「そろそろ法人化した方がいいのかな」
個人事業として建設業を営んでいる方から、この相談をよく受けます。
売上が伸びてきた。従業員が増えた。取引先から「法人でないと契約できない」と言われた。
きっかけは人それぞれです。でも、いざ法人化しようとすると、税理士さんの記事には「税金がいくら安くなるか」ばかり書いてあって、肝心なことが抜けています。
それは、建設業許可をどうやって法人に引き継ぐかという問題です。
法人化の手続きと建設業許可の引き継ぎ手続きは、別物です。タイミングを間違えると、法人化した瞬間に「建設業許可がない状態」になってしまうこともあります。
この記事では、建設業許可を専門にする行政書士の視点から、
- 建設業を法人化すべきタイミングの見極め方
- 許可を切れ目なく引き継ぐための手続き(承継認可制度)
- 神奈川県で進める際の実務スケジュール
を、順番にわかりやすく解説します。神奈川県央エリア(秦野市周辺)で建設業を営む個人事業主の方を想定して書いています。
※本記事は、神奈川県県土整備局「神奈川県建設業許可申請の手引き」(令和8年度版)および日本行政書士会連合会「建設業法と建設業許可」(第3版)に基づき、やさしい行政書士事務所(代表行政書士 宮本雄介)が執筆・監修しています。
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目次
1. まず知っておきたい大前提:建設業許可は「人」ではなく「会社」につく
法人化を考えるとき、多くの方が見落とすポイントがあります。
それは、個人事業主としての建設業許可と、新しくつくる法人の建設業許可はまったくの別物だということです。
同じあなたが経営していても、「個人」と「法人」は法律上まったく別の存在として扱われます。
そのため、何も手続きをせずに法人化すると、個人の許可は個人のまま残り、新しい法人には許可がありません。
つまり、法人化した瞬間から、その法人は「建設業許可なしの状態」になってしまうのです。
これでは、500万円以上の工事(建築一式は1,500万円以上、または延べ面積150㎡未満の木造住宅以外)を新法人として請け負えません(軽微な建設工事の基準は神奈川県手引きに基づきます)。
ここを埋める制度が、次に説明する「承継認可制度」です。
2. 法人化と同時に考えるべき「建設業許可の引き継ぎ」

2-1. 承継認可制度とは
令和2年10月に施行された改正建設業法で、建設業許可の「地位」を引き継ぐ承継認可制度が新設されました。
対象は、事業譲渡・合併・分割・相続です。そして、個人事業主の法人成り(法人化)にもこの制度が使えます。
事前に認可を受けることで、許可が途切れる「空白期間」を作らずに、個人から法人へ許可を引き継げます。
引き継ぎの際、以下のメリットがあります。
- 許可番号を原則そのまま引き継げる
- 許可の有効期間が、承継日の翌日から新たに5年間になる
- 承継認可の申請手数料は無料
法人成りの場合は、個人事業主とこれから設立する(または設立済みの)法人との間で「譲渡・譲受け」の契約を結び、承継認可を申請する形になります。
2-2. 承継認可を使わないとどうなるか
ここが一番の落とし穴です。
承継認可の申請を行わずに法人化した場合、法人は新規の建設業許可申請をやり直すことになります(神奈川県手引き 第2章)。
新規許可申請には、標準的な処理期間としておよそ50日(補正期間は含みません)かかります。手数料も9万円〜18万円と、承継認可(無料)より高くつきます。
この間、新法人は許可がない状態が続くため、500万円以上の工事を新規に請け負えません。
「気づいたら大きい工事を法人名義で契約できない」——これが、タイミングを誤った法人化でよく起きる事態です。
3. 建設業を法人化すべき3つのタイミングサイン

では、いつ法人化を検討すべきなのでしょうか。行政書士として現場で見ている、代表的な3つのサインを紹介します。
3-1. 工事の規模・取引先の要求が大きくなってきた
元請けや金融機関から「法人でないと契約・融資が難しい」と言われ始めたら、検討のタイミングです。
ただし注意点があります。新しく設立する法人は、個人事業のときの営業実績を引き継げません。
建設業許可の財産的基礎要件(一般建設業)は、自己資本500万円以上・または500万円以上の資金調達能力・もしくは過去5年間の継続営業実績のいずれかを満たす必要があります。
