建設業

防災協定が締結できない建設業者へ|経審20点を「団体経由」で取る方法と神奈川の可否事例

防災協定は自社で結べなくても、団体経由で経審20点を取れる

「経審の点を上げたい。防災協定で20点入るのは知ってるけど……うちみたいな小さい会社が、市役所と協定なんて結べるの?

経審(経営事項審査)のご相談で、いちばんよく出てくる”あきらめ”がこれです。

市役所に電話しても「協定は業界団体さんと結んでいます」と言われ、そこで話が終わってしまう。
結果、W点の一覧を見るたびに「防災協定:なし」の行だけが残り続ける——。

でも、ここであきらめるのは早いです。
経審の制度そのものが、「自社で結べない会社は、団体経由で取っていい」と正面から認めています。神奈川県の手引きにも、その条件と必要書類がはっきり書かれています。😊

📋 この記事でわかること
  • 自社で協定を結べなくても加点を取れる「団体経由ルート」の2つの条件
  • 加点をもらうために必要な書類(単独の場合/団体経由の場合)
  • 神奈川県で「可」とされる書類・「不可」とされる書類の実例
  • せっかく協定があっても点が伸びない4つの落とし穴

秦野市で建設業のお客様を多く担当している行政書士が、神奈川県の手引き(令和8年7月1日版)をもとに解説します。

まず確認:防災協定は経審で何点の項目なのか

経審のW点(社会性等)には「防災活動への貢献の状況」という審査項目があります。申請書でいうと項番55「防災協定の締結の有無」。締結していれば「1」、していなければ「2」を記入する、○×だけのシンプルな項目です。

この○×で動く点数が素点20点。W点のなかでは大きめの1項目です。

経審の防災協定加点は、自社で行政機関と直接締結するルートと、協定を結んでいる団体に加入するルートの2通りがある
💡 防災協定は、W点(社会性等)を構成する項目のひとつ。そのW点が、P点(総合評定値)に0.15のウェイトで反映されます。W点全体の配点レンジ・項目一覧は「経審のW点、目安はどのくらい?」、素点からW評点への換算のしくみは「経審W点の計算方法」で詳しく解説しています。

そして肝心の「防災協定」とは何か。手引きの定義はこうです。

「防災協定とは、災害時における建設業者の防災活動等について定めた建設業者と行政機関等との間の協定をいいます」
(神奈川県『経営事項審査の手引き 令和8年7月1日版』第2分冊 項番55)

「建設業者と行政機関等との間の協定」——この文だけ読むと、やはり自社で結ばないとダメに見えますよね。
ところが、同じ項番55の説明のなかに、続きがあるのです。

本題:自社で結べなくても「団体経由」で加点できる

手引きは、団体経由のルートをはっきり認めています。要約すると、次の2つの条件をどちらも満たせば加点対象です。

団体経由で防災協定の加点を受けるための2つの条件と、経審で提出する確認書類

条件① 加入している団体のほうが、協定を結んでいること

社団法人等の団体が、国・特殊法人等・地方公共団体との間で防災協定を締結していること。

条件② その会社が「一定の役割を果たす」と確認できること

団体に加入している建設業者のうち、団体の活動計画書や証明書等により、防災活動に一定の役割を果たすことが確認できる企業が加点対象になります。

ここで大事なのは、「団体に入っただけ」では条件②を満たさないということ。
会費を払って会員名簿に載っているだけでなく、「災害のときにこの会社はこう動く」という役割が、団体の活動計画書や証明書で示せる状態になっている必要があります。

⚠️ 加入を検討する段階で、団体に「経審用の証明書を出してもらえますか?」と一言確認しておくことをおすすめします。証明書が出ない団体に入ってしまうと、会費だけ払って加点は取れない、ということが起こり得ます。

経審で提出する書類(確認資料⑰)

神奈川県の場合、「防災活動への貢献の状況を証する書類」として、次のいずれかを添付します。

ルート 添付する書類
①自社が直接締結
(国・特殊法人等・地方公共団体と)
防災協定(コピー)
②加入団体が締結
(団体経由ルート)
証明書(コピー)
または
団体に加入していることを証する書類(会員証等)のコピー防災活動に一定の役割を果たすことが確認できる書類(団体の活動計画書等)のコピー
⚠️ 団体が発行する証明書には、審査基準日が明記されている必要があります。神奈川県の手引きには証明書の様式(見本)も載っています。団体に発行を依頼するときは、この様式を見せて「審査基準日を入れてください」と伝えるのが確実です。

ちなみに、証明書の文面は「上記の者は令和○年○月○日付けで神奈川県知事との間で締結した災害時における応急対策業務に関する○○災害協定に基づいて災害応急活動等に従事する者であることを証明する」といった形です。会社名・所在地・代表者名・許可番号が入りますので、依頼するときはこれらの情報をまとめて渡すとスムーズです。

