経審(経営事項審査=公共工事の入札に参加するために必要な、会社の通信簿のような審査)の結果通知書を受け取って、W点の数字だけをじっと見つめていませんか。
「この点数、高いのか低いのか分からない」
「他の会社と比べてどうなんだろう」
「もっと上げたいけど、何から手をつければいいのか分からない」
そう感じている神奈川県央(秦野市・伊勢原市・厚木市など)の建設業の社長・担当者は少なくありません。
W点は、経審の中でも会社の努力次第で短期間に動かせる項目が多いという特徴があります。だからこそ「今の自社がどのあたりにいるのか」という目安を知ることが、次の一手を決める第一歩になります。
やさしい行政書士事務所/代表行政書士 宮本 雄介(神奈川県秦野市)
建設業許可・経審を専門分野の一つとして、神奈川県央エリアの建設業者さまの決算変更届・経審をご支援しています。
- 神奈川県の最新の手引き(令和8年7月1日版)に基づく、W点(W1〜W8)の現行配点一覧
- 自社が加点を取れているかを確認するセルフ診断チェックシート
- 「業界平均」ではなく、目標ランクから逆算して考える目安の使い方
- 令和8年7月1日改正で変わった3点の要点(詳しい解説は別記事へリンク)
なお、W点の計算のしくみそのもの(P点との関係や計算式)は、別記事「経審W点の計算方法」で詳しく解説しています。この記事では、最新の配点一覧・セルフ診断・目標からの逆算の3つに絞ってお伝えします。
目次
1. そもそも経審のW点とは?(一言でいうと)
まず用語を整理します。
- 経審(経営事項審査)=公共工事の入札に参加するために、会社の経営状態を国のルールで数値化する審査のこと
- W点(社会性等)=社員を大事にしているか、法令を守っているか、防災に協力しているかなど、会社の「社会的な取り組み」を点数にしたもの
経審の最終的な点数は「P点(総合評定値)」と呼ばれ、W点を含む5つの要素を、決められた割合(ウェイト)で合計して決まります。
この計算式の詳しい成り立ちは、別記事「経審の点数の計算方法」で図解しています。この記事では、W点はこの5要素のうちの1つにすぎないという大前提だけ押さえておいてください。「W点だけを見ても、会社全体の実力は分からない」のです。
出典:神奈川県『経営事項審査の手引き(令和8年7月1日版)』第1分冊P3の表
2. W点の配点レンジ(神奈川県知事許可・現行)
神奈川県知事許可業者の場合、各要素の点数のレンジ(最高点・最低点)は次のとおりです。
| 項目 | ウェイト | 最高点 | 最低点 |
|---|---|---|---|
| X1(完成工事高) | 0.25 | 2,309 | 397 |
| X2(自己資本額・利益額) | 0.15 | 2,280 | 454 |
| Y(経営状況) | 0.20 | 1,595 | 0 |
| Z(技術力) | 0.25 | 2,441 | 456 |
| W(社会性等) | 0.15 | 2,073 | -788 |
| P(総合評定値) | — | 2,159 | 163 |
W点・P点の最低点は、令和8年7月1日以降の申請からこの数値になりました(改正前はW点-1,837点・P点6点)。W点の最高点2,073点は改正の前後で変わっていません。W点は最低点がマイナスになる項目なので、「加点を取りにいく」以前に、まず該当する減点がないかを確認することがスタートラインです。
出典:神奈川県『経営事項審査の手引き(令和8年7月1日版)』第1分冊P3の表
3.【最新版】W点の配点一覧(W1〜W8・令和8年7月1日以降の申請)
W点は、W1〜W8の区分でできています。以下は令和8年7月1日以降の申請に適用される、現行の配点一覧です。
| 区分 | 評価項目 | 配点 |
|---|---|---|
| W1 | 建設業退職金共済制度(建退共)の加入 | 15点 |
| W1 | 退職一時金制度・企業年金制度の導入 | 15点 |
| W1 | 法定外労働災害補償制度の加入 | 15点 |
| W1 | 若年技術者・技能労働者の育成確保(35歳未満15%以上) | 1点 |
| W1 | 新規若年技術者・技能労働者の確保(新規雇用1%以上) | 1点 |
| W1 | CPD単位取得・技能レベル向上者数 | 最大14点 |
| W1 | ワーク・ライフ・バランス認定(WLB) | 最大5点 |
| W1 | CCUS(建設キャリアアップシステム)就業履歴蓄積措置 | 全工事10点/全公共工事5点 |
| W1 | 建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度 | 5点 |
