「永住許可の基準が厳しくなるらしい」——そんな話を聞いて、この記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。
「今、申請の準備を進めているけど、このまま出して大丈夫?」 「もう何年も日本で暮らしているのに、急に足元をすくわれることはない?」
そんな声に、まず結論からお伝えします。2026年8月4日、出入国在留管理庁が公表したのは、あくまで「永住許可に関するガイドライン改定案」です。国民から意見を集める「パブリックコメント」という手続きの真っ最中で、まだ何も決まっていません。
とはいえ、”どんな案が出ているか”を早めに知っておくことは、これからの準備にとってとても大事です。この記事は、永住許可を目指している外国人の方・そのご家族に向けてお届けします。あわせて、神奈川県央(秦野・伊勢原・平塚・厚木エリア)で建設業や飲食業をはじめ、外国人材を雇用している経営者の方にも役立つ内容です。行政書士が一次資料をもとに、整理してお伝えします。
この記事でわかること
- 2026年8月4日に何が公表されたのか(パブリックコメントの仕組みと締切)
- 今の基準(現行ガイドライン)と改定案で、何がどう変わろうとしているのか
- いつから新しい基準が使われる可能性があるのか
- 今のうちからできる準備
執筆・監修:やさしい行政書士事務所 代表行政書士 宮本 雄介
目次
- 📋 結論:2026年8月4日に公表されたのは「永住許可のガイドライン改定案」。まだ確定していません
- 📖 今の基準(現行ガイドライン)は、まだこう定められています
- 🔄 現行→改定案でどう変わろうとしている?比較表で全体像をつかむ
- 🏠 独立生計要件(生活していけるだけの収入や資産)が一番大きく変わろうとしています
- 🌏 国益要件(日本にとってプラスになると認められること)に増える考慮要素
- 🔑 見落としやすい変更点:「就労資格」の範囲が縮み、企業内転勤に影響します
- 💑 配偶者ビザ・実子等の「特例」も年数が伸びる方向です
- 📅 いつから変わるのか?適用時期を正確に理解する
- ✅ 今のうちからできる準備
- 😊 まとめ:まずは”案の中身”を正確に知ることから
- 📞 永住許可のご相談は、やさしい行政書士事務所へ
📋 結論:2026年8月4日に公表されたのは「永住許可のガイドライン改定案」。まだ確定していません
まず、今回の話の性質をはっきりさせておきます。
- 何が起きたか:2026年(令和8年)8月4日(火)、出入国在留管理庁が「永住許可に関するガイドライン改定案」を公表しました。あわせて意見募集(パブリックコメント)が始まりました(e-Gov案件番号315000140)。
- 意見募集の締切:2026年(令和8年)9月3日(木)必着です。
- パブリックコメントとは:役所が新しいルールを作る前に、広く国民から意見を聞く手続きのことです。今回は法律上の義務ではなく、任意の意見募集という位置づけです。
- 位置づけ:2026年1月23日に政府が決定した「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」(施策番号36)の一つとして進められています。
そして、ここが一番大事なポイントです。改定案の文書そのものの書き出しには、こう書かれています。
出入国在留管理庁 平成18年3月31日策定(最終改定令和8年○月○日)
「○月○日」の部分が、公表された時点でまだ空欄のままなのです。いつ改定が正式に決まるのか、その日付そのものが案の段階ではまだ確定していません。
意見募集の結果によっては、内容が変わる可能性もあります。「決まりました」「変わりました」ではなく、「こういう案が示されている」という段階だと理解してください。
📖 今の基準(現行ガイドライン)は、まだこう定められています
改定案の話をする前に、今の基準を確認しておきましょう。現時点で審査されている申請は、この現行ガイドラインに基づいて判断されます。ただし改定後は、収入と公共の負担の2項目だけが審査中の案件にも及ぶ案になっています(詳しくは「いつから変わるのか?」の章で説明します)。
今の基準は、2026年(令和8年)2月24日に改訂された「永住許可に関するガイドライン」です。永住許可を受けるには、大きく3つの要件を満たす必要があるとされています。