新設法人は「過去5年の継続営業実績」が使えないため、自己資本500万円以上か、資金調達力500万円以上を用意する必要がある点は事前に確認しておきましょう。
3-2. 従業員を雇い、社会保険加入の対応が必要になった
令和2年10月の改正以降、社会保険への適切な加入は建設業許可の要件そのものになっています。
法人化すると、健康保険・厚生年金への加入義務が生じる範囲が広がります。人を雇う体制が整ってきたタイミングは、法人化の自然な節目です。
(社会保険の加入区分の詳細な線引きは個々の雇用形態によるため、社会保険労務士への確認もあわせておすすめします=要確認)
3-3. 公共工事の入札に挑戦したい
公共工事の入札に参加するには、経審(経営事項審査=公共工事の入札に参加するために必要な、会社の点数評価)を受ける必要があります。
経審は法人・個人どちらでも受けられますが、点数の評価項目や今後の拡大戦略を考えると、法人化のタイミングで経審の受審準備も同時に検討する事業者が多いです。
経審の点数の上げ方や技術職員の評価については、別記事「経審 P点 ランクの上げ方」でくわしく解説していますので、あわせてご覧ください。
4. 神奈川県で法人化+許可承継を進める実務スケジュール
4-1. 承継日の3か月以上前が申請の目安
神奈川県手引きでは、事業譲渡等による承継認可の申請について、承継日の3か月以上前を目安に申請することが推奨されています。
直前に申請すると、承継日までに認可が間に合わず、結果的に一度廃業してから新規許可を取り直す事態になりかねません。
法人設立の日程を決める前に、まず建設業課への事前相談から動き出すのが安全です。
4-2. 経営業務管理責任者・専任技術者の体制を法人側で再確認する
法人化しても、経営業務管理責任者(経管)としての経験年数(原則5年以上)や、専任技術者の資格・常勤性の要件は、法人としてあらためて満たす必要があります。
個人事業主本人が法人の代表者・役員になる場合、経管の経験確認資料として確定申告書控えなども使われるため、個人時代の経営経験がそのまま評価につながるケースが一般的です(ただし最終的な可否は許可行政庁の個別確認によるため、事前相談での確認をおすすめします=要確認)。
専任技術者についても、法人の営業所に常勤する体制になっているかをあらためて確認します。
4-3. 決算期・決算変更届のタイミングも合わせて設計する
建設業許可業者は、毎事業年度終了後4か月以内に決算変更届を提出する義務があります。
法人化のタイミングと決算期の設計を合わせておくと、承継後の初回の決算変更届もスムーズです。
なお、法人化そのものにかかる費用(登記費用・定款認証費用等)は、別記事「建設業 法人化 費用」で詳しく整理していますので、そちらをご参照ください。法人化のメリット全般は「建設業 法人化 メリット」でも解説しています。
5. まとめ:タイミングの判断基準
建設業の法人化タイミングは、次の3点をセットで考えるのが正解です。
- 事業のサイン:取引先の要求・社会保険対応・入札挑戦など、法人化が必要になった理由
- 許可の引き継ぎ:承継認可制度を使えるか、使う場合は承継日の3か月以上前から準備できるか
- 要件の再確認:財産的基礎・経管・専任技術者の体制が、法人としても満たせるか
この3つがそろって初めて、「空白期間なく」「無理のないスケジュールで」法人化できます。
税理士さんは税務面の最適タイミングを教えてくれますが、許可が途切れないタイミングまで一緒に見てくれるとは限りません。この視点こそ、建設業許可を専門とする行政書士の役割です。
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法人化のタイミング、迷ったら一度ご相談ください
「うちの場合、いつ法人化するのがベストか」は、事業の状況や許可の内容によって変わります。
やさしい行政書士事務所では、建設業許可の新規・承継・経審まで一貫してご相談いただけます。まずは無料相談で、今の状況を整理するところから始めませんか。
お電話でのご相談:0463-57-8330(やさしい行政書士事務所/代表行政書士 宮本 雄介)
「今すぐ法人化するべきか分からない」という段階でもかまいません。お気軽にお問い合わせください。