金額(税込)も4,500万円以上。専任が必要です。この規模なら下請総額が5,000万円に届かないことがほとんどなので、置くのは主任技術者。それを専任にします。監理技術者が要るのは、下請に出す総額が5,000万円以上になる、もっと大きな元請工事です。
ケース2:民間のアパート新築 5,200万円(建築一式工事ではない専門工事・元請)
民間工事ですが、共同住宅は施行令27条1項3号に列挙されています。建築一式工事ではないので基準は4,500万円。専任が必要です。「民間だから関係ない」という思い込みが、いちばん危ないパターンです。
ケース3:個人の戸建て住宅の新築 6,000万円(建築一式・元請)
個人が住む戸建て住宅は、施行令27条1項の列挙に入っていません。したがって金額が大きくても専任は不要です(主任技術者・監理技術者を置くこと自体は必要です)。
ケース3の応用:1階が店舗、2階が住まいの「併用住宅」は?
事務所や病院などと戸建て住宅を兼ねた建物を併用住宅といいます。併用住宅は、次の2つを両方とも満たすときだけ、戸建て住宅と同じ扱いになり、専任配置を求められません。
- 事務所・店舗などの非居住部分の床面積が、延べ面積の1/2以下であること
- 請負代金の総額を居住部分と併用部分の面積比で按分した、併用部分に相当する金額が、専任の基準額(建築一式工事なら9,000万円)未満であること
⚠️ 裏を返すと
店舗や事務所の部分が延べ面積の半分を超える併用住宅は「事務所」等として扱われ、金額基準を超えれば専任が必要になります。併用住宅かどうかは建築確認済証で判別し、面積比は確認済証と設計図書から求めます。
ケース1のような自治体発注の工事を取りにいくには、そもそも入札参加資格の等級(ランク)が要ります。等級は経審の点数で決まるため、技術者をそろえる話と、入札に出られるかの話はつながっています。詳しくは入札参加資格の等級(ランク)とは?をご覧ください。
よくある質問
Q. 専任の監理技術者は、社員でなければいけませんか?
A. 会社との直接的かつ恒常的な雇用関係が必要です。監理技術者制度運用マニュアルは「在籍出向者や派遣社員については直接的な雇用関係にあるとはいえない」と明記しています。なお、企業集団内の出向社員や官公需適格組合の在籍出向者については、別に国土交通省の通知で取扱いが示されています。自社が当てはまるかどうかは、個別に確認してください。
Q. ルートAとルートBは、組み合わせて使えますか?
A. 組み合わせはできません。理由は2つあります。
- 兼務できる現場数の上限は2です(法26条4項・施行令30条)。3現場目を持たせると特例そのものが使えません。
- それ以前に、ルートAを使った現場とルートBを使った現場を、同じ技術者が兼務すること自体が認められていません。監理技術者制度運用マニュアルが「同一の監理技術者又は主任技術者が、専任特例1号を活用した工事現場と専任特例2号を活用した工事現場を兼務することはできない」と明記しています。
つまり「ルートAで2現場」か「ルートBで2現場」のどちらかです。補佐を置いた現場+ICTで見る現場、という組み方はできません。実務でいちばんやってしまいがちな形なので、ご注意ください。
なお、ルートBで補佐を置いた場合、現場が1つだけでも補佐を配置すること自体は可能ですが、そのときもその監理技術者は他の現場を兼務できません。
Q. 近くの2つの現場なら、まとめて1人で見られると聞きました。
A. それは施行令27条2項の話で、主任技術者に限った制度です。監理技術者には適用されません。監理技術者制度運用マニュアルが「この規定は、専任の監理技術者については適用されない」と明記しています。
主任技術者の場合の目安は、次のとおりです。
- 工作物に一体性または連続性が認められる工事か、施工にあたり相互に調整を要する工事であること(例:区間の重なる下水道工事と道路工事)
- 工事現場相互の間隔が10km程度の近接した場所であること
- 一の主任技術者が管理できる工事の数は、専任が必要な工事を含む場合は原則2件程度
※資材の調達を一括で行う場合や、工事の相当の部分を同じ下請で施工する場合も「相互に調整を要する工事」に含まれます。民間発注の建築工事でも使えます。
Q. 講習は受けていますが、資格者証が期限切れです。
A. 資格者証の有効期間は5年で、更新の申請ができます(法27条の18第5項)。専任の監理技術者は資格者証の交付を受けている者から選任することになっているため、切れたままの配置はできません。更新時期の管理を社内でルール化しておくことをおすすめします。
まとめ|配置は「決めてから」ではなく「受注する前に」
- 専任が必要かは、工事の種類(施行令27条1項)× 金額(4,500万円/建築一式9,000万円・税込)の両方で決まる
- 民間工事でも、事務所・共同住宅・工場・倉庫などは対象。個人の戸建て住宅は対象外(併用住宅は2条件を両方満たすときだけ戸建て扱い)
- 兼任には2つのルート。ルートA(ICT等・1億円未満)とルートB(監理技術者補佐)
- どちらも上限は2現場。3現場目で特例そのものが使えなくなる。ルートAの現場とルートBの現場を混ぜることもできない
- 特例を使っても、監理技術者資格者証+登録講習は必要(法26条5項のかっこ書き)
- 公共工事は、入札の申込日以前に3か月以上の雇用関係が必要。監理技術者補佐も同じ
- その資格者証と講習は、経審の技術職員数値を5点から6点に。補佐は4点
配置の判断は、契約書にハンコを押す前が勝負です。受注したあとで「専任が必要だった」と分かっても、動かせる人は限られています。
迷ったら、体制図を一緒に広げましょう

やさしい行政書士事務所では、神奈川県秦野市を拠点に、建設業許可・決算変更届・経営事項審査・入札参加資格をまとめてお手伝いしています。
「この工事、専任がいるのか」「補佐を置いたほうがいいのか」「今の技術者の資格で経審の技術職員数値はどうなるのか」——このあたりは、社内の資格一覧と受注予定を並べて見れば、その場で整理できることがほとんどです。
料金の目安は料金ページでご確認いただけます。
😊 まずは無料相談から、お気軽にどうぞ
売り込みはいたしません。ご相談だけでも結構です。技術者の資格一覧と、これから受ける予定の工事のメモをお手元にご用意いただけると、話が早いです。
📞 0463-57-8330(平日9:00〜18:00)
やさしい行政書士事務所/代表行政書士 宮本 雄介
〒257-0003 神奈川県秦野市南矢名2123-1 オレンジハイツ今井2E
【この記事の出典】e-Gov法令検索『建設業法』(昭和24年法律第100号)26条・26条の5・27条の18/『建設業法施行令』(昭和31年政令第273号)2条・15条・27条〜30条・34条/『建設業法施行規則』(昭和24年建設省令第14号)17条の2・17条の3・17条の21(いずれも2026年8月25日に現行条文を確認)/国土交通省「監理技術者制度運用マニュアル」(最終改正 令和7年1月28日 国不建技第147号/令和7年2月1日適用)/国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」【その他】2(最終改正 令和7年2月1日 国不建第161号)/神奈川県『経営事項審査の手引き 令和8年7月1日版』第2分冊/神奈川県『建設業許可申請の手引き 令和8年度版』
【免責事項】本記事は2026年8月25日時点の情報に基づく一般的な解説です。制度・法令は改正されることがあります。個別の工事について専任が必要かどうかの判断は、発注者および管轄の許可行政庁にご確認ください。