建設業

事業継続力強化計画のメリット|建設業の入札・補助金に活かす

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執筆・監修:やさしい行政書士事務所 代表行政書士 宮本 雄介(登録番号 第12082434号)|執筆・監修者について

「事業継続力強化計画(ジギョケイ)を取ると、何かいいことがあるの?」というご質問を、建設業の社長さんからよくいただきます。事業継続力強化計画は、中小企業の防災・減災の事前対策をまとめた計画を経済産業大臣が認定する制度で、「中小企業のための取り組みやすいBCP」と位置づけられています。この記事では、認定で得られるメリットを公式資料ベースで整理し、建設業での活かし方をやさしく解説します。とくに「経審の加点になる」という誤解は、はっきり整理しますので、ぜひ最後までお読みください。

結論:認定の公式メリットは5つ+保険料割引

中小企業庁の公式資料に明記されている認定メリットは、次の5つです。

  • ロゴマークの活用:認定ロゴをHPや名刺に載せて、防災に取り組む会社としてPRできます
  • 金融支援:日本政策金融公庫の低利融資(企業活力強化資金(国民生活事業)・BCP資金(中小企業事業)。設備資金は基準利率から0.9%引下げ、運転資金は基準利率から0.4%引下げ。引下げが適用されるのは、貸付限度額(中小企業事業7億2,000万円/国民生活事業7,200万円)のうち4億円までです)や、信用保証協会の別枠保証など
  • 税制措置:計画に記載した防災・減災設備の特別償却16%(中小企業防災・減災投資促進税制)
  • 補助金の加点措置:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(従来の「ものづくり補助金」を含みます)、小規模事業者持続化補助金などで加点されます(対象事業の全体は下の表のとおりです)
  • 中小企業庁HPでの公表:認定企業として事業者名が公表され、信用力の裏づけになります

このほか、東京海上日動・損保ジャパンなど複数の損害保険会社が、認定企業の保険料割引を個別に検討する取り組みも公表されています。逆にいえば、公式に確認できるメリットはここまでです。「経審の点数が上がる」という直接の根拠は確認できません(理由は後ほど詳しく説明します)。

事業継続力強化計画 認定のメリット

主なメリットの内容と条件

メリット 内容 主な条件・注意
税制(特別償却16%) 自家発電設備・排水ポンプなど計画に記載した防災設備(機械及び装置100万円以上/器具及び備品40万円以上/建物附属設備60万円以上) 令和9年3月31日までの認定+認定日から1年以内の取得・事業供用。税額控除はなし。補助金等の交付を受けて取得する設備は対象外(後述)
公庫の低利融資 設備資金は基準利率から0.9%引下げ/運転資金は基準利率から0.4%引下げ 引下げが適用されるのは貸付限度額のうち4億円まで。別途審査あり
信用保証の別枠 普通保険2億円とは別枠で2億円など 別途審査あり
補助金の加点 新事業進出・ものづくり商業サービス/小規模事業者持続化(一般型・通常枠)/同(創業型)/中小企業省力化投資(一般型)/事業承継・M&A(事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠) 補助金申請時に電子申請の「受付番号」の入力が必要
保険料割引 損保各社が割引を個別に検討 割引の有無・内容は保険会社ごとに異なる

なお、税制措置は認定企業のすべてが使えるわけではなく、資本金1億円以下などの追加要件があります。特別償却の適用判断や申告は税務の専門領域のため、顧問税理士にご確認ください(当事務所から提携税理士のご紹介も可能です)。

注意:補助金で買った設備には、特別償却を重ねられません

この記事でいちばんお伝えしたいのが、ここです。補助金の加点と特別償却16%はどちらも認定のメリットですが、補助金等の交付を受けて取得した設備に、特別償却を重ねることはできません。中小企業防災・減災投資促進税制の実施要領は、次の3つを特別償却の対象外としています。

  • 消防法および建築基準法に基づき設置が義務づけられている設備
  • 中古品、所有権移転外リースによる貸付資産
  • 設備の取得等に充てるための国または地方公共団体の補助金等の交付を受けて取得等をする設備

つまり「補助金で自家発電設備を買って、その設備で特別償却も取る」という組み立てはできません。補助金で買う設備と、自己資金・融資で買う設備を分けて計画するのが実務です。また、特別償却を使えるのは、青色申告書を提出する中小企業者等です。法人は資本金または出資金の額が1億円以下(大規模法人の子会社等を除く)で、前3事業年度の平均所得金額が15億円を超える法人(適用除外事業者)は対象外です。個人事業主も、青色申告をしていれば対象になります(法人=租税特別措置法44条の2、個人=同法11条の3)。適用の判断と申告は税務の専門領域ですので、顧問税理士にご確認ください。

