執筆・監修:やさしい行政書士事務所 代表行政書士 宮本 雄介(登録番号 第12082434号)|執筆・監修者について
「個人事業主のまま続けるか、そろそろ会社を設立するか」。事業が軌道に乗ってきた方なら、一度は悩むテーマです。ネット上の比較記事は税金や社会保険の損得が中心ですが、建設業など許認可で仕事をしている方には、その前に確認すべき大事な論点があります。
それが「個人で取った許認可は、法人に自動では引き継がれない」という事実です。この記事では、会社設立と個人事業主の違いを比較表で整理したうえで、行政書士の視点から「法人成りと許認可の引継ぎ」「タイミング設計」を詳しく解説します。
目次
結論:会社設立と個人事業主の違い【比較表】
まず全体像です。主な違いは次の5点に整理できます。
| 項目 | 個人事業主 | 法人(株式会社) |
|---|---|---|
| 開業・設立手続 | 届出中心で比較的シンプル | 定款作成→公証役場で定款認証→出資金の払込み→法務局へ設立登記 |
| 法定費用 | 設立登記が不要なため、登記関係の法定費用はかからない | 定款認証手数料1万5,000円〜5万円+登録免許税15万円〜(資本金の額等による。詳細は本文) |
| 信用・契約 | 事業主個人の名義で契約する | 法人名義。商号・役員等が登記され、登記事項証明書で確認できる |
| 責任 | 事業上の債務は個人が負う | 株主の責任は原則として出資の範囲 |
| 許認可 | 事業主本人に付与される | 自動では引き継がれない。承継手続または新規取得が必要 |

各論:信用・責任・手続と費用
信用・契約の違い
法人は商号・本店・役員などが登記され、登記事項証明書で誰でも確認できます。取引先から見て「実体を確認できる相手」であることが、法人の信用の土台です。
- 契約・請求・口座が法人名義になり、事業の財産と個人の財産が区別される
- 元請や金融機関によっては、法人であることが取引の前提になる場合もある
責任の違い
個人事業主は、事業上の債務について個人として責任を負います。一方、株式会社の株主は原則として出資した範囲で責任を負う仕組みです。ただし代表者が個人保証をすれば実質的な負担は変わらないため、「法人にすれば責任が消える」という過信は禁物です。
手続と費用の違い
株式会社の設立は、おおまかに次の流れで進みます(詳細は法務局の申請書様式ページ参照)。
- 定款の作成(目的・商号・本店所在地・出資される財産の価額等・発起人の氏名住所が必須記載事項)
- 公証役場での定款認証(株式会社の場合)
- 出資金の払込み(払込みを証する書面が登記の添付書類になります)
- 法務局への設立登記申請
- 設立後の税務・社会保険関係の届出(期限・内容は税理士・社労士・各官庁にご確認ください)
法定費用は次のとおりです。
- 定款認証手数料:資本金100万円未満は3万円(発起人全員が自然人で3人以下である等の要件を満たす小規模設立は1万5,000円)、100万円以上300万円未満は4万円、その他は5万円〔出典:日本公証人連合会〕
- 登録免許税:資本金の額×1,000分の7で、株式会社は最低15万円。合同会社は最低6万円〔出典:国税庁タックスアンサーNo.7191〕
なお、設立登記の申請は行政書士の業務範囲外のため、当事務所は定款作成・電子定款認証までを担当し、登記は提携司法書士が行う体制で対応しています。設立手続の全体像は姉妹記事「会社設立の流れ」で詳しく解説しています。
法人成りで許認可はどうなる?【ここが本記事の核心】
許認可は「事業主本人」に与えられたものなので、法人という別人格には自動で移りません。法人成りの計画は、許認可の引継ぎ設計とセットで考える必要があります。
建設業許可:承継認可で引き継げるが「事前認可」が必須