| W2 | 営業年数 | 0〜60点 |
| W2 | 民事再生・会社更生 | ▲60点 |
| W3 | 防災協定の締結 | 20点 |
| W4 | 法令遵守の状況 | 指示処分▲15点/営業停止処分▲30点 |
| W5 | 建設業の経理(監査の受審状況) | 会計監査人20点/会計参与10点/経理処理の適正を確認した旨の書類2点 |
| W6 | 研究開発費(会計監査人設置会社のみ対象) | 最大25点 |
| W7 | 建設機械の保有状況(現行11機種) | 1台目5点・最大15点 |
| W8 | ISO9001認証 | 5点 |
| W8 | ISO14001認証/エコアクション21 | 5点/3点 |
※雇用保険・健康保険・厚生年金の「加入状況」は、令和8年7月1日の改正で審査項目そのものから削除されたため、この一覧には含まれていません。
※W8のISO14001とエコアクション21は、どちらか一方のみが加点対象で、重複して加点されることはありません。
※CCUSの配点は、CIAC(一般財団法人建設業振興基金)の解説によるものです。
出典:神奈川県『経営事項審査の手引き(令和8年7月1日版)』
4. 令和8年7月1日改正で何が変わったのか(要点3つ)
令和8年2月6日公布・同年7月1日施行の国土交通省告示第262号により、W点の中身が変わりました。申請日(受付日)基準で適用されるため、令和8年6月30日までの申請は改正前の基準のままです。主な変更点は次の3つです。詳しい実務対応は、それぞれ別記事にまとめています。
① CCUS就業履歴蓄積措置の配点引き下げ
民間工事を含む全工事での実施は15点→10点、公共工事のみでの実施は10点→5点に引き下げられました。くわしい要件は「経審のCCUS加点とは」で解説しています。
② 「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の新設(+5点)
CCUSで下がった分の受け皿として、宣言書と誓約書(様式第7号)の提出であわせて5点の加点を得られる制度ができました。宣言日が審査基準日より前であることが条件です。制度の詳細は「職人いきいき宣言(自主宣言)で経審5点加点」で解説しています。
③ 社会保険3項目(雇用・健康・厚生年金)の審査項目からの削除
これまで未加入だと各▲40点(最大▲120点)の減点対象だった雇用保険・健康保険・厚生年金の加入状況は、審査項目そのものから削除されました。適法に加入している会社には、影響はほぼ中立です。
社会保険は、加入していれば加点されるものではありませんでした。未加入だと減点される仕組みで、しかも令和8年7月1日の改正でこの審査項目自体がなくなりました。「社会保険に入るとW点が積み上がる」という理解は誤りです。加入は建設業許可そのものの要件として引き続き必要ですが、W点の加点源ではありません。
あわせて、建設機械の対象機種にも不整地運搬車・アスファルトフィニッシャが加わり、現行は11機種(従来9機種)が対象です。改正全体の背景・影響は「経審W点改正(2026年7月施行)の変更点と影響」でまとめて解説しています。
出典:神奈川県『経営事項審査の手引き(令和8年7月1日版)』、令和8年国土交通省告示第262号
5. 自社のW点、どれだけ取れている?セルフ診断チェックシート
「業界平均のW点は〇〇点」という公式な統計は公表されていません。W点は業種・規模・地域によって大きくばらつくため、平均値そのものに実務上の意味は薄いのです。
そこで実践的なのは、「自社が取れるはずの加点項目を、どれだけ取れているか」を1つずつ確認する方法です。以下のチェックシートで、今の自社の状況を確認してみてください。
| 区分 | 加点項目(自社は取れているか) | 配点 | チェック |
|---|---|---|---|
| W1 | 建退共に加入し、証紙の購入・交付まで行っている | 15点 | □ |
| W1 | 退職一時金制度または企業年金制度がある | 15点 | □ |
| W1 | 法定外労働災害補償制度(上乗せ労災)に加入している | 15点 | □ |
| W1 | 若年技術者・技能労働者が35歳未満15%以上いる | 1点 | □ |
| W1 | 新規に35歳未満を1%以上雇用している | 1点 | □ |
| W1 | CPD単位取得・技能レベル向上者がいる | 最大14点 | □ |
| W1 | WLB(ワーク・ライフ・バランス)認定を受けている | 最大5点 | □ |
