まとめ

経審の点数の上げ方|P点が低い原因と加点策を行政書士が解説

上昇グラフの前で電卓を持つ猫のマスコット

執筆・監修:やさしい行政書士事務所 代表行政書士 宮本 雄介(執筆・監修者について

経審(経営事項審査)の結果通知書を見て、「同業他社より点数が低い気がする」「去年と同じ経営をしているのにP点が下がった」と不安になっていませんか。

P点(総合評定値)は公共工事の入札ランクに直結する数字です。そして実は、点数が低い会社の原因はかなりパターン化されています。経審の点数は、やみくもに頑張っても上がりません。

P点は5つの評点にウエイトを掛けて合計する仕組みなので、「どの評点を・どの対策で・何点動かすか」を決めてから動くのが近道です。原因さえ特定できれば、コストをほとんどかけずに点数を伸ばせる余地が残っているケースも少なくありません。

この記事では、神奈川県の手引き(令和8年4月1日版)と経審の専門書(令和5年改正対応)をもとに、建設業に取り組む行政書士が「点数が低くなる典型原因のチェックリスト」→「P点の計算の仕組み」→「費用対効果の高い上げ方」の順に解説します。

「うちの経審の点数、なぜ低い?」——まずは原因チェックリスト

結論からお伝えします。経審の点数が低い会社には、次のような典型原因があります。心当たりがないか、まずはチェックしてみてください。

  • 社会保険関係の取りこぼしがある……雇用保険・健康保険・厚生年金は、未加入1項目につきP点換算で約53点という大幅な減点です。W点は下限ゼロが撤廃されており、マイナスのままP点全体を引き下げます(そもそも現行制度では、未加入だと許可・経審の前提自体を満たしません)
  • 令和5年改正後の新しい加点項目に何も取り組んでいない……W点の換算係数が1900/200から1750/200に切り下げられたため、CCUSなど新しい項目に取り組まない会社は、従来と同じ取組のままだと点数が目減りする構造になっています
  • 自己資本が薄い・債務超過になっている……X2評点と経営状況(Y点)の複数の指標が同時にマイナス評価になります
  • 赤字工事で売上だけを増やしている……現行の経審は完成工事高より利益を重視する設計のため、X1が増えても利益系の評価が下がれば、P点は思うように上がりません
  • 借入金が多く、支払利息がかさんでいる……Y点で寄与度が最大(約30%)の「純支払利息比率」が悪化します
  • 技術職員のカウント漏れがある……監理技術者講習が未受講の1級資格者は素点6点ではなく5点止まり。審査基準日以前6か月を超える恒常的雇用でない中途入社者は対象外。1人2業種までの振り分けミスも取りこぼしの原因です
  • 完成工事高の計上漏れがある……設置工事を伴う資材・設備の販売を兼業売上に計上してしまう例が典型です。2年平均・3年平均の不利な方の選択、関連業種の積上げ計算の未活用も同様です
  • 営業年数が浅い・法的整理の経歴がある……営業年数5年以下は素点0点。民事再生等は減点に加えて営業年数がリセットされます
  • 決算変更届と数字が合っていない……審査の過程で決算変更届の修正を求められるケースが多いと、神奈川県の手引きでも冒頭で注意喚起されています

原因は大きく「財務」「技術職員」「W点(社会性)」「手続き上の取りこぼし」の4系統に分かれます。どの系統に原因があるかで打つべき手が変わるので、次に「どこを動かすと点が伸びやすいのか」を計算の仕組みから確認しましょう。