認定までの流れ

  • STEP1 事前確認:金融支援や税制を使う予定があるなら、先に公庫・信用保証協会・税理士などへ相談しておきます
  • STEP2 計画作成:単独型か連携型かを選び、「策定の手引き」に沿って自社の災害リスクと事前対策を整理します
  • STEP3 電子申請事業継続力強化計画電子申請システムから申請します。GビズID(gBizIDプライム等)が必須で、取得に約2週間かかります
  • STEP4 審査・認定・公表:申請から認定までの標準処理期間は約45日です。経済産業大臣名で認定され、中小企業庁HPで事業者名が公表されます
  • STEP5 実行と見直し:計画の実施期間は最大3年です。継続するときは、実施状況報告書を添えて2回目の申請を行います

申請は単独型・連携型とも原則として電子申請で、事業継続力強化計画 電子申請システムから行います。認定の申請先は主たる事業所の所在地を管轄する経済産業局で、神奈川県の会社は関東経済産業局です。個別の問い合わせも、申請した経済産業局が窓口になります。

ここで時間の見積りをしておきます。GビズIDの取得に最低でも2週間程度、申請から認定までの標準処理期間が約45日ですから、補助金の加点に使うつもりなら、公募の締切から2か月以上さかのぼって動き始めるのが安全です。書類に不備があれば、その分だけ後ろにずれます。制度の全体像は中小企業庁「事業継続力強化計画」ページで確認できます。

事業継続力強化計画とBCPは何が違うのか

「うちはもうBCPを作っているから、ジギョケイは要らないのでは?」と聞かれることがあります。重なる部分は確かにありますが、この2つは性質がちがいます

事業継続力強化計画(ジギョケイ) 一般にいうBCP
根拠 中小企業等経営強化法に基づく認定制度 企業が自主的に策定する事業継続計画。決まった様式や認定手続きはない
認定 経済産業大臣が認定(標準処理期間 約45日) 認定という手続きはない
支援措置 税制・金融支援・補助金加点・ロゴ・公表 制度としての支援措置はない
期間 計画の実施期間は最大3年。継続には2回目の申請 各社の運用しだい

中小企業庁は事業継続力強化計画を「中小企業のための取り組みやすいBCP」と位置づけています。サイバー攻撃など通信基盤の重大な障害は、制度創設時(令和元年7月16日)から法律上の「自然災害等」に含まれています(現行の中小企業等経営強化法2条15項)。加えて感染症についても、認定制度の中で取り扱われるようになりました。分量の重いBCPを一から作るより、まず認定の型に沿って自社の弱点と事前対策を整理し、必要に応じて自社のBCPへ広げていく——この順序のほうが、中小の建設会社には現実的です。

なお、この2つを「どちらでもよい」と並べて扱っている発注者もあります。後述する北海道の入札参加資格の審査基準は、まさに「事業継続力強化計画又は中小企業BCP策定」という書き方をしています。

建設業での活かし方 — 経審との関係をはっきりさせます

「経審W点の加点になる」は確認できません(別制度です)

ネット上には「事業継続力強化計画を取ると経審の点数が上がる」と読める情報があります。しかし、当事務所が公式資料を突き合わせた限り、認定が経審(経営事項審査)の加点になる直接の根拠は確認できませんでした

  • 経審のW点で防災関係が評価されるのは「防災協定の締結」(W3:防災活動への貢献)であり、事業継続力強化計画とは別の制度です
  • 神奈川県『経営事項審査の手引き 令和8年7月1日版』でも、W点(社会性等)の確認資料に事業継続力強化計画の認定書は含まれていません(⑰として挙がっているのは「防災活動への貢献の状況を証する書類」=防災協定のコピー等だけです)
  • 令和8年7月1日の経審改正でもW点の審査項目は見直されましたが、追加されたのは「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」(職人いきいき宣言)の宣言の有無(W1-8)であって、事業継続力強化計画ではありません(経審W点改正の解説はこちら
  • 中小企業庁が公表する認定メリットの一覧にも、経審への言及はありません

つまり「経審対策としてジギョケイを取りましょう」という説明は、誤解を招くおそれがあります。経審の点数そのものを上げたい方は、別記事「経審P点の上げ方」で評点対策の全体像を解説していますので、そちらをご覧ください。