神奈川県の”生きた運用”——認められる書類・認められない書類

ここからが、他県の解説記事ではまず出てこない部分です。
神奈川県の手引きには、「可としている事例」「不可としている事例」が実名で書かれています。

神奈川県の経審で防災協定の証明として可とされる書類と不可とされる書類の実例

◎ 可としている事例

  • 横須賀市の「災害緊急協力事業者登録申込書」(横須賀市市民部危機管理課の収受印があるもの)
    ——「登録」という名称ですが、内容から加点対象と扱われています。
💡 ただし条件があります。登録期間(1年間)に審査基準日が含まれていない場合は加点対象になりません。手引きの例では、令和8年2月1日の収受印がある申込書は「令和8年4月1日から令和9年3月31日まで」が登録の有効期間と判断されます。決算日(審査基準日)がこの期間に入っているか、必ず確認してください。

× 不可としている事例

  • 川崎市「防災協力事業所登録」の登録証
  • 緊急補修工事等に関する覚書
  • 緊急補修工事等に関する協定書
  • 建設業労働災害防止協会の加入証明書

横須賀市の「登録」は可なのに、川崎市の「登録」は不可。
名前だけ見ると同じように見えるのに、扱いが真逆です。この差はどこから来るのでしょうか。

手引きは、その判断基準もあわせて示しています。

「防災協定とは、協力要請が原則ですが、事業者に対して一定の強制力を有するものであるため、活動内容が自発的な防災活動の実施等のような内容の場合は加点対象外となります」
(神奈川県『経営事項審査の手引き 令和8年7月1日版』第2分冊 P87)

「協力要請が原則」でありながら「事業者に対して一定の強制力を有するもの」——つまり、いざというときに動くことが求められる関係になっているか。手引きが示す考え方はここにあります。
「防災に協力する意思のある事業者として登録しました」という自発的な取り組みの表明にとどまるものは、書類の名前が「協定書」や「登録証」であっても加点にはつながらない、というわけです。

※手引きは、横須賀市の申込書を可とする理由を「その内容から」として上記の考え方を参照させていますが、川崎市の登録証を不可とする理由までは明記していません。ここでの説明は同じページの記載から読み取れる考え方であり、個別の書類の可否は行政庁が判断します。

⚠️ 「うちは市の防災協力事業所に登録しているから大丈夫」と思っていた会社が、経審の書類チェックではじめて対象外と分かる——というのは、実際に起こりやすいパターンです。手元の書類が加点対象かどうかは、決算前に確認しておくのが安全です。

協定があっても点が伸びない4つの落とし穴

手引きには、加点対象外になるケースも整理されています。せっかく協定を結んでも空振りにならないよう、押さえておきましょう。

防災協定を締結していても経審で加点対象外になる主なパターン
  • ①協定のなかで単価を定めている — 事実上の請負契約・期間委託契約とみなされ、原則として加点対象外になります。※事務効率化等のためにあらかじめ単価を定めていて、その単価が明らかに実費相当であるような場合は加点対象になります。
  • ②協定の締結者を入札で決めている — 入札で選定されたような場合も加点対象外です。
  • ③複数の協定を結んでも、加点は増えない — 加点は重複しません。県とも市とも団体経由でも結んでいる、という場合でも20点は1回きりです(0点になるわけではありません)。
  • ④「自発的な防災活動」にとどまる内容 — 前章のとおり、一定の強制力がない登録制度等は対象外です。
💡 逆に、勘違いされやすいけれど加点対象になるものもあります。
有償で行われる活動でも加点対象(無償のボランティアである必要はありません)
建設工事に該当しない活動でもかまいません(協定の内容が、災害時の建設業者の活動義務について定めたものであればよく、具体的な活動内容に制限はありません)

神奈川県内にも、団体と行政の協定は実在する

「団体経由と言われても、そんな協定が本当にあるの?」と思われるかもしれません。
神奈川県内でも、行政と建設業の団体との防災協定は実際に締結・公表されています。たとえば——

  • 神奈川県 × 一般社団法人神奈川県森林土木建設業協会 県央支部
    「県営林道における地震・風水害・その他の災害応急工事等に関する業務協定」(県の記者発表によれば、令和7年1月23日に締結式)。県自然環境保全センターが管理する県営林道で、災害時の応急復旧・二次災害防止の工事を行うという内容です。
  • 横浜市 × 横浜建設業協会・神奈川県建設業協会横浜支部
    「災害時における緊急巡回及び応急措置等に関する協定」(平成23年4月1日)、「風水害、地震その他によるがけ崩れ災害に係る応急措置等に関する協定」(平成26年11月19日)など、複数の協定が公表されています。

業種(土木・造園・管工事・電気など)や地域ごとに、協会・組合・支部が行政と協定を結んでいるケースがあります。まずは「自社の業種・エリアの団体は、どこと協定を結んでいるか」を調べるのが第一歩です。

⚠️ ここに挙げたのは「協定が実在する」ことの例示です。各団体が新規加入を受け付けているか、経審用の証明書を発行しているかは団体ごとに異なります。加入を検討する際は、必ず当該団体に直接ご確認ください。