経審のP点の計算方法——5つの評点と計算式

「経審 P点 計算」と検索すると複雑な式が出てきますが、骨格はシンプルです。P点(総合評定値)は、次の式で計算します。

P = 0.25×X1 + 0.15×X2 + 0.20×Y + 0.25×Z + 0.15×W

P点(総合評定値)の構成ウエイト:X1完成工事高25%・X2自己資本15%・Y経営状況20%・Z技術職員25%・W社会性15%
記号 審査項目 ウエイト 最高点 最低点
X1 完成工事高(許可業種別) 25% 2,309 397
X2 自己資本額・平均利益額 15% 2,280 454
Y 経営状況(財務指標8つ) 20% 1,595 0
Z 技術職員数・元請完成工事高(許可業種別) 25% 2,441 456
W その他審査項目(社会性等) 15% 2,073 −1,837
P 総合評定値 2,159 6

出典:神奈川県「経営事項審査の手引き(令和8年4月1日版)」。配点・係数は法改正や年度により変わるため、申請時は最新の国土交通省・都道府県の公表資料をご確認ください。

同じ会社でも、業種ごとにP点は違う

X1とZは許可業種ごとに計算し、X2・Y・Wは全業種共通です。専門書の計算例では、共通部分454点に業種別の点数を足した結果、同じ会社で土木一式904点・建築一式1,004点と、業種間で100点の差が出ています。

つまり「どの業種の点数を上げて、どの入札に入りたいのか」を先に決めることが、対策選びの出発点になります。

どこを動かすと何点動くのか——ウエイトの読み方

  • X1+Zで全体の50%。完成工事高と技術職員は、依然として点数の大きな柱です
  • Zの中身は「技術職員数8割・元請完成工事高2割」。P点全体でみると技術職員数が約20%を占める一方、元請完成工事高は約5%にとどまります。技術者の確保・資格アップの比重が大きい構造です
  • 中小企業はY点とW点が狙い目。建設業者の9割以上を占める中小では規模(X・Z)に差がつきにくい一方、Y点は経営状態の良し悪しで評点500点程度(P点換算で100点程度)の差が出るとされます。W点はウエイト15%ながら1項目の上下がP点に与える影響が大きく、短期間で動かしやすい項目です

経審の点数の上げ方——費用対効果の高い順に

ここからが本題です。やみくもに全部やる必要はありません。手間・コストに対して何点動くかで優先順位をつけるのが基本です。なお、経審の審査基準日は申請直前の決算日なので、評点は決算日時点の状態で判定されます。決算期を過ぎてからでは間に合わない項目が多いため、着手は決算期の前が原則です。

①即効性が高いW点対策(1決算期で反映しやすい)

即効性が高いW点対策:防災協定+26点、CCUS・建退共・退職金制度・法定外労災・建設機械 各+20点の目安
対策 P点換算の目安 ポイント
防災協定の締結 +26点 防災協定を締結している建設業者団体への加入が現実的な経路。ただし「加入しただけ」では足りず、自社が防災活動で役割を担うことの確認が必要です
CCUSの就業履歴蓄積 +20点(民間含む全元請工事)/+13点(全公共工事) 現場登録・カードリーダー等の整備・誓約書が要件。対象工事が1件でも漏れると0点という厳格さの一方、元請工事が少ない会社ほど達成しやすい構造です
建退共への加入 +20点 特定業種退職金共済契約の締結で加点されます
退職一時金制度または企業年金 +20点 どちらか一方で可(両方でも合算なし)。就業規則等への退職手当の定めの明記でも対象になります(就業規則の作成・変更は社会保険労務士の業務領域です)
法定外労働災害補償制度 +20点 労災の上積み補償。民間保険等との契約で可。政府労災に未加入だと加点されません
建設機械の保有・リース 最大+20点 1台目から加点。令和5年改正で対象がダンプ・高所作業車・解体用機械など8機種に拡大。1年7か月超のリースも対象です
監理技術者講習の受講 1級資格者1人につき素点5点→6点 資格者証の修了記載が審査基準日時点で有効であることが条件です

※P点換算値は令和5年改正後の基準による目安です(出典:『建設業 経営事項審査制度 評点アップ対策』(令和5年改正対応)、神奈川県手引きほか)。令和8年7月1日以降の申請からはW点の基準が改正される予定のため、最新の公表資料で確認のうえ取り組んでください。

