「行政書士法が変わったと聞いたけど、うちの会社も何か新しい手続きが必要になるんですか?」
最近、建設業や飲食業のお客様から、こういったご質問をいただくことが増えました。
結論からお伝えします。事業者の皆さまに新しく増える義務はありません。変わったのは、書類作成の代行を「誰に頼むか」を見極めるための物差しのほうです。
2026年(令和8年)1月1日に施行された「行政書士法の一部を改正する法律(令和7年法律第65号)」の中身を、秦野市の行政書士がやさしく整理します。
- 2026年1月施行の改正行政書士法、4つの柱の中身
- 「コンサル料」等の名目でも書類作成代行が規制対象になる理由
- 依頼先が法人の場合、その法人にも罰金が科されうること
- 事業者側が依頼先を見極めるために今日からできる3つのこと
目次
結論:事業者に新しい義務はありません。変わったのは「頼む側の物差し」です
今回の改正は、行政書士の職責・業務範囲・罰則を明確にするものです。申請者・事業者の側に、新しい届出や手続きが追加されるわけではありません。
ただし、無関係というわけでもありません。改正のポイントを知っておくと、「この人(この会社)に書類作成を頼んで大丈夫か」を判断する材料が増えます。
特に、名目を変えただけの無資格の代行や、電子申請に対応できない依頼先を見分ける視点として役立ちます。
まずは、何が変わったのかを4つのポイントに整理してみましょう。
2026年1月に施行された改正のポイントは4つ
今回の改正(令和7年法律第65号)の柱は、大きく4つです。
| ポイント | 何が変わったか |
|---|---|
| ①デジタル対応の努力義務 | 行政書士の職責(第1条の2)に、デジタル社会への対応が努力義務として新設 |
| ②業務制限の明確化 | 第19条第1項に「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」が加わり、名目を変えた無資格の書類作成代行も規制対象であることが明確化 |
| ③両罰規定の整備 | 業務制限違反について、行為をした本人だけでなく、その法人にも罰金刑が科されうる(第23条の3) |
| ④特定行政書士の業務範囲拡大 | 不服申立てを代理できる書類の範囲が「行政書士が作成した書類」から広がる(第1条の4・研修修了者に限る制度) |

あわせて、この改正法が国の「骨太の方針2026」に初めて明記されたことも、2026年7月に話題になりました。
こちらは改正法そのものの中身ではありませんが、あとで正確な位置づけとともに触れます。
それぞれの中身を、順番に見ていきます。
① デジタル対応が、行政書士の「努力義務」になりました
改正で、行政書士法の第1条の2第2項(職責)に、次の規定が新設されました。
(行政書士法 第1条の2第2項)
行政書士が業務を行うにあたり、情報通信技術(IT)の活用等を通じて国民の利便性向上・業務改善に努める、という努力義務です。
日本行政書士会連合会は会長談話(2026年7月22日)で、これを「士業法で初めて『デジタル社会への対応』に係る努力義務を規定したこと」と位置づけています。
※「士業法で初めて」という位置づけは、日本行政書士会連合会の会長談話による評価です。当事務所で他の士業法との比較調査は行っておらず、この点は同連合会の見解として紹介しています。
【あわせて】国の「骨太の方針2026」に、行政書士法の名前が初めて載りました
2026年7月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2026(骨太の方針2026)」の本文に、行政書士法が登場しました。原文はこうです。
(骨太の方針2026 本文 p.35、脚注161「行政書士法の一部を改正する法律(令和7年法律第65号)では、デジタル化を踏まえた行政書士の使命・職責規定の創設、特定行政書士の業務範囲の拡大、業務制限規定の明確化等が行われた。」)
ここは注意が必要な部分です。この一文が置かれているのは、自治体のデジタル化・地方行財政について書かれた「持続可能な地方行財政基盤の強化」という段落です。
直前の文の主語は「自治体AX/DX…を進める」であり、続く「改正行政書士法を踏まえ、適切な対応を図る」の主体も国・地方公共団体です。
つまりこの記述は、国や自治体の側に「改正法を踏まえて適切に対応してください」と求めているものであり、行政書士個人やAI活用への取り組みを国が後押ししている、という趣旨ではありません。
それでも、日本行政書士会連合会は会長談話(2026年7月22日)でこれを「行政書士制度発足以来初の明記」と表題に掲げ、「行政書士制度の歴史上初めて、国の予算編成方針に位置付けられた」と述べています。国の重要方針に制度の名前が載ったこと自体は、業界にとって一つの節目と言えそうです。
② 「コンサル料」という名目でも、書類作成の代行は規制の対象に
ここからが、依頼する事業者側にとって実務上いちばん関係が深い部分です。改正で、行政書士法第19条第1項(業務の制限)にこの文言が加わりました。
(行政書士法 第19条第1項)
改正前の第19条第1項は「行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第一条の二に規定する業務を行うことができない。」というシンプルな条文でした。ここに「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という句が加わったのが今回の改正です。
契約書の名前が「コンサルティング料」「サポート料」であっても、実質が官公署に提出する書類の作成代行であれば規制の対象になる——ということが、条文の上ではっきりしました。
ここで補助金の申請代行が思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。「行政書士資格を持たないコンサルタント」に申請書類の作成そのものを任せてよいのか、という論点は以前からありました。名目を問わない形に明確化されたことで、この線引きはより意識されるようになりそうです。実際に誰へ申請代行を頼むべきかは「補助金の申請代行は誰に頼むべきか」でも詳しく整理しています。

