執筆・監修:やさしい行政書士事務所 代表行政書士 宮本 雄介(登録番号 第12082434号)|執筆・監修者について
「技能実習制度が新しくなる」と聞いて、これからも外国人の受け入れを続けられるのか、不安に感じている経営者の方は多いと思います。2024年(令和6年)6月21日、技能実習制度に代わる「育成就労制度(いくせいしゅうろうせいど)」を創設する改正法(令和6年法律第60号)が公布されました。その後、政令により2027年(令和9年)4月1日に施行されることが定められています。
この記事では、建設業・飲食業をはじめ外国人を雇用する事業者の方、そしてこれから来日・移行を考えている外国人ご本人に向けて、育成就労制度の要点と「特定技能」との違いを、専門用語をかみくだきながら整理します。やさしい行政書士事務所(神奈川県秦野市)の代表・宮本雄介が、在留資格実務の視点で解説します。
とくに経営者の方に押さえていただきたいのが、後半で解説する「人数枠の罠」(移行期に技能実習生が受入枠にカウントされる論点)です。ここを見落とすと、新規受け入れの計画が崩れます。先に結論を知りたい方は目次から飛んでください。
【重要・最初にご確認ください】育成就労はまだ施行されていない新制度です
- 育成就労法(令和6年法律第60号)は2024年(令和6年)6月21日に公布され、政令により2027年(令和9年)4月1日に施行されることが定められています。本記事公開時点では、まだ運用は始まっていません。
- 制度の細部(分野ごとの要件・具体的な数値)は、政省令や分野別運用方針で順次整備されています。本記事の要件・数値には、施行までに変更・確定される可能性があるものが含まれるため、断定的な情報としてではなく「現時点の案内」としてお読みください。
- 実際の受け入れ・申請にあたっては、必ず出入国在留管理庁などの最新の公式情報をご確認ください。当事務所でも最新情報を随時アップデートします。
目次
育成就労制度とは?技能実習制度との違い
育成就労制度は、これまでの「技能実習制度」に代わる新しい受け入れの枠組みです。最大の違いは、制度の目的そのものが変わる点にあります。
目的が「国際貢献」から「人材確保・人材育成」へ
技能実習制度は、本来「日本の技術を開発途上国へ移転する」という国際貢献を目的とした制度でした。しかし実態としては国内の人手不足を補う労働力として機能している面があり、目的と実態の乖離が長年指摘されてきました。
育成就労制度は、この乖離を解消し、「人材の確保と育成」を正面の目的に据えます。出入国在留管理庁の公式資料でも、日本での3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を持つ人材を育成するとともに、人手不足分野での人材を確保することが目的とされています。受け入れの対象となる分野(育成就労産業分野)は、特定技能の受け入れ分野と原則一致させますが、就労を通じた育成になじまない分野は対象外とされています。
比較表:技能実習・育成就労・特定技能
3つの制度の位置づけを整理すると、次のようになります(育成就労の欄は、現時点で示されている内容を含み、分野ごとの細目は分野別運用方針で確定します)。
| 項目 | 技能実習(旧制度) | 育成就労(新制度・2027年4月施行予定) | 特定技能1号 |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 国際貢献(技能移転) | 人材確保・人材育成 | 即戦力人材の確保 |
| 位置づけ | — | 特定技能1号への移行を前提とする育成段階 | 一定の専門性・技能を持つ就労 |
| 在留期間の目安 | 最長5年(号ごとに区分) | 原則3年以内 | 通算上限5年 |
| 転籍(職場変更) | 原則不可 | 本人意向による転籍が一定条件で可能(後述) | 同一分野内で可能 |
| 入国時の日本語 | 原則要件なし(介護等を除く) | 分野ごとに一定水準が求められる(後述) | 試験等で水準を証明 |
| 受け入れを支える機関 | 監理団体 | 監理支援機関(許可制に再編) | 登録支援機関 |
※分野ごとの要件・具体的な数値は、分野別運用方針等で確定します。最新の公式情報をご確認ください。
特定技能制度そのものの詳しい解説は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