- 素行善良要件:法律を守り、社会的に非難されることのない生活を送っていること
- 独立生計要件:生活していけるだけの収入や資産・技能があり、公共の負担にならず、将来も安定した生活が見込まれること
- 国益要件:その人が永住することが、日本にとってプラスになると認められること。原則10年以上の在留、うち5年以上は就労資格または居住資格(=永住者・定住者・日本人の配偶者等など、身分や地位にもとづく在留資格)での在留が考慮されます。あわせて、今持っている在留資格について、規則で定められた最長の在留期間で在留していることも考慮要素の一つです。ただし当面は、在留期間が「3年」でも最長とみなす特例的な扱いがあります(詳しくは後述します)。このほか現行ガイドラインでは、今の在留資格について法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること、公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないことも挙げられています。
このほか、原則10年を待たずに永住申請ができる特例もあります。
- 日本人・永住者・特別永住者の配偶者:実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ引き続き1年以上本邦に在留していること
- その実子等:1年以上本邦に継続して在留していること(配偶者と違い、婚姻年数の要件はありません)
永住許可の要件や必要書類の全体像は、永住許可の条件と書類の全体像で整理しています。あわせてご覧ください。
今回の「改定案」は、この現行ガイドラインを置き換えようとしている”案”です。次の章から、何がどう変わろうとしているのかを見ていきます。
🔄 現行→改定案でどう変わろうとしている?比較表で全体像をつかむ

パブコメで示された改定案は、現行から分量・構成ともに大きく変わっています。現行は「法律上の要件」「特例」の2部構成でした。改定案は「第1 総論」から「第6 適用時期・既存のガイドラインの整理」までの、6部構成に全面的に書き換えられ、これまで別ガイドラインだった「我が国への貢献」の基準も、本ガイドラインの第4に統合されます。
新設された「総論」では、永住者は「生涯を日本で過ごすことが想定される最も安定した法的地位」だから「特に慎重な審査を行う必要がある」と、初めて明記されました。国益要件の考え方も、「単に国益に反しない」という消極的なものでは足りず、「積極的かつ具体的に利益をもたらす必要がある」という、より踏み込んだ表現に変わっています。
まずは、主な変更点を比較表で確認してください。表で書ききれない詳細は、このあと見出しごとに解説します。
| 項目 | 現行(令和8年2月24日改訂) | 改定案(パブコメ中・未確定) |
|---|---|---|
| 独立生計要件・収入 | 具体的な水準の記載なし | 「日本人世帯の平均収入」を上回る水準が基準に(金額の記載はなし) |
| 独立生計要件・年金 | 規定なし | 新設。30年間厚生年金に加入した想定の受給見込額が基準に。不足分は金融資産(補填資産)で補完可 |
| 長期居住・就労資格の範囲 | 除外は「技能実習」「特定技能1号」のみ | 除外に「育成就労」「企業内転勤」「一部の特定活動」を追加 |
| 長期居住・在留資格の最長期間 | 考慮要素にあり(当面「3年」でも最長とみなす扱いあり) | 同じ考慮要素を維持。当面の「3年」特例は条件を絞って存続(後述) |
| 長期居住・不在期間 | 規定なし | 新設。10年以内に1回半年以上の出国、または通算2年6か月以上の不在は原則マイナス評価 |
| 国益要件・新設される考慮要素 | 日本語・制度理解・子の就学・公共の負担などの明記なし | 日本語能力(B1相当)・制度理解・子の就学・公共の負担(独立生計要件が不要な人にも)を追加 |
| 国益要件・既存項目の厳格化 | 納期限内に履行されていない場合は原則消極評価、と明記済み(ただし世帯単位・過去の滞納処分歴・届出義務の過去分の明記はなし) | 届出等の過去の義務違反も原則消極評価と明記。納税等は同一生計世帯単位で審査し、過去の滞納処分歴も明記。少年法の保護処分も対象に追加 |
| 配偶者の特例 | 実体を伴った婚姻生活3年以上+在留1年以上 | 実体を伴った婚姻生活5年以上+在留3年以上 |