もっとも、その総務省令(行政書士法施行規則 第20条)が定めている手続は自動車の新規登録・新規検査・継続検査などの電子申請に限られ、行える者も一般社団法人日本自動車販売協会連合会・一般社団法人全国軽自動車協会連合会・一般社団法人日本自動車整備振興会連合会の3団体に限定されています。
建設業許可・補助金申請・在留資格の手続は、この例外に含まれません。「コンサル料という名目にすれば大丈夫」という理屈が通る余地は、実務上ほとんどないとお考えください。
違反した場合の罰則(第21条の2)も定められています。
③ 頼んだ相手が会社なら、その会社にも罰金が科されることがあります
もうひとつ、依頼する側が知っておくとよいのが両罰規定です。行政書士法第23条の3にはこうあります。
(行政書士法 第23条の3)
先ほどの第19条第1項違反(第21条の2)は、この両罰規定の対象です。つまり、無資格で書類作成代行を行った本人だけでなく、その法人にも100万円以下の罰金刑が科されうるということになります。

「会社としてやってもらっただけなのに」では済まない仕組みが、すでに条文上できあがっているわけです。書類作成を外部に任せるときは、相手が個人か法人か、資格を持っているかどうかを、事業者側でも確認しておくと安心です。
なお、こうした申請手続きは、事業者ご自身で行うこと自体は可能です。ただ実際には、思った以上に専門的な判断が必要になる場面が多いのも事実です。建設業許可を自社で申請しようとしてつまずいた例は「建設業許可を自分で申請して失敗した例」、経審を自分で行う場合の手順とつまずきやすい点は「経審を自分でやる場合の進め方」で紹介しています。
④ 特定行政書士の業務範囲が広がりました(制度の話)
最後に、制度としての改正点も簡単に触れておきます。特定行政書士とは、日本行政書士会連合会が定める研修課程を修了した行政書士だけが名乗れる、いわば追加資格です。
特定行政書士は、行政書士が作成できる官公署提出書類にかかる許認可等について、審査請求・再調査の請求・再審査請求といった不服申立ての手続を代理できます(行政書士法 第1条の4第1項第2号)。今回の改正では、この対象範囲が「行政書士が作成した書類」から「行政書士が作成することができる書類」に広がりました。
この業務を行えるのは、あくまで研修課程を修了した特定行政書士に限られる、という制度の枠組み自体は変わっていません。不服申立てのご相談を検討される場合は、対応可能な事務所かどうかを依頼前に直接ご確認いただくことをおすすめします。
ネット上には改正前の条番号のまま書かれた解説も残っているため、条文を確認するときはe-Gov法令検索の現行版で見るのが確実です。
ここまでが、2026年1月施行の改正で変わった中身です。最後に、依頼する側の視点で整理しておきましょう。
事業者側が今日からできる3つのこと
ここまでの内容を踏まえると、事業者側にとって大事なのは「制度を覚えること」より「依頼先を見極めること」です。今日からできることを3つに整理しました。