👉 特定技能ビザとは?専門家がやさしく解説
育成就労の主な要件(受け入れの基本)
ここからは、育成就労で外国人を受け入れる際の基本的な要件を整理します。いずれも分野ごとの細目は分野別運用方針で確定する点にご留意ください。
育成期間は原則3年
育成就労の在留期間は原則3年以内とされています。3年かけて、より専門性の高い「特定技能1号」の水準を目指す設計です。なお、3年を一定程度下回る短すぎる計画は認定を受けられない可能性があるとされています(具体的な取り扱いは今後の運用で確定)。
対象者・業務の要件
- 年齢:受け入れ開始時点で18歳以上であることが求められます。
- 健康状態:申請前の一定期間内の健康診断が求められます。
- 従事する業務:業務区分ごとに「主たる技能」が分野別運用方針で定義されます。技能習得のための「必須業務」に就労時間全体の3分の1以上従事させること(技能実習の2分の1要件から緩和)、安全衛生に関する業務を一定割合確保することが求められるとされています(分野ごとの細目は分野別運用方針で確定)。
- 労働時間:フルタイムの一般労働者と同等の所定労働時間が前提とされています。
育成就労で来る方は「実習生」ではなく、労働基準法をはじめとする労働関係法令で保護される「労働者」です。最低賃金以上の賃金、適正な労働時間管理、社会保険加入、ハラスメント防止など、日本人労働者と同様の取り扱いが求められます。
入国後講習(日本語・法的保護)
育成就労では、入国後に一定時間の講習を行うことが求められます。出入国在留管理庁の関係省令によると、入国後講習の時間数は入国前講習を実施しているかどうかによって変わります。次の表は、その考え方を整理したものです。
| 区分 | 入国後講習の総時間 |
|---|---|
| 原則 | 320時間以上 |
| 過去6か月以内に160時間以上の入国前講習を受けた場合 | 160時間以上に短縮 |
| 基礎的な日本語(A1/JLPT N5目安)が証明できる場合 | 220時間以上(入国前に110時間以上受講していれば110時間以上に短縮) |
| 法的保護に必要な情報の科目(労働関係法令・入管法令など) | 8時間以上 |
※「N5があれば一律110時間」ではなく、入国前講習を実施したことが時間短縮の前提です。実際の時間数・前提条件は関係省令・運用要領で定められます。最新の公式情報をご確認ください。
また、特定技能1号への移行に向けて、就労中も日本語能力を高めていく支援が求められます。育成就労の修了時には「日本語教育の参照枠A2相当」の日本語能力(JLPTではおおむねN4が目安)が目標とされ、就労開始時点ではA1相当(N5等)が求められます。会社側にも、日本語学習を後押しする役割が期待されます。
※日本語の水準は「日本語教育の参照枠」を根拠とするもので、JLPT(N4・N5)はあくまで目安としての対応です。
【経営者必読】人数枠と「人数枠の罠」
受け入れを検討する経営者にとって、最も実務的に重要なのが「何人受け入れられるか」という人数枠です。そして、移行期にはここに大きな落とし穴があります。
基本の人数枠は「常勤職員の20分の3」
育成就労の基本人数枠は、受け入れ機関の常勤職員総数の「20分の3」が上限とされています。技能実習が「1号・1年」を前提に常勤職員数の20分の1だったところ、育成就労は3年を前提とするため、その3倍にあたる20分の3になる、という考え方です。優良な実施者は10分の3、優良な監理支援機関の監理を受け指定区域に所在する優良実施者は最大20分の9まで拡大される仕組みも設けられています。
※人数枠は受け入れ機関の区分(一般/優良)や所在地によって異なります。実際の試算は必ず最新の公式情報・専門家への確認のうえ行ってください。
これが「人数枠の罠」:技能実習生が枠にカウントされる
ここが、移行期にとくに注意すべき論点です。出入国在留管理庁の関係省令(経過措置)によると——
施行後も在籍している1号・2号の技能実習生は、育成就労の受け入れ人数枠の計算上、「育成就労外国人の数」として上限にカウントされます。一方で、人数枠の分母(常勤職員数)からは、これらの技能実習生が除かれます。その結果、「分母には入らないのに上限には算入される」という状態が生じます。