多くの会社でまず候補になるのは、防災協定・CCUS・退職金系の3つです。逆方向にも注意が必要です。社会保険の未加入は1項目につきP点換算で約53点の減点で、W点のマイナスがそのままP点全体を引き下げます。加点策の前に、まず減点要因をゼロにすることが先です。

②財務の対策——Y点・X2は経営改善と直結する

Y点は8つの財務指標で決まりますが、寄与度には大きな偏りがあります。純支払利息比率(約30%)と総資本売上総利益率(約21%)の2指標が突出しており、支払利息の圧縮と粗利益の改善がY点対策の中心です。

  • 借入金の圧縮・借換え……定期預金・積立の取り崩しや遊休資産(投資有価証券・使っていない土地)の売却資金による返済、低金利の公的資金への借換えで、純支払利息比率を改善します
  • 会計処理の見直し……手形売却損を支払利息から振り替える、信用保証料の翌期分を前払費用に振り替えるなど、処理の整理だけで指標が改善することもあります(会計処理の変更は決算・税務に影響するため、顧問税理士にご確認ください。経審用財務諸表への組替えは当事務所で対応します)
  • 赤字覚悟の受注をやめる……完成工事高(X1)が増えても、利益関係の評価が下がりP点は伸びません
  • 増資によるX2対策……短期的な自己資本対策として専門書が挙げる方法です。ただし法人住民税の増加など税務上の影響があるため、税理士との協議が前提です(税務のご相談は提携税理士をご紹介します)
  • 資本性借入金の自己資本算入……令和7年7月1日以降の申請から、要件を満たす資本性借入金を自己資本とみなせる扱いが始まっています(審査基準日が令和7年3月31日以降・単独決算の申請者限定。証明書類の添付が必要)

③完成工事高(X1)の取りこぼしを防ぐ

  • 2年平均と3年平均の有利な方を選択する(業種間での混合は不可)
  • 設置工事を伴う資材・設備の販売は、兼業売上ではなく完成工事高に計上できないか確認する
  • 専門工事から一式工事への積上げ計算を検討する(積上げに使った業種は総合評定値を取れなくなるほか、審査庁により取扱いが異なるため事前確認が必要です)
  • 工事進行基準の採用で、期末の未成工事を完成工事高に計上する方法もあります

④中長期で効く加点策

  • 技術職員の資格アップ……配点は「1級+監理技術者講習6点/1級5点/1級技士補4点/登録基幹技能者・CCUSレベル4は3点/2級・レベル3は2点」(1人あたり素点)。施工管理技士の一次試験合格で技士補になれるため、人数を増やすより今いる職員の上位資格化が基本です
  • ワーク・ライフ・バランス認定……くるみん+4点、最高でP点換算+7点。取得まで6か月〜1年が目安のため、社会保険労務士と連携して計画的に進めるのが現実的です(建設業では取得企業が少なく差別化になります)
  • ISO認証……ISO9001で+7点、ISO14001で+7点(両方で+13点)。エコアクション21は+4点ですが、ISO14001との重複加点はできません
  • 元請比率の向上……Zの元請完成工事高に効きます。短期では難しいものの、身の丈に合った元請工事を継続的に獲得していく方向性が国の制度設計とも一致します

神奈川県で経審を受けるときの実務上の注意

神奈川県知事許可の業者さまは、次の点もあわせて押さえておいてください。

  • 結果通知の有効期間は審査基準日から1年7か月。毎年切れ目なく受審しないと、公共工事を直接請け負えない空白期間が生じます
  • 審査基準日は申請直前の決算日。対策の効果は「決算日時点の状態」で判定されます
  • 手数料は総合評定値の請求ありで1業種11,000円+追加1業種につき2,500円です(知事許可。業種数により変動します)
  • 令和8年7月1日以降の申請からW点の改正が適用されます。現行基準での結果通知を希望する場合は、令和8年6月30日以前の申請が必要とされています
  • 常勤性の確認資料として、紙の健康保険証は令和7年12月1日以降使えません。原則は社会保険の標準報酬決定通知書です
  • 虚偽申請は営業停止処分等の対象です。点数を「作る」のではなく、実態を整えて取りこぼしを拾うことが大前提です