| W1 | CCUSで現場・契約情報を登録し、就業履歴を蓄積している(全工事/公共工事のみ) | 全工事10点・全公共5点 | □ |
| W1 | 「建設技能者を大切にする企業の自主宣言」を審査基準日より前に行っている | 5点 | □ |
| W3 | 防災協定を締結している(自社または加盟団体経由) | 20点 | □ |
| W5 | 会計監査人・会計参与を設置している、または経理処理の適正確認書類がある | 20点/10点/2点 | □ |
| W7 | 対象の建設機械(現行11機種)を保有・リースしている | 1台目5点・最大15点 | □ |
| W8 | ISO9001/ISO14001/エコアクション21の認証を取得している | 5点/5点/3点 | □ |
※W4(法令遵守)は減点のみの項目です。指示処分▲15点・営業停止処分▲30点に該当がなければ、それ自体が「問題なし」の状態です。
チェックが少ない項目ほど、伸びしろがある項目です。特に建退共・法定外労災・防災協定は、書類の整備や団体経由の加入といった実務対応だけで、比較的短期間に積み上げやすい項目といえます。次の章で優先順位を整理します。
6. 「目安」の考え方 ― 高ければ良いというものではない
W点を含むP点全体について、大切なのは「点数は高ければ高いほど良いとは限らない」という考え方です。自社が目指す工事規模や入札参加のランク(格付け)に応じて、必要な点数を逆算して狙うのが実務的です。
つまり「W点の目安」とは、絶対的な平均点と比べることではなく、次の順番で考えるものです。
- 自社が狙いたい発注機関・工事規模・ランクを決める
- そのランクに必要なP点(総合評定値)を確認する
- X1・X2・Y・Zの現状点数を踏まえて、W点でどこまで積み増す必要があるかを逆算する
P点とランク(格付け)の関係は、別記事「経審のP点とランクの関係」で詳しく解説していますので、目標設定の参考にしてください。
7. 加点の優先順位|まず何から手をつけるべきか
チェックシートで漏れが見つかったら、次の優先順位で検討することをおすすめします。
難易度が低く効果が高いもの(最優先)
- 防災協定の締結(20点・業界団体経由での加入が現実的)
- CCUSの就業履歴蓄積措置(元請工事が少ない小規模事業者ほど取り組みやすい)
難易度は中程度で効果もあるもの
- 建退共の加入(15点)
- 法定外労働災害補償制度の加入(15点)
- 退職一時金制度(中退共の活用など、15点)
難易度が高く、中長期の取り組みが必要なもの
- ワーク・ライフ・バランス認定(最大5点、社労士との連携が必要)
- ISO9001/エコアクション21(認証取得・維持にコストと工数が必要)
継続的な取り組みが必要なもの
- CPD単位取得・技能レベル向上(技術者の継続学習とCCUS運用が前提)
- 会計監査人・会計参与の設置、経理処理の適正確認
8. 決算前に動くべき理由
経審の点数は、決算の前にはほぼ固まっています。決算が終わってからでは対策できる範囲が限られるため、W点の底上げも含めて期中からの準備が重要です。決算変更届の内容とW点・経審全体は密接に関わっているため、決算変更届の準備を進める際は、あわせてW点のチェックシートも見直してみてください。決算変更届については「決算変更届は自分でできるか」でも解説しています。
出典:神奈川県『経営事項審査の手引き(令和8年7月1日版)』第1分冊、令和8年国土交通省告示第262号(令和8年2月6日公布・同年7月1日施行)
まとめ
- W点はP点(総合評定値)を構成する5要素の1つで、ウェイトは0.15
- 神奈川県知事許可業者の場合、W点は最高2,073点、最低-788点(令和8年7月1日以降の申請)
- 令和8年7月1日改正で、CCUSの配点引き下げ・自主宣言制度の新設(+5点)・社会保険項目の削除が行われた
- 社会保険は加点ではなく減点回避の位置づけで、改正で審査項目自体がなくなった
- 「業界平均」の統計はないため、自社がチェックシートの項目をどれだけ取れているかで現在地を確認するのが実践的
- 目指す工事規模・ランクから逆算して、必要なW点を考えるのが本来の「目安」の使い方
W点の配点や改正は複雑で、自社にとって何を優先すべきかは会社の状況によって変わります。「うちの場合、どこから手をつければいいか分からない」という方は、一度チェックシートの結果を持って相談してみませんか。
W点のセルフ診断結果を見ながら、自社に合った優先順位を一緒に確認しませんか。
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