| 実子等の特例 | 在留1年以上(婚姻年数の要件なし) | 在留3年以上(婚姻年数の要件なし) |
| 適用時期 | ― | 原則2027年4月1日以降の申請から。収入・公共の負担の2項目だけは改定日の6か月前以降の申請で、改定日時点で審査中の案件にも適用 |
ここから、特に影響の大きい項目を一つずつ見ていきましょう。
🏠 独立生計要件(生活していけるだけの収入や資産)が一番大きく変わろうとしています
独立生計要件とは、かんたんに言うと「生活していけるだけの収入や資産・技能があるか」という要件です。改定案では、この部分の書きぶりが大きく変わろうとしています。
まず前提として、独立生計要件そのものが不要な方もいます。日本人・永住者・特別永住者の配偶者や子、また難民や補完的保護対象者(=難民条約上の難民ではないものの、それに準じて保護が必要と認められた人)として認定されている方です(法律上の扱いです)。ここから説明する収入・年金の話は、独立生計要件が必要な方が対象です。
収入の考え方
改定案では、申請時点の世帯年収を見ます。基準は「世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準」で、改定案はこれを「年収水準」と呼んでいます。この年収水準に、継続して達しているかを考慮する、とされています。
ここで重要な注意点があります。この「日本人世帯の平均収入」が具体的にいくらなのか、改定案には金額の記載が一切ありません。 統計の出典や基準年も書かれていません。ネット上で見かける具体的な数字があっても、それは今回の改定案そのものの記載ではありません。金額は案に示されていません(要確認)。
年金の考え方(新設)
改定案で新しく設けられたのが、年金に関する考慮要素です。考え方はこうです。
まず、年収水準の収入で30年間働き、その間ずっと厚生年金に加入していたと仮定します。その場合に見込める年金額を、改定案は「受給年金水準」と呼びます。この受給年金水準に、申請者本人の実際の受給見込額が達しているかを見る、という仕組みです。
達していない場合でも、道はあります。不足分を補えるだけの金融資産(「補填資産」)を持っていれば、達しているものとして扱われます。補填資産の基準額は、申請時の年齢によって変わります。若い方ほど基準は低くなる、とされています(将来まで資産を形成する時間があるためです)。
この受給年金水準・補填資産についても、具体的な金額は改定案に記載されていません(要確認)。 また、配偶者がいる場合は配偶者の年金見込み額も合わせて判断されるなど、計算はやや複雑になります。
世帯の数え方が結果を左右します
年収水準は「世帯年収」で判断されます。そのため、誰の収入を合算するかがとても重要です。改定案の原文をもとに整理すると、次のようになります。
- 世帯年収=住居と家計を共にする人たちの年収の合算(単身なら本人のみ)
- 成人して親の扶養から外れている人の収入は、親の世帯年収に合算しない
- 「家族滞在」など、就労を目的としない在留資格の人の収入は世帯年収に合算しない(資格外活動=本来の在留資格の目的以外で許可を得て行う就労での収入は、例外的なものだからです)
- 申請者が扶養している親族は、たとえ外国に住んでいても世帯人数にカウントする
- 世帯人数が5人以上になると、年収水準に生活費相当の増加額が加算される(加算額は改定案に記載されていません=要確認)
つまり、同じ年収でも「誰と生計を共にしているか」で、基準を満たすかどうかが変わってくる可能性がある、ということです。
🌏 国益要件(日本にとってプラスになると認められること)に増える考慮要素
国益要件とは、「その人が永住することが日本にとってプラスになると認められること」を指す要件です。改定案では、この考慮要素が大きく増えました。
あわせて、考え方そのものも変わります。「単に国益に反しなければよい」という消極的な基準ではありません。日本にとって積極的かつ具体的なプラスになっているかを問う、より踏み込んだ内容になっています。
日本語能力:「日本語教育の参照枠」のB1相当以上が目安に
新しい考慮要素が加わります。「日本語教育の参照枠」(CEFRをもとにした日本語版の指標)における、B1相当レベル以上の日本語能力です。B1は、日常生活の身近な話題であれば、ある程度自立してやり取りができるレベルの目安です。