自治体の入札参加資格(主観点)で加点される例はあります

一方で、発注者が独自に持つ入札参加資格の加点(いわゆる主観点)で対象になっている実例はあります。たとえば北海道は、令和7・8年度の建設工事等競争入札参加資格で、経審に基づく「客観点」とは別に「技術・社会点」を加算しており、その社会点の「ケ 安全・安心への貢献の審査基準(上限70点)」に「事業継続力強化計画又は中小企業BCP策定 10点」を掲げています(北海道『令和7・8年度 建設工事等競争入札参加資格 格付及び審査基準について』)。

ただし、ここは点数だけを見ると読み違えます。この10点は「(イ) 災害時の対応等(上限10点)」という枠の中にあり、同じ枠には「災害時の対応 10点」が並んでいます。つまりすでに災害時の対応で10点を得ている会社は、認定を足しても上積みされません。同じ基準では「(ア) 道との災害協定の締結」に20点が付いており、北海道でも配点が大きいのは協定のほうです。加点表は、点数と枠の上限をセットで読む必要があります。

そして、この種の加点は自治体ごとに有無も点数も枠の上限も異なります。神奈川県や秦野市など、ご自身の営業先となる発注自治体で加点があるかは、各自治体の格付基準・審査基準での個別確認が必要です(神奈川県の建設工事の入札参加資格で事業継続力強化計画が加点対象になっているかは、本記事の時点では確認できていません。県の入札参加資格の情報は神奈川県「公共工事の入札に参加するには」にまとまっています)。「国の経審で上がる」のではなく「発注者ごとの加点で上がる場合がある」と理解するのが正確です。

経審そのものの防災加点をお探しでしたら、狙うべきは事業継続力強化計画ではなく防災協定です。自社では協定を結べないという建設業者向けに、防災協定が締結できない建設業者へ|経審20点を「団体経由」で取る方法と神奈川の可否事例で、団体を経由して加点を取りにいく道筋を整理しています。

補助金・防災投資との相乗効果

  • 建設業は「資本金3億円以下または従業員300人以下」のいずれかに当てはまれば認定の対象です
  • 自家発電設備や排水ポンプなどの防災設備投資には、特別償却16%や公庫の低利融資を使える可能性があります
  • ものづくり補助金・持続化補助金などの加点は、建設業の補助金申請でもそのまま有効です(2026年度の主要補助金は補助金まとめ記事で整理しています)

台風や地震で現場や資材置場が被災すると、工期にも経営にも大きく響きます。防災体制づくりと補助金加点を一度に進められるのが、建設業にとってのジギョケイの実益です。どの補助金が使えそうかは、無料の補助金自動診断でその場で確認できます。サポートの詳細は補助金サポートのご案内をご覧ください。

申請前に知っておきたい注意点

  • GビズIDの取得に最低でも2週間程度+審査の標準処理期間約45日:補助金の加点に間に合わせるには、公募の締切から2か月以上さかのぼって動き始めるのが安全です
  • 計画は「作って終わり」ではない:実施期間は最大3年で、継続には実施状況報告書を添えた2回目申請が必要です
  • 税制には追加要件と対象外がある:特別償却は認定日から1年以内の設備取得・事業供用が条件で、税額控除はありません。消防法・建築基準法で設置が義務づけられている設備、中古品・所有権移転外リース、そして補助金等の交付を受けて取得する設備は対象外です
  • 金融支援は別途審査:認定されただけで融資や保証が約束されるわけではありません
  • 事業者名が公表される:中小企業庁HPに掲載されるため、PRに使える反面、計画倒れは避けたいところです

申請手続の細かな流れは中小企業庁「申請方法等について」も参考になります。

よくあるご質問

Q1. 事業継続力強化計画とBCPは何が違うのですか?
A1. 事業継続力強化計画は中小企業等経営強化法に基づいて経済産業大臣が認定する制度で、認定を受けると税制措置・金融支援・補助金の加点などの支援策を使えます。一般にBCPと呼ばれる事業継続計画は各社が自主的に作るもので、決まった様式や認定手続きはありません。中小企業庁は事業継続力強化計画を「中小企業のための取り組みやすいBCP」と位置づけています。まず認定の型に沿って自社の弱点と事前対策を整理し、必要に応じて自社のBCPへ広げていく順序が現実的です。

Q2. 認定を受けると経営事項審査(経審)の点数は上がりますか?
A2. 直接の根拠は確認できません。経審のW点で防災関係が評価されるのは「防災活動への貢献の状況」(W3)の防災協定の締結であり、事業継続力強化計画とは別の制度です。神奈川県『経営事項審査の手引き 令和8年7月1日版』でも、W点の確認資料に認定書は含まれていません。令和8年7月1日の改正でW点の審査項目は見直されましたが、追加されたのは「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」(職人いきいき宣言)の宣言の有無(W1-8)です。