今日からできる3ステップ

  • ステップ1:すでに入っている団体を洗い出す
    協会・組合・組織に会費を払っていませんか。そのなかに、行政と防災協定を結んでいる団体があるかもしれません。「うちは加点対象になりますか?」と聞くだけです。
  • ステップ2:手元の”それらしい書類”を仕分ける
    登録証・覚書・協定書。名前が似ていても扱いが違います。神奈川県の可否事例(前章)と照らし合わせてください。
  • ステップ3:未加入なら、加入先を「証明書が出るか」で選ぶ
    加入する前に、経審用の証明書を発行してもらえるか・審査基準日を明記してもらえるかを確認します。ここを外すと加点になりません。

なお、防災協定の20点は、完成工事高を伸ばしたり技術者を採用したりする対策に比べれば、取り組みから加点までの期間が短い部類の項目です。
ただし、団体への加入・役割の確認・証明書の発行という段取りが必要で、これを決算日(審査基準日)までに間に合わせなければなりません。動き出しは早いに越したことがありません。

ほかの加点項目とあわせた優先順位づけは「経審の点数の上げ方|P点が低い原因と加点策」で整理しています。また、防災の取り組みを入札や補助金にも活かす方法は「事業継続力強化計画のメリット|建設業の入札・補助金に活かす」をご覧ください。

まとめ——「うちでは無理」と決めるのは、団体に聞いてからで遅くない

  • 防災協定は経審W点の項番55・素点20点。○×だけで決まる項目
  • 自社で結べなくても、①団体が行政と協定を結んでいる ②団体の活動計画書・証明書で自社の役割が確認できる——この2条件で加点対象になる
  • 提出書類は、単独なら協定のコピー、団体経由なら証明書のコピー(または会員証+活動計画書等)。証明書には審査基準日の明記が必要
  • 神奈川県では横須賀市の災害緊急協力事業者登録申込書=可/川崎市の防災協力事業所登録の登録証=不可。分かれ目は「一定の強制力があるか」
  • 単価を定めた協定・入札で決めた協定は対象外。複数結んでも20点は1回きり。有償の活動でも加点対象

経審は、こうした「知っていれば取れた点」の積み重ねで最終的なランクが変わります。
入札のランク(等級)との関係は「入札参加資格の等級(ランク)とは?」、経審そのものの進め方は「経審のやり方を最初から全部」で解説しています。

「うちが入っている組合、加点対象になる?」
「この登録証、経審で使えるのか見てほしい」

そんなときは、決算を迎える前にぜひ一度お話を聞かせてください。📢

経審の加点対策・防災協定のご相談はやさしい行政書士事務所へ

経審の加点対策・書類の見立てをサポートしています。

やさしい行政書士事務所では、「今の書類で何点取れるか」の棚卸しから、決算日までに間に合う加点策のご提案、経営規模等評価申請の代行まで無料相談で対応しています。「うちの場合はどうなる?」の確認だけでも大丈夫です。「ブログを見た」とお伝えいただくとスムーズです。😊

やさしい行政書士事務所(代表行政書士 宮本 雄介)

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出典
・神奈川県県土整備局事業管理部建設業課『経営事項審査(経営規模等評価申請・総合評定値請求)の手引き 令和8年7月1日版』第2分冊(項番55/確認資料⑰/防災活動への貢献の状況を証する書類として可・不可としている事例/証明書の様式):第2分冊(PDF)/同 第1分冊(審査項目とウェイト):第1分冊(PDF)/掲載ページ:神奈川県「経営事項審査の手引き」
・配点(素点20点)の根拠:国土交通省告示「経営事項審査の項目及び基準を定める件」に定める配点。W点全体の配点一覧は当事務所記事「経審のW点、目安はどのくらい?」に整理しています。
・神奈川県「神奈川県森林土木建設業協会県央支部と『県営林道における災害応急工事等に関する業務協定』を締結します」(令和7年1月17日発表):https://www.pref.kanagawa.jp/docs/f4y/prs/page/20250117.html
・一般社団法人横浜建設業協会「防災協定」:https://www.yokokenkyo.or.jp/katsudo_gyoji/bousai_kyotei.html

※本記事は2026年7月時点で確認できる公開情報をもとに、代表行政書士 宮本 雄介が執筆・監修しています。加点の可否は、提出書類の内容や協定の実態により行政庁が個別に判断します。可・不可の事例や取扱いは改定されることがありますので、申請前に管轄の行政庁(神奈川県知事許可は神奈川県建設業課)または当事務所へご確認ください。大臣許可業者の経審は関東地方整備局の取扱いによります。
ABOUT ME
やさしい行政書士事務所のマスコット猫
宮本 雄介
やさしい行政書士事務所 代表。行政書士(登録番号 第12082434号/神奈川県行政書士会所属)。2011年に行政書士試験に合格し、2012年に開業。以来1,000件以上の相談に対応してきました。建設業許可・経営事項審査(経審)、補助金、会社設立、在留資格、相続を取り扱い、なかでも神奈川県の建設業者の許認可を得意としています。弁護士事務所・社労士事務所での実務経験と、複数企業の社外取締役の経験を持ち、手続きの代行だけでなく経営の視点からも助言します。神奈川県秦野市を拠点に、県内の事業者をサポートしています。