執筆・監修:やさしい行政書士事務所 代表行政書士 宮本 雄介(登録番号 第12082434号)|執筆・監修者について
元請会社や役所から「経審(けいしん)を受けてください」と言われて、何から手をつければよいか戸惑っていませんか。経審は正式には「経営事項審査」といい、公共工事の入札に参加するために受ける、いわば会社の通信簿のような審査です。
この記事では、初めて経審を受ける建設業者の方に向けて、全体の流れを5つのステップに分け、専門用語をかみ砕きながらやさしく解説します。
目次
経審が必要になるのはどんな会社?
経審(経営事項審査)は、公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が、必ず受けなければならない審査です(建設業法第27条の23)。
- 対象になる会社:国・県・市町村などが発注する工事を、元請として直接請け負いたい建設業者
- 対象になる工事:原則として1件の請負代金が500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)の公共工事(災害時の応急工事など一部の例外があります)
- 前提条件:受けたい業種の建設業許可を持っていること(許可のない業種では申請できません)
公共工事までの道のりは「①建設業許可の取得→②経審の受審→③入札参加資格申請」の3点セットです。神奈川県をはじめ多くの発注者が、入札参加の条件として経審の結果である「総合評定値(P点)」を求めています。
経審(経営事項審査)の全体の流れ【5ステップ】
まずは全体像をつかみましょう。経審はひとつの審査に見えて、実は2つの審査の組み合わせでできています。

- ステップ1:決算を締める(決算日が審査の基準日になります)
- ステップ2:決算変更届を許可行政庁(神奈川県など)に提出する
- ステップ3:経営状況分析(Y)を分析機関に申請し、結果通知書を受け取る
- ステップ4:経営規模等評価と総合評定値(P)を県に申請する
- ステップ5:結果通知書を受け取り、発注者ごとの入札参加資格申請へ進む
ポイントは審査が2系統あることです。財務の健全性を見る「経営状況分析(Y)」は国土交通大臣登録の分析機関が、工事実績や技術者数などを見る「経営規模等評価(X・Z・W)」は神奈川県(許可行政庁)が審査し、最終的にP点が計算されます。
各ステップの中身と必要書類
ステップ1:決算を締める(決算日=審査基準日)
経審では、申請日の直前の事業年度の終了日(決算日)を「審査基準日」と呼び、完成工事高も技術者数もすべてこの日を基準に評価します。たとえば9月30日決算の会社なら、審査基準日は9月30日です。
ステップ2:決算変更届を提出する
決算変更届は、毎年決算後に許可行政庁へ提出する事業年度の報告です。経審を受けるには、経営状況分析の申請前に原則として提出を済ませておく必要があります。
- 財務諸表は税抜処理で作成したものに限られます(免税事業者は税込)
- 工事経歴書の数字と経審の完成工事高がずれると、審査の途中で修正を求められることがあります
書き方の詳細は決算変更届を自分で出す方法の記事をご覧ください。
ステップ3:経営状況分析(Y)を申請する
国土交通大臣の登録を受けた「登録経営状況分析機関」に決算書類を提出し、財務面の分析を受けます。分析が終わると「経営状況分析結果通知書」が届きます。この原本はステップ4の申請で必ず添付するため、大切に保管してください。
ステップ4:経営規模等評価・総合評定値(P)を県に申請する
ここが経審の本番です。神奈川県知事許可の会社は神奈川県に申請します(大臣許可の会社は関東地方整備局です)。
- 申請方法:対面(横浜の経審審査会場。火曜は申請者本人、金曜は行政書士などの代理人)または電子申請。郵送申請は廃止されています
- 主な提出書類:経営規模等評価申請書・総合評定値請求書、工事種類別完成工事高、技術職員名簿、その他の審査項目(社会性等)、経営状況分析結果通知書の原本 など
- 確認書類:建設業許可申請書・決算変更届の写し、消費税確定申告書・納税証明書、技術者の資格を証する書類、社会保険の加入資料 など多数
- 常勤確認:原則として社会保険の標準報酬決定通知書を使います(紙の健康保険証は令和7年12月1日以降使えません)
神奈川県の審査手数料(知事許可)は次のとおりです。
| 区分 | 1業種 | 追加1業種ごと |
|---|---|---|
| 総合評定値(P)を希望する | 11,000円 | +2,500円 |
| 総合評定値を希望しない | 10,400円 | +2,300円 |
手数料は申請時ではなく審査終了後に、キャッシュレス決済または納付書で支払います。入札で使うなら、P点(総合評定値)の請求はセットで行うのが基本です。
ステップ5:結果通知書を受け取り、入札参加資格を申請する
審査が終わると「経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書」が届きます。注意したいのは、経審を受けただけでは入札に参加できないことです。国・県・市などの発注者ごとに、別途「入札参加資格申請」を行って認定を受ける必要があり、受付の時期や方法は発注者ごとに異なります。
スケジュール感|有効期間は「決算日から1年7か月」
経審の結果で公共工事を請け負える期間は、審査基準日(決算日)から1年7か月に限られます(建設業法施行規則第18条の2)。「結果通知書をもらった日から1年7か月」ではない点が、いちばん誤解されやすいところです。
- 毎年公共工事を請け負うなら、毎年決算後すみやかに受審して有効期間を切れ目なくつなぐ必要があります
- 申請が遅れると、前年の有効期間が切れてから次の結果通知書が届くまで、公共工事を請け負えない空白期間が生まれます
- 「決算→決算変更届→分析→経審」を毎年のルーティンに組み込むのが安全です
はじめての会社がつまずきやすいポイント
神奈川県のQ&A集などで実際に指摘されている、初回ならではの注意点です。
- 消費税の書類が1期分では足りない:初めて受審する場合、消費税確定申告書・納税証明書は審査対象年度分に加えて前事業年度分(完成工事高で3年平均を選ぶ場合は前々年度分)も必要です。県のQ&A集でも非常に多い間違いとして注意喚起されています
- 決算変更届の写しは省略できない:「決算変更届と一緒に出すから写しは不要」とはならず、必ず提出します
- 数字の整合が取れていない:工事経歴書と完成工事高の不一致や税抜処理のもれがあると、決算変更届の修正からやり直しになることがあります
- 正確な申請が大前提:完成工事高などの虚偽申請は営業停止処分等の対象です
P点の仕組みと上げ方は別記事で
経審の結果は「P点(総合評定値)」という点数で表されます。完成工事高(X1)・財務内容(X2)・経営状況(Y)・技術力(Z)・社会性(W)の5要素の組み合わせで決まり、要素ごとに対策の打ち方が変わります。仕組みの詳細と初めての会社でもできる対策は、経審のP点の上げ方の記事にまとめましたので、あわせてご覧ください。
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