- ①見積書や契約書に「誰が何をするか」が書いてあるか確認する
「コンサルティング」「サポート」といった名称の契約でも、実際に官公署提出書類の作成まで頼むのであれば、その業務範囲が契約書・見積書に具体的に書かれているかを見ておきましょう。 - ②報酬を払う相手の資格を確認する
行政書士登録の有無は、日本行政書士会連合会や各都道府県行政書士会の名簿で確認できます。名刺や契約書の肩書きだけで判断せず、資格の裏付けを確認する習慣をつけると安心です。 - ③電子申請に対応できる先かを確認する
デジタル対応が努力義務になったとはいえ、事務所ごとの取り組み状況には差があります。オンライン申請・電子契約への対応状況は、依頼前に聞いておいて損はありません。
当事務所では、AIによる下調べ・書類のたたき台作成と、人(行政書士本人)による最終確認を組み合わせた二重チェック体制で、スピードと正確性の両立を図っています。この体制について詳しくは「AI×人の二重チェック相談体制」をご覧ください。
よくある質問
今回の改正で、依頼する事業者側に新しい義務は生じますか?
いいえ。今回の改正は行政書士側の職責・業務範囲・罰則を定めるもので、事業者側に新しい届出や手続きが追加されるものではありません。
「コンサルティング契約」という名目なら、書類作成の代行を任せても問題ありませんか?
契約書の名称ではなく実質で判断されます。実質が官公署に提出する書類の作成代行であれば、名目を問わず規制の対象になり得ます(第19条第1項)。他の法律に別段の定めがある場合や、総務省令で定める例外に該当する場合はこの限りではありません。
無資格の相手に依頼していたことが発覚した場合、依頼した事業者側も罰せられますか?
条文上、罰則(第21条の2)と両罰規定(第23条の3)が定めているのは、無資格で業務を行った本人と、その法人に対する罰金刑です。依頼した事業者側への罰則規定は、今回確認した条文の範囲では見当たりません。
不服申立ての手続きも、行政書士に相談できますか?
制度としては、日本行政書士会連合会の研修課程を修了した「特定行政書士」に限り対応できる業務です。対応可能かどうかは、依頼を検討している事務所に直接ご確認ください。
まとめ
- 2026年(令和8年)1月1日、「行政書士法の一部を改正する法律(令和7年法律第65号)」が施行された
- 改正の柱は4つ。①デジタル対応の努力義務化 ②業務制限の明確化(名目を問わず) ③両罰規定の整備 ④特定行政書士の業務範囲拡大
- 骨太の方針2026への明記は、自治体DXの文脈での言及。行政書士個人への国のお墨付きという趣旨ではない
- 「コンサル料」等の名目でも、実質が書類作成代行なら規制対象。ただし書きの例外もある
- 依頼先が法人の場合、その法人にも罰金刑が科されうる(両罰規定)
- 事業者側に新しい義務はない。変わったのは「誰に頼むか」を見極める物差し
建設業許可や経審、補助金申請といった書類作成を外部に依頼する機会が多い業種だからこそ、依頼先の見極めは経営に直結します。秦野市・伊勢原市・平塚市・厚木市周辺で建設業許可のご相談先をお探しの方は「秦野の地元行政書士による建設業許可サポート」もあわせてご覧ください。
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そんなときは、お気軽にお問い合わせください。😊

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やさしい行政書士事務所(代表行政書士 宮本 雄介)
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・e-Gov法令検索「行政書士法」(第1条の2、第19条、第21条の2、第23条の3等):https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000004
・日本行政書士会連合会 会長談話(2026年7月22日):https://www.gyosei.or.jp/news/20260722
・「経済財政運営と改革の基本方針2026」(骨太の方針2026・2026年7月21日閣議決定)本文PDF:https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2026/2026_basicpolicies_ja.pdf
※本記事は2026年7月28日時点の情報です。実際の手続き・解釈は改正・運用により変わることがありますので、詳細は管轄の行政庁または当事務所へご確認ください。