かつては「個人の許可を廃業→法人を設立→法人で新規申請」とするしかなく、許可の空白期間が生じていました。令和2年10月1日施行の事業承継制度により、現在は「譲渡・譲受け」の認可を受けることで、法人成りでも許可を引き継げます。
- 事前認可が必須:承継日より前に認可が必要。直前の申請では間に合わず「廃業→新規申請」になってしまう
- 許可業種の全部承継のみ可能(一部だけの承継は不可)
- 認可申請の手数料は不要
- 許可番号は個人時代のものを引き継ぎ、有効期間は承継日の翌日から起算して5年間
- 経営事項審査の結果や監督処分も法人に承継される
神奈川県では審査期間が概ね50日とされ、承継日の3か月以上前を目安に申請、事前相談は4か月程度前が推奨されています。建設業許可の基本は「秦野市の建設業許可サポート」を、法人化後に毎期必要となる決算変更届は「決算変更届は自分でできる?」をご覧ください。
解体工事業登録:引き継げないため法人で新規登録
土木一式・建築一式・解体工事業の建設業許可を持つ場合を除き、500万円未満の解体工事のみを請け負う場合でも、建設リサイクル法に基づく解体工事業登録が必要です。この登録は建設業法の承継認可制度の対象ではないため、法人成りの際は法人として新規に登録することになります。空白期間で工事が止まらないよう、設立スケジュールと合わせた段取りが重要です(最新の取扱いは神奈川県の案内でご確認ください)。
飲食店・風俗営業など:許認可ごとに取扱いが異なる
飲食店営業許可や風俗営業許可なども、法人成り時に引き継げるかどうか・どんな手続が必要かは許認可ごとに異なります。複数の許認可をお持ちの場合は、法人成りの前にそれぞれの所管行政庁へ確認することが不可欠です。当事務所は建設業のほか風俗営業関係も取り扱っていますので、まとめてご相談いただけます。
法人成りのタイミング設計は「逆算」が9割
建設業許可の承継を前提にすると、スケジュールはおおむね次の逆算になります(神奈川県の運用例)。
- 承継予定日の4か月程度前:県への事前相談
- 承継予定日の3か月以上前:法人設立→譲渡契約→承継認可の申請
- 認可通知→承継日(この日から法人として営業)→個人事業の廃業届の写しを後日提出
神奈川県の手引きでは法人設立を先行させる流れが明記されており、「承継日まで法人として事業活動を行わない旨の申立書」を提出して、設立済み法人と個人事業主の常勤性の疑義に対応する運用があります。決算期が未到来の法人でも、工事経歴書等に「決算期未到来」と記載し、開始貸借対照表を添付して申請できます。
また、承継後の許可の有効期間は承継日の翌日から5年間となります。現在の許可の更新時期や法人の決算期との関係も踏まえて承継日を決めるのが、実務上の設計のコツです。
税金・社会保険の損得は税理士・社労士の領域です
「いくら稼いだら法人化が得か」という税金のシミュレーションは税理士の、社会保険の手続は社会保険労務士の専門領域です。法人になると社会保険の加入義務が生じるなど負担面の変化もあるため、損得の判断は必ず各専門家にご確認ください。当事務所では提携税理士のご紹介が可能です。行政書士としては、「許認可を切らさない法人成り」の設計という観点からお手伝いします。
許認可を切らさない会社設立は、無料相談から

やさしい行政書士事務所では、定款作成・電子定款認証・設立手続一式(設立登記は提携司法書士が担当)に加えて、建設業許可の承継認可までを一体で設計します。株式会社・合同会社・NPO法人に対応しています。
- 要件の事前確認・初回相談は無料。費用は税込見積りにご納得いただいた後にのみ発生します
- サービス内容:会社設立サービスのご案内/料金表はこちら
- お電話:0463-57-8330(平日9:00〜18:00)/お問い合わせフォーム
本記事の内容は2026年6月時点の情報です。法定費用や手続の最新情報は、法務局・公証役場・神奈川県など各官公庁の公式情報をご確認ください。