このため、すでに技能実習生を多く受け入れている事業者ほど、移行期は新たに育成就労で受け入れられる人数の余地が小さくなる可能性があります。(なお、3号の技能実習生は上限にカウントされないとされています。)
つまり、「今いる実習生も含めて何人になるのか」を計算しないと、受け入れ計画が想定どおりに進まないおそれがあります。すでに技能実習生を受け入れている事業者ほど、移行前に人数枠の再計算が必須です。この点は見落とされやすく、当事務所が外国人雇用のご相談で必ず確認している論点です。
※経過措置の具体的な取り扱いは関係省令・運用要領で定められます。受け入れ計画の作成前に必ず最新情報をご確認ください。
転籍(職場を変えられる)ルール
技能実習との大きな違いの一つが、本人の意向による転籍(職場の変更)が一定の条件で可能になる点です。働く側の保護を強める一方、受け入れ側にとっては「育てた人材が移ってしまう」可能性にもなり得るため、双方が理解しておくべきポイントです。
2つの転籍:やむを得ない事情/本人の意向
- やむを得ない事情による転籍:受け入れ側の倒産・契約の重大な違反・人権侵害・法令違反、本人の疾病など、本人の責めによらない事情がある場合の転籍です。
- 本人の意向による転籍:本人の希望による転籍で、一定水準の技能・日本語能力を修得していること、転籍制限期間を経過していること、原則として同一の業務区分内であることなどが条件とされています。
転籍の制限期間は分野別運用方針で定められ(1年以上2年以下の範囲とされています)、分野によって異なります。
「3分の1ルール」にも注意
受け入れ側の視点では、本人意向による転籍で受け入れる人数が、在籍者総数の3分の1以下に収まることが求められるとされています。地域によってはさらに厳しい割合(例:指定区域外への転籍は6分の1以下)も示されています。受け入れ計画を立てる際は、この割合の制約も考慮する必要があります。
※転籍の制限期間・割合の具体的な数値は分野別運用方針で確定するため、分野ごとに確認が必要です。現時点では「案」の段階で示されている数値も含まれます。最新の公式情報をご確認ください。
受け入れを支える機関の見直し(監理支援機関・外部監査人)
監理支援機関の許可制・要件や、外部監査人(行政書士も対象)については、「監理団体は『監理支援機関』へ — 許可制・要件・外部監査人のすべて」で詳しく解説しています。
技能実習で「監理団体」と呼ばれていた組織は、育成就労では許可制の「監理支援機関」へと再編されます。技能実習の監理団体も、あらためて監理支援機関の許可を受けなければ監理支援事業を行うことはできません。許可基準は厳格化され、受け入れ企業と外国人材の双方を支援し、適正な就労環境を確保する役割が強化されます。
あわせて、監理支援機関の運営をチェックする「外部監査人」の設置が許可基準の一つとされています。外部監査人には、行政書士・弁護士・社会保険労務士などの専門家が就任できることとされています。事業者にとっては、信頼できる監理支援機関と適切な外部チェック体制を選ぶことが、これまで以上に重要になります。
※監理支援機関・外部監査人の具体的な要件は関係省令・運用要領で定められます。最新の公式情報をご確認ください。
育成就労から特定技能へ:キャリアの道筋
特定技能の受入企業が毎年行う定期届出(年1回化)の最新ルールは、「特定技能『届出』が年1回に — 受入企業がやるべき定期届出の最新ルール」でまとめています。
育成就労は、それ自体がゴールではなく、特定技能1号への移行を前提とした育成段階として設計されています。外国人ご本人にとっての将来像は、おおむね次のような流れになります。
育成就労(原則3年) → 特定技能1号(通算上限5年) → 特定技能2号(在留期間の更新に上限がなく、要件を満たせば家族の帯同も可能とされる区分)
育成就労を修了し、技能に係る試験(技能検定3級・特定技能1号評価試験等)と日本語に係る試験(A2/N4等が目安)に合格すると、特定技能1号へ移行できます。さらに特定技能2号へ進めば、より長期の在留や家族との生活も視野に入ります。「来日して終わり」ではなく、長く日本で働き・暮らすキャリアを描ける点が、新制度の重要な意義です。
関連分野で日本での就労を検討している方は、技術・人文知識・国際業務(いわゆる「技人国」)の在留資格も選択肢になる場合があります。
👉 技術・人文知識・国際業務(技人国)の解説はこちら
よくある質問(経営者の方向けQ&A)