ただし、次のような方には、本人にB1相当を求める必要性がないとされ、この要素は考慮されません。
- 高度人材外国人(ポイント制で一定点数以上)本人・その家族
- 日本の初等教育・中等教育(小学校・中学校・高校など)を通算6年以上受けた人
- 永住者の子(親がB1相当以上を持ち、日本で生まれた場合に限る)
なお、B1相当レベルを何で証明するのか(試験名・スコア・提出書類)は、改定案には書かれていません(要確認)。日本語能力試験(JLPT)の何級に当たるか、という説明も改定案の記載ではありません。確定した証明方法は、今後の入管庁の公表を待つ必要があります。
我が国の制度・ルールへの理解
「生活・就労ガイドブック」に書かれている内容を中心に、日本の制度やルールを理解しているかを確認します。これも新しい考慮要素です。
確認方法は「出入国在留管理庁長官が指定する方法」とされています。ただ、その具体的な方法は、改定案の時点ではまだ公表されていません(要確認)。
学齢期のお子さんの就学
義務教育の年齢(学齢期)にあるお子さんを育てている親は、注意が必要です。お子さんが小学校または中学校に通学していることが、考慮要素になります。申請者本人が学齢期にある場合は、本人の通学状況が見られます。
公共の負担:独立生計要件が不要な人にも及ぶ新しい視点
先ほど「独立生計要件が不要」とお伝えした、日本人・永住者・特別永住者の配偶者や子、難民などの方々にも関わる変更です。
改定案では、これらの方にも新しい考慮要素が及びます。実際に公共の負担となっている場合や、そのおそれが現実的な場合には、マイナス評価をすることがある、という内容です。ただし、無条件にマイナス評価になるわけではありません。そうなったことについて特段の事情が認められない場合に限って、マイナス評価をすることがある、という限定がついています。
改定案は、この点にさらに配慮も示しています。「家族単位での在留の安定や、人道的な配慮の観点を重視して総合的に判断する」とも明記されています。一律に切り捨てる、という書き方にはなっていません。
不在期間:長期の出国はマイナス評価に
新設されるのが、不在期間に関する規定です。過去10年以内に、合理的な理由なく1回の出国で半年以上日本を離れていた場合は、原則マイナス評価になります。通算で2年6か月以上不在にしていた場合も同様です。
現行ガイドラインには、この不在期間に関する明文の規定はありません。
見落とされがちな厳格化:過去の履歴と「世帯単位」
新しく加わる項目に目が行きがちですが、実務でいちばん効いてくるのは、もともとあった項目の厳格化かもしれません。
- 義務違反も「過去分」を見る:住居地の届出など、法律で決められた義務を守っているかどうかです。改定案では、今は違反していなくても、過去に義務違反があったと分かれば、原則マイナス評価になる、と明記されました。
- 税金・社会保険料は「世帯単位」でチェック:改定案では、税金や社会保険料(公租公課)の支払い状況を、同一生計世帯単位で審査する、とされています。申請者本人に未納がなくても、一緒に暮らすご家族に過去の滞納処分歴などがあれば、評価に影響する可能性があります。あわせて、申請時点で未納がなくても、過去に滞納処分を受けたことがあれば、原則マイナス評価になる、という点も明記されました。
- 少年法の保護処分も対象に:これまでの拘禁刑・罰金刑に加えて、少年法の保護処分を受けている場合も、原則マイナス評価の対象に加わりました。
税金・社会保険料は必ず期限内に納めることが、これまで以上に重要になります。
🔑 見落としやすい変更点:「就労資格」の範囲が縮み、企業内転勤に影響します
永住許可の要件には、こういうものがあります。「原則10年以上在留し、そのうち5年以上は就労資格または居住資格で在留していること」。この”5年”の対象になる「就労資格」の範囲が、改定案では変わります。
- 現行で除外されているのは「技能実習」「特定技能1号」の2つだけ
- 改定案では、これに加えて「育成就労」(技能実習に代わる新しい在留資格)「企業内転勤」「一部の特定活動」も除外される
つまり、企業内転勤で日本にいた期間は、”就労資格で5年”のカウントに入らなくなる可能性があります。企業内転勤とは、海外のグループ会社から日本の支店・子会社などへ転勤してきた人向けの在留資格です。