Q3. 認定までどれくらいの期間がかかりますか?
A3. 中小企業庁が示す標準処理期間は約45日です。これに先立って、電子申請に必要なGビズIDアカウント(gBizIDプライム)の取得には最低でも2週間程度かかります。補助金の加点に使う予定があるなら、公募の締切から2か月以上さかのぼって準備を始めると安全です。

Q4. 補助金で買った防災設備でも、特別償却16%は使えますか?
A4. 使えません。中小企業防災・減災投資促進税制の実施要領は、設備の取得等に充てるための国または地方公共団体の補助金等の交付を受けて取得等をする設備を対象外としています。あわせて、消防法・建築基準法に基づき設置が義務づけられている設備、中古品・所有権移転外リースによる貸付資産も対象外です。補助金で買う設備と、自己資金・融資で買う設備は分けて計画してください。(適用の可否と申告は税務の専門領域です。顧問税理士にご確認ください。)

Q5. どの補助金で加点されますか?
A5. 中小企業庁『事業継続力強化計画 認定制度の概要 令和8年7月17日版』が挙げているのは、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金、事業承継・M&A補助金(事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠)、中小企業省力化投資補助金(一般型)、小規模事業者持続化補助金(一般型・通常枠)、同(創業型)です。加点を受けるには、補助金の申請時に電子申請の「受付番号」の入力が必要です。対象は公募ごとに変わりますので、応募前に各補助金の公募要領でご確認ください。

Q6. 建設業でも認定を受けられますか?
A6. 受けられます。建設業は中小企業等経営強化法の「製造業その他」に当たり、資本金の額または出資の総額が3億円以下、または常時使用する従業員の数が300人以下であれば対象です。個人事業主も、開業届が提出されていれば対象になります。

Q7. 認定はいつまで有効ですか。更新は必要ですか?
A7. 計画の実施期間は、変更後も含めて最大3年です。実施期間中であれば変更申請ができますが、期間が満了したあとは変更申請ができず、あらためて新規に申請して認定を受け直すことになります。2回目以降の申請には、実施状況報告書と直近認定時の計画書の写しが必要です。

Q8. 結局、入札で有利になりますか?
A8. 発注者によります。国の経審で加点されるわけではありませんが、自治体が独自に持つ入札参加資格の加点で対象にしている例はあります。北海道は令和7・8年度の建設工事等競争入札参加資格で、社会点の「安全・安心への貢献」に「事業継続力強化計画又は中小企業BCP策定 10点」を置いています。ただしこれは「災害時の対応等(上限10点)」の枠の中にあり、同じ枠の「災害時の対応 10点」と合わせて10点が上限です。営業先の発注者の格付基準・審査基準で、個別にご確認ください。

まとめ:制度の効果を正しく知って、無理なく活用しましょう

やさしい行政書士事務所のマスコット猫

事業継続力強化計画のメリットは、税制・金融支援・補助金の加点・保険料割引・ロゴと公表によるPRです。「経審の加点になる」という直接の根拠は確認できず、経審W点の防災協定加点とは別の制度として整理するのが正確です。そのうえで、自治体入札の主観点や補助金加点まで含めて考えれば、建設業にとって十分検討する価値のある制度といえます。

やさしい行政書士事務所では、補助金の自動診断・要件の事前確認・初回相談を無料の入口としてご用意しています。費用がかかるのは、税込のお見積りにご納得いただいてご依頼いただいた後だけです。秦野市を中心に県西部・神奈川県全域に対応し、補助金のご相談はオンラインにも対応しています。

この記事の出典(一次資料)

※本記事は2026年9月4日時点の情報に基づいています。特別償却率・認定対象期間・融資条件・加点対象の補助金・自治体の審査基準は改正で変わります。申請の前には、下記の一次資料と、所轄の経済産業局・発注者の最新の基準でご確認ください。

※特別償却など税務の適用判断・申告は税理士、登記は司法書士、労務は社会保険労務士、紛争性のある案件は弁護士の専門領域です。当事務所では司法書士・税理士・弁護士のご紹介が可能です。

ABOUT ME
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宮本 雄介
やさしい行政書士事務所 代表。行政書士(登録番号 第12082434号/神奈川県行政書士会所属)。2011年に行政書士試験に合格し、2012年に開業。以来1,000件以上の相談に対応してきました。建設業許可・経営事項審査(経審)、補助金、会社設立、在留資格、相続を取り扱い、なかでも建設業の許認可を中心にしています。弁護士事務所・社労士事務所での実務経験と、複数企業の社外取締役の経験を持ち、手続きの代行だけでなく経営の視点からも助言します。神奈川県秦野市を拠点に、県内を中心に全国の事業者をサポートしています。