Q. 今いる技能実習生はどうなりますか?
A. 制度移行にあたっては、経過措置が設けられています。施行日時点で技能実習中の方は施行後も技能実習を継続でき、技能実習から育成就労へ直接移行することはできないとされています。具体的な取り扱いは関係省令・運用要領で定められます。前述の「人数枠の罠」も関わるため、現在の受け入れ状況をふまえた個別の確認が必要です。
Q. いつから育成就労で受け入れられますか?
A. 育成就労法は政令により2027年(令和9年)4月1日に施行されることが定められています。本記事公開時点ではまだ受け入れは始まっていません。分野ごとの運用方針は施行までに順次整備されますので、最新の公式情報をご確認ください。
Q. 育てた人材に転籍されてしまうのが不安です。
A. 本人意向の転籍には制限期間や割合の条件(前述)が設けられており、無制限に移れるわけではありません。とはいえ、最も有効な対策は「選ばれ続ける職場」をつくることです。適正な賃金・労働環境・キャリア支援を整えることが、結果的に定着につながります。
Q. 受け入れの準備は何から始めればよいですか?
A. まずは下のチェックリストで自社の状況を整理することをおすすめします。とくに人数枠の試算と、信頼できる監理支援機関の選定は早めに着手すべき項目です。
受け入れ準備チェックリスト
- ☐ 現在受け入れている技能実習生の人数・号数(1号/2号/3号)を把握しているか
- ☐ 常勤職員数をもとに、移行期の「人数枠」を試算したか(技能実習生のカウントを含めて)
- ☐ 育成就労を労働者の受け入れとして、賃金・労働時間・社会保険の体制が整っているか
- ☐ 入国後講習・日本語学習支援の段取りを検討しているか
- ☐ 信頼できる監理支援機関・外部チェック体制を選定できているか
- ☐ 育成就労から特定技能1号への移行ルートを見据えた育成計画があるか
日本で働く外国人の方へ
育成就労で日本に来て働く方は、日本の労働関係法令で保護される「労働者」です。最低賃金以上の賃金を受け取る権利、安全な環境で働く権利、健康保険などの社会保険を利用する権利、ハラスメントを受けない権利、困ったときに相談できる権利などが保障されます。一定の条件を満たせば、転籍(職場の変更)も可能になります。
一方で、在留カードを常に携帯すること、許可なく定められた以外の仕事をしないこと、日本の法令を守ることなど、守るべきルールもあります。3年の育成就労を経て特定技能へ進めば、より長く日本で働き、将来は家族と暮らす道も開けます。不安なこと・分からないことは、一人で抱え込まず専門家にご相談ください。
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育成就労・特定技能のご相談は、やさしい行政書士事務所へ
育成就労は2027年4月の施行に向けて、詳細がこれから整備されていく新制度です。だからこそ、最新の動向をふまえて自社の受け入れ計画を設計することが大切です。やさしい行政書士事務所では、建設業・飲食業をはじめとする外国人雇用について、人数枠の試算から特定技能への移行まで、在留資格実務の視点でサポートします。
やさしい行政書士事務所
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【免責事項】本記事は、公開時点で入手可能な公的情報および研修会で示された内容にもとづく一般的な解説です。育成就労制度は2027年(令和9年)4月1日に施行が予定されている新制度であり、分野ごとの要件・数値などの詳細は、政省令・分野別運用方針等で順次整備・確定されます。本記事の内容は将来変更される可能性があり、個別の事案について法的効果を保証するものではありません。実際の受け入れ・申請にあたっては、出入国在留管理庁などの最新の公式情報をご確認のうえ、専門家にご相談ください。