注意していただきたいのは、在留していた事実そのもの(10年の方のカウント)には影響しない、という点です。あくまで”5年要件”の対象から外れる、という話です。
建設業・製造業など、海外グループ会社からの転勤者を受け入れている企業にとっても、関わりのある話です。社内で永住を見込んだキャリア設計をしている人材がいる場合は、影響を確認しておくとよいでしょう。
「一部の特定活動」は、どれが対象なのか
同じ「特定活動」でも、指定された活動の内容によって扱いが分かれます。改定案では、この点も整理されました(改定案 第5)。
“5年”の対象になる(就労資格に当たる)もの
- 告示6号(アマチュアスポーツ選手)・8号(国際仲裁代理)・36号(特定研究等活動)・37号(特定情報処理活動)・46号(本邦大学等卒業者)
- EPA看護師・EPA介護福祉士(ただし候補者として在留していた期間は含みません)
対象にならない(就労資格に当たらない)もの
- 告示5号・5号の2(ワーキングホリデー)、9号(インターンシップ)
- 本邦の高等学校を卒業して就職した方
さらに、次の活動は「10年」の期間そのものにも算入されません。継続就職活動/就職内定者/本邦の大学等を卒業して起業活動を行う留学生/難民認定等の手続中/本国の情勢不安を理由に在留が認められている方、です。
外国人材を雇っている会社の、人事・総務のご担当者へ
社員がどの在留資格で在留しているかによって、永住までの道のりが変わる可能性があります。企業内転勤で来ている方、特定活動の方は特にご確認ください。改定案はまだ確定していませんが、今のうちに社内の在留資格の構成を把握しておくと、あとで慌てずに済みます。
在留資格の棚卸しや、永住を見据えた資格変更のご相談も承っています。お問い合わせはこちら
💑 配偶者ビザ・実子等の「特例」も年数が伸びる方向です
日本人・永住者・特別永住者の配偶者や実子等には、原則10年在留を待たなくても永住申請ができる特例があります。改定案では、この特例の年数が伸びる方向です。
| 対象 | 現行 | 改定案 |
|---|---|---|
| 配偶者 | 実体を伴った婚姻生活3年以上+在留1年以上 | 実体を伴った婚姻生活5年以上+在留3年以上 |
| 実子等 | 在留1年以上 | 在留3年以上 |
この「実体を伴った婚姻生活」という言い方は、現行ガイドラインでも改定案でも同じように使われています。書類の上だけでなく、実際に夫婦としての生活があることが前提になる、という意味です。
婚姻年数が今ちょうど4年目前後という方は、注意が必要です。改定の前後どちらのタイミングで申請するかが、大きな分かれ目になり得ます。
なお改定案では、在留特別許可または上陸特別許可(上陸拒否事由に当たる方に限ります)を受けた方には、これらの特例を適用しないことが新たに明記されました。この場合は原則どおり、引き続き10年以上の在留が求められます(改定案 注5)。
配偶者ビザから永住を目指す流れの基本は、永住者の配偶者ビザの解説で解説しています。
📅 いつから変わるのか?適用時期を正確に理解する

ここが、この記事でいちばん実務に関わる部分です。落ち着いて確認していきましょう。
原則は2027年4月1日以降の申請から
改定案の「第6」には、この改定は2027年(令和9年)4月1日以降の申請から適用する、と明記されています。
つまり原則としては、2027年3月31日までに申請すれば今の基準で判断されます(パブコメを経て確定した基準がまだ施行されていなければ、という前提です)。2027年4月1日以降の申請からは、新しい基準が使われることになります。
例外:収入と公共の負担の2項目だけは”審査中”の案件にも
ただし例外があります。対象は、独立生計要件の”収入”の部分と、国益要件の”公共の負担”の部分の2項目だけです。この2項目は、次の2つの条件を両方満たす案件にも適用される、とされています。
- 改定日から6か月前の日以降に申請していること
- 改定日の時点で、まだ審査中(申請中)であること
ここでいう「改定日」は、改定案の本文ではまだ空欄のままです。ただし、入管庁が作成した概要資料には、収入に関する要素について「本年10月施行」と記載されています。この記載を前提にするなら、改定日は2026年10月ごろと読めます。