出典:神奈川県「経営事項審査の手引き(令和8年4月1日版)」。手続の詳細は年度により変わることがあります。

経審の点数対策は「決算変更届」とワンセット

見落とされがちですが、経審の数字の土台は毎年提出する決算変更届(事業年度終了届)で、審査では決算変更届と数字が突合されます。工事経歴書の業種振り分けや財務諸表の数字が経審の申請内容とずれていると、審査の途中で修正を求められ、結果通知もその分遅れます。

つまり、毎年の決算変更届を「期限内に・経審を見据えた振り分けで」出しておくことが、P点対策の土台です。出し忘れている・内容に自信がないという場合は、まずそちらの整理が先になります。詳しくは「建設業の決算変更届を出し忘れるとどうなる?」をご覧ください。

まとめ——P点対策は決算期の「前」が勝負

経審の点数の上げ方は、①計算式で自社の弱い評点を特定する → ②ウエイトと費用対効果で対策を選ぶ → ③決算期前に着手する、の3段階です。

  • 点数が低い原因はパターン化されている。まず減点要因(社会保険・決算変更届の不整合)をゼロに
  • 即効性で選ぶなら防災協定・CCUS・建退共・退職金制度・法定外労災・建設機械などのW点対策
  • 財務は支払利息の圧縮と利益重視の受注がY点に効く
  • 評点は決算日時点で判定されるため、動くのは決算期の前
やさしい行政書士事務所のマスコット猫

「うちの場合、どれから手を付けると何点くらい動くのか」——ここは決算書と技術者構成を見ながらの個別判断になります。やさしい行政書士事務所は、神奈川県秦野市を拠点に建設業許可と経審のスコア改善を支援しており、直近の経審結果通知書と決算書を拝見できれば、どの評点に・どれくらいの伸びしろがあるかの当たりづけを無料で診断します。入口の診断・初回のご相談は無料です(正式にご依頼いただく場合の費用は、事前にお見積りでご案内します)。

毎年の経審とP点引き上げ戦略を継続的に任せたい方には、顧問契約「公共事業参入プラン」もご用意しています(入札参加資格申請は自治体ごとに別途お見積り)。最新の月額・内容は料金表をご覧ください。

やさしい行政書士事務所/代表行政書士 宮本 雄介(登録番号 第12082434号)

〒257-0003 神奈川県秦野市南矢名2123-1 オレンジハイツ今井2E 電話 0463-57-8330

本記事は2026年6月時点の制度・基準(令和5年改正後の評点基準、神奈川県手引き 令和8年4月1日版等)に基づきます。経審の配点・運用は法改正や年度により変わるため、申請時は国土交通省・神奈川県の最新の公表資料をご確認ください。税務は税理士、労務・認定取得は社会保険労務士、登記は司法書士、紛争性のある案件は弁護士の業務領域のため、必要に応じて提携専門家をご紹介します。

ABOUT ME
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宮本 雄介
やさしい行政書士事務所 代表。行政書士(登録番号 第12082434号/神奈川県行政書士会所属)。2011年に行政書士試験に合格し、2012年に開業。以来1,000件以上の相談に対応してきました。建設業許可・経営事項審査(経審)、補助金、会社設立、在留資格、相続を取り扱い、なかでも神奈川県の建設業者の許認可を得意としています。弁護士事務所・社労士事務所での実務経験と、複数企業の社外取締役の経験を持ち、手続きの代行だけでなく経営の視点からも助言します。神奈川県秦野市を拠点に、県内の事業者をサポートしています。