その前提に立つとどうなるか、考えてみます。たとえば2026年4月1日以降に申請して、2026年10月時点でまだ審査中の案件があるとします。その場合、新しい収入の見方で判断される可能性がある、ということになります。
ただし、これはあくまで概要資料からの推定です。改定日そのものは、案の段階ではまだ確定していません(要確認。官報や入管庁の正式公表を待つ必要があります)。
ここで大事なことを、正確にお伝えしておきます。これは「終わった審査をやり直す」という意味の遡及ではありません。すでに許可・不許可の結果が出た案件を、あとから覆すものではないのです。今まさに審査が続いている案件に対して、新しい基準を当てはめる、という構造だと理解してください。
2027年3月31日という複数の期限が重なる日
もう一つ、押さえておきたい日付があります。前の章で触れた「今持っている在留資格の最長の在留期間で在留していること」という考慮要素のうち、在留期間「3年」の方に関する特例的な扱いです。改定案の注記によると、次のような違いが生じます。
2027年3月31日までの申請:在留期間「3年」を持つ人であれば、条件なくこの特例的な扱いが受けられます。
2027年4月1日以降の申請:次の3つの条件をすべて満たす場合に限って、同様の扱いが受けられます。
- 2027年3月31日の時点で、在留期間「3年」を持っていること
- その申請が、2027年4月1日以降に行う「初めて」の永住許可申請であること
- 2027年4月1日から、その「3年」の在留期限までの間に結果が出ること
つまり2027年3月31日は、複数の意味を持つ集合点になります。一つは「現行基準で判断される申請の締め」(収入・公共の負担を除く)。もう一つは「在留期間3年の特例が無条件で使える申請の締め」。この両方が、同じ日に重なるのです。
入口(許可要件)と出口(取消し)が同じ日に動きます
永住許可の”入口”にあたる今回の改定案は、原則として2027年4月1日から適用するとされています(案の記載であり、確定はこれからです)。
一方で、永住許可の”出口”にあたる制度は、これとは別に、すでに成立した法律とその施行日を定める政令にもとづいて動きます。取消事由の拡大(故意に税金・社会保険料を支払わない場合などが、新たに取消事由に加わる改正)が、2027年4月1日に施行されます。
つまり今回の制度改正には、こういう全体像があります。永住を許可する基準(入口)と、いったん許可された永住を取り消す基準(出口)が、同じタイミングで動くのです。
取消事由の拡大については、永住許可の取り消し事由が拡大(2027年4月〜)で詳しく解説しています。あわせてご確認ください。
💬 ご自身の在留歴や世帯構成にあてはめるとどう見えるか、無料相談で一緒に整理できます。改定案では、2027年3月31日までの申請は、収入と公共の負担の2項目を除いて現行基準で判断されると示されています(案の記載であり、確定はこれからです)。焦って結論を出す前に、まずは現状を確認してみませんか。
✅ 今のうちからできる準備
改定案はまだ確定していません。それでも、今のうちから備えておいて損はないポイントをまとめます。
なお、今回のガイドライン改定案とは別に、永住許可を含む在留手続の手数料を引き上げる政令改正案も出ています。方針では、永住許可の手数料は現在の1万円から20万円に引き上げられ、2026年10月1日受付分から適用される見込みです。ただし、こちらも政令はまだ公布されておらず、確定した金額ではありません(2026年8月上旬時点の当事務所調査)。詳しくは在留資格の更新手数料 値上げはいつから?いくらになる?で解説しています。動くタイミングを考える材料の一つとして知っておいてください。
- 税金・社会保険料は必ず納期限内に払う:あとから納めても、過去の遅れは原則マイナス評価になる、という考え方は現行ガイドラインでもすでに明記されています。改定案でも同じ方向性です。同じ世帯で暮らすご家族の納付状況もあわせて確認しておきましょう。
- 年金の加入状況・見込額を確認する:年金事務所や「ねんきんネット」で、現在の加入状況を確認できます。
- 日本語学習を進める:改定案ではB1相当レベルが一つの目安になる可能性があります。
- 学齢期のお子さんがいる場合は、就学状況を整えておく
- 配偶者ビザから永住を考えている方は、婚姻年数から逆算する:今の基準・改定後どちらのタイミングで動くべきかを検討しましょう。
- 必要書類の準備は早めに:永住許可申請の必要書類リストにまとめています。
- 企業側:企業内転勤で外国人材を受け入れている場合、5年要件への影響を早めに確認しておく
当事務所でご相談いただいた場合の進め方
永住のご相談をいただいたときは、当事務所では次の順番で状況を整理しています。
- 年金の加入状況・納付履歴を確認する(ねんきん定期便・ねんきんネットの記録を拝見します)
- 世帯構成を確認する(誰の収入を合算すべきか、扶養している親族の有無)
- 過去10年の出入国履歴を確認する(不在期間が基準に触れないか)
- お持ちの在留資格が、5年要件の対象になる「就労資格」に当たるかを確認する
永住許可申請の報酬は142,780円(税込)です(2026年8月時点の当事務所料金)。ほかの手続きの料金は料金表でご確認いただけます。まずは無料相談で、現在の状況を一緒に整理するところから始めましょう。
😊 まとめ:まずは”案の中身”を正確に知ることから
最後に、この記事のポイントを整理します。
- 2026年8月4日に公表されたのは、あくまで「永住許可のガイドライン改定案」。パブリックコメント手続き中で、締切は9月3日必着。まだ確定していません
- 現時点で審査されている申請は、現行ガイドライン(令和8年2月24日改訂)に基づいて判断されます(ただし改定後は、収入と公共の負担の2項目だけが審査中の案件にも及ぶ案です)
- 独立生計要件では、収入・年金の考え方が大きく変わろうとしていますが、具体的な金額は改定案に記載されていません
- 国益要件には、日本語能力・制度理解・子の就学・公共の負担・不在期間などの新しい項目に加えて、義務違反や納税の”過去分”を見る、というもともとの項目の厳格化も加わります
- 「就労資格」の範囲が縮み、企業内転勤の期間が5年要件に入らなくなる可能性があります
- 配偶者・実子等の特例は、年数が伸びる方向です
- 適用は原則2027年4月1日以降の申請から。収入・公共の負担の2項目だけは、審査中の案件にも及ぶ可能性があります
制度の正確な理解が、いちばんの安心材料です。焦って判断する必要はありません。ただ、「知らなかった」で不利益を受けないよう、早めに現状を整理しておくことをおすすめします。
📞 永住許可のご相談は、やさしい行政書士事務所へ
「自分の場合はどうなるのか」「今の基準のうちに動くべきか、改定を待つべきか」。これは、一人で判断するのが難しいところです。
今回の改定案の内容や、ご自身の状況の整理について、まずはお気軽にご相談ください。相談だけでも構いません。電話が難しい方は、フォームやLINEからでも受け付けています。
やさしい行政書士事務所 代表行政書士 宮本 雄介 〒257-0003 神奈川県秦野市南矢名2123-1 オレンジハイツ今井2E
- 電話:0463-57-8330(無料相談受付中)
- メール相談:お問い合わせフォーム
- LINE相談:やさしい行政書士事務所 公式LINE
※本記事は2026年8月7日時点の情報に基づいています。「永住許可に関するガイドライン改定案」はパブリックコメント手続き中であり、意見の内容によって今後変わる可能性があります。最新の情報は下記の一次資料でご確認ください。
【出典】
e-Govパブリック・コメント 案件番号315000140「永住許可に関するガイドライン改定案に係る意見募集について」(令和8年8月4日公示)https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=315000140&Mode=0
出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン改定案」本文および「改定案の概要」(上記e-Gov案件の添付資料)
出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和8年2月24日改訂)」(現行の基準)https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan50.html
出入国在留管理庁「手数料改定の案内」(在留手続手数料の政令改正案・本文中の手数料引き上げの出典)https://www.moj.go.jp/isa